第6楽章 『至高天の日常』(蛇足パロディ)
「つかれたあー。きーちゃん肩もんでぇ」
「はいはい」
「いっぱい頑張ったから、頭を撫でて」
「はいはい」
「にへにへ~」
「もみもみ」
「…………。ミミ、胸は揉んで欲しいと言ってないんだけど」
こんな感じで結構ゆるい生活を過ごしている。
僕はといえば朗読にもだいぶ慣れてきた。
最近のブームは、読んだ物語について、
ミミと意見交換をすることだ。同じ物語でも僕と、
ミミとでは解釈が違うのだ。たとえば……。
「この物語は、王子様とお姫様が結婚してハッピーエンドでいいお話だね」
「そうだね。だけどミミはちょーっと結婚のとことがクライマックスになりすぎてその後が心配だけどね。なんというか結婚式が人生のピークみたいな感じだから、その後が心配」
「まあなんというか、僕たちの結婚式……かなり、雑だったからそれと比べると、ねぇ?」
「きーちゃん。そー言う事いわないっ! せっかくお祝いしてもらったんだから。感謝しないとだよ。結婚指輪とお祝いのプレゼントだってもらったじゃない」
「確かに。そういえば、結婚祝いでもらったソフィアの詩集ってどんな内容だったの?」
「はい。これがソフィアの詩集」
「えっと…………これ、ソフィアが書いたの?」
「ね」
「むぅ……。これは………。男の僕が読むのは勇気がいるなぁ」
「わかる。とっても、ピュア」
「………ね」
「ところできーちゃんは好きな詩とかあるの?」
「千早振る 神代も聞かず竜田川 からくれないに水くぐるとは」
「なんか綺麗な詩だね」
「でしょ」
「ところで、この詩の意味は?」
「いや、よく分からない。百人一首という遊びで覚えただけだから」
「…………百人一首って物騒な響きの遊びだね。やっぱり原点世界はよくわからないや」
「ミミ。それ……きっとそれ誤解だ」
「そういえば、きーちゃんメイドって好き? やたらH氏の物語を朗読するときだけ力がはいっていたように感じたんだけど………」
「メイド?…………はて、なんのことやら」
「あやしぃ」
「あ……あやしいわーるど」
「ミミの知らない言葉ではぐらかしてもだめー。ミミが着たら嬉しい」
「う、嬉しいです。フ……フリルがふりふりの奴をお願いします。丈の短い太ももが見えるミニミニ仕様で黒の二―ソックスでお願いしますっ!」
「はぁ。それで、きーちゃんって、やっぱりアレ系の人なの?」
「違いますよ完全なる誤解ですだってミミさんコールドスリープ期間を含めれば千歳超えじゃないですかきっとその間も年齢としてカウントするべきなんですよだからもう完全に合法なんですよ完全に遵法なんですよ条例だって完全にクリアしているんですよ問題なんて一つもないんですよだってよーく見て下さいよミミのとこのプロフィールの年齢は完全に隠されているでしょつまりはそういうことなんですよもうこれはもうですね完全に成人しているんですよこの世界に登場する女性キャラクターは原典世界基準で全員完全なる成人なので大丈夫なんですよもうゲームでいうとレートAなんですよそれはともかくとしてむかだからだからだから………」
「きーちゃんがこわれた」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「それにしてもこの空間って本当に自由だよね。だって。えいっ」
目の前に紅茶のテーブルセットが現れる
出そうと思えば、満漢全席なんでもござれだ。
「頭で考えただけで、何でも出てくる」
「ミミも最初は楽しかったんだけどね。自由度が高すぎてちょっと食傷気味になるよね」
「何らかの自主規制的な制約を付けないと結構、アレだよね~」
「それは、分かる。あとでその辺りは後日決めようか」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ところで、ミミの髪ってどうなってるの?」
「ミミの髪の毛ね。動かそうと思うと一本一本が自由に動かせるの」
「ちょっと、きもいね」
「……きーちゃん、それに救われたんでしょ。失礼しちゃう」
「いや、いい意味で。いい意味で、ちょっときもい」
「まぁ、いい意味なら良いんだけどさ。ちょっと傷つく。そんでね。プチっと…………。こんな感じで抜くと糸になるんだよ」
「おお、それ。僕の蜘蛛の糸と同じだ」
「だって、それミミの髪の毛から作った糸だから」
「知らなかった。でも僕の持ってる糸は一本辺りがかなり長いんだけど、これはどうして?」
「それはね、こうやってプチって抜いてね、えいってくっつけるの」
「おお凄い。長い一本の糸になった。切断と結合の特性というやつだね、えい………プチっと」
「いたぁーいっ!」
「ごめん。悪気はなかったんだけどなんとなく、ちょっと試しに抜いてみたくなって。そういえば、召喚門に接続する際にも髪の毛を使っていたよね」
「これはね。一本一本が神経線維。情報伝達用のケーブルみたいな繊維になっているの。これを太古の情報端末に接続することでダイレクトに脳と装置をつなぐことがっできるようになるんだよ」
「なにそれこわい。試しにちょっと動かしてみて」
「いいよ。うねうね~」
淡い光をまとった髪が
うねうねと髪が動きだす。
「ほんのり淡く光っているし。なんか王蟲の触手みたいでちょっときもいね。もちろんいい意味で」
「………ひっくひっく……ミミ、実家に……帰ります…………」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「きーちゃん。そこ間違ってる。飴じゃなくて雨っ!」
「あ……ほんとだ、やばいなこれ」
過去に、うっかり雨と飴を読み間違えて大変なことになったことがある。
その世界では雨の代わりに飴が降ってくるという現象が観測されている。
その世界で発生したその超常現象は「飴の日」という記念日になった。
「………なんとか校正完了っと。ふぅ…………。やばかった」
「もー。朗読している時は集中しないとだめだよっ」
「ごめん。そういえば、ミミの物語を書く能力で無理やり修正とかできないの?」
「うーん。未完の物語であれば、ある程度自由にやれるんだけど、完結してるのは余白にちょっと書き足すくらいしかできない。それも相当な制約がある感じねー」
「たとえば、物語中の登場人物を自由に動かしたりはできないものなの?」
「ちょっと説明が難しいので、きーちゃんの知っている将棋で説明するね。例えば桂馬という駒は、前へ2歩、横へ1歩移動できる駒なんだけど、物語上の人間もこれと同じように行動の制約があるの。その人物が絶対にしない行動や、できない行動というのは絶対に書くことができない。無理に書き足そうとするとミミの手が全く動かなくなるの。不思議だよね。そういった意味ではそれほどの自由度がないとも言えるかも」
「物語の中のキャラクターが勝手に動きだすっていうのは、そういうことなのかもしれないね」
「きーちゃんにしては珍しくまともなことを言っているね」
「どういたしまして」
◆◇◆◇◆◇◆◇
最近、ミミと僕のあいだではまっているのが
原点世界のゲーム機。
ドリームキャストで遊ぶことである。
僕らが遊んでいるドリームキャストは
限定のマジョーラカラーモデルだ。
なんか、見る角度によって色合いが
変わって凄い。とても良い色なのである。
「きーちゃん見て見て。ミミのVMメモリのチャオこんなに育ったよ」
「良い感じに育っているねあとで、育てたチャオをはあとでゲームに戻そう。それにしてもこのドリームキャストっていうゲーム機は凄いね。人類の叡智の集大成という感じだよ。ゲーム機を起ち上げた時の起動音と、うねうねっと回る渦巻きもいいよね」
「わかる~。神秘的な音だよねっ。それにネット対戦とかいうのを使えば全世界の人と闘ったりできるんだよ。Dream Eyeというのを使えばテレビ電話だってできるんだから本当に凄いゲーム機だよね。ドリームキャストマガジン……ドリマガとかもセガ党の人たちの熱い情熱を感じられてとても熱いハードだったよね。あとね。ドリームキャストはアンチエイリアス処理のおかげで、ポリゴンの緒間のジャギとかが目立たないのでとってもキレイなの」
「この空間では、通信機能は使えないけどね。凄い機能だよね。ISAOネットっていうネーミングセンスも凄いよね。……唯一の欠点はLとRのトリガーが壊れやすいことだね。壊れた時のあのカスッカスッって感触はなんとも言えない悲しさがあるね」
「ミミもクレイジータクシーで遊んでた時に壊しちゃった……。すぐに新しいの出せるけどね、えいっ」
新しいドリームキャストの
コントローラーが出現する。
新しいコントローラーはスケルトン仕様。
「ミミね。最近はサクラ大戦3にはまってるの。御旗のもとにとか本当に名曲。それにオープニングムービーがすっごいクオリティーでぬるぬる動くんだよ」
「サクラ大戦3は最高だね。サクラ大戦シリーズの中で僕が一番好きな作品だよ。メル・レゾンとか好きだな。あのメイド服とか好きだなあ………」
「きーちゃん。それただ単にメイド服きた子が好きなだけでしょ……その子攻略対象キャラクターじゃないし。それじゃ、攻略対象のメインキャラクターできーちゃんが好きな子は?」
「うーん。コクリコだね。一件天真爛漫な悩みが無さそうなキャラクターに見えて、実は家族絡みでかなり重いバックグラウンドを背負っているっていう設定が良いよね」
「………。じゃあ聞くけど、サクラ大戦2のなかで好きなキャラは?」
「アイリスだね。辛い境遇にも関わらず頑張っているところは推したくなる」
「それじゃあドリームキャストから外れるけど、Fateのキャラで好きなのは」
「「イリヤスフィール」」
「言うと思った。きーちゃん……ほんと、ぶれないね。きーちゃんには業を集める趣味でもあるのかな?」
「たまたまだよ。良いキャラが。偶然そういう、キャラクターなだけだよ」
「きーちゃん。キャラクリできるゲームだと超低身長のヒューマン系の女キャラばっか使ってるもんね」
「おまかせランダム設定で、たまたまいつもそういうキャラクターを引いてしまうだけだよ。偶然の産物なんです。信じてください」
「まあいいや……ミミはそういうことにしてあげる。それにしてもドリームキャストは名作は多いよね。このデスピリアっていうのは衝撃的な作品だったよっ!」
「舞台がポストアポカリプスの大阪っていうのが熱いよね。ゲームとしての完成度はめっちゃ高い」
「かなり独自性あふれる世界観かな。ミミはマインドダイブのシステムが好き。文字がつらーって流れてくる演出とかおしゃれ」
「そうそう。文字がわしゃーって画面いっぱいになる演出、あれかっこいいよね」
「ちなみに、デスピリアできーちゃん的な最萌えキャラは?」
「いや、ミミ。さすがに無理。僕がその悟りの境地に行くにはあと10京年くらいは必要だ」
「メモメモ。きーちゃんSAN値正常………っと」
「ジェットセットラジオも面白かったなー。トゥーンレンダリングとかいう技術を使っていて、二次元のイラストが3Dみたいに動くのは感動したなぁ」
「街に落書きするときのグラフィティーを自作できるのも凄いよね。きーちゃん猫耳メイドのグラフィティ作るのに千時間くらい費やしてたね」
「自分で作ったグラフィティで街を塗り替えていくのとか最高の快感なんだよ。音楽もかっこいいし良作でしたな」
「隠しルートがあったり、乗り物に捕まって進めたりする自由度の高さも魅力の一つだとミミは思うな~」
「それじゃミミ、そろそろ一緒にアレやろうか?」
「きーちゃん。アレって、いつものあつまれ!ぐるぐる温泉?」
「それもいいけど。ほらあれ、名前忘れちゃったけど。総天然色なんちゃらとかいうの。ステージの物を投げたりできるやつ」
「パワーストーンのことね。1と2あるけど、どっちで遊ぶ?」
「2も面白いけど、今日は1で遊ぼーか」
「おっけー☆」
そんなこんなで桐咲とミミの記念すべき
1京年目最初の1日は平和に過ぎていったそうな。
(そして全ての物語へ)つづく
転生者スレイヤー くま猫 @lain1998
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