誰もが通る、通ってきた雰囲気、橙色の明るい夕日が見えるようなスタートから、誰も経験した事がない、する事もない闇夜に導かれる、そんな印象を受ける物語です。
文化部にとっては学校生活で最も注目されるであろうイベント、文化祭へ向けた準備は、放課後、夕日が傾くのも気にせず居残るイメージがあり、そのイメージそのまま再現してくれる丁寧な描写、私が憧れを持ち、ノスタルジーを感じる緻密な表現がちりばめられていました。
やがて物語は事件へ向けて進むわけですが、その進み方も突然、闇に包まれるような唐突さはなく、文字通り傾いていく太陽が宵闇に変わっていくような静かな、しかしハッキリした変化で進んでいきます。
その事件、驚愕のラスト、タイトルの意味…読んだ後、もう一度、繰り返し読みたくなる仕掛けでした。