第7話

そんな彼女がまた人間を信じようとしている。かつての友人の孫に導かれて。

最初の森ではまだ自然を愛する人間がいることを。

ルビー達の村では短い生でありながらも懸命に生きようとする人間の健気さを。

彼女はその目でしかと見届けたのだ。

たしかに私利私欲にまみれた人間はいる。けれど、きっとそれと同じくらいにそうではない者もいるのだ。


——もっと彼らを見てみたい。また人間を愛したい。

そう思わせてくれたカミルとなら。きっとできるはずだ。


メルは隣を歩くカミルの骨張った手にそっと自身のそれを重ねた。骨張った大きな手が彼女を優しく包み込んだ。









小さな小屋で、少女は座っていた。その膝の上には一人の老人が今まさに息を引き取ろうとしていた。少女の瞳には慈しみがあふれ溢れた。


「私、あなたに言わなければならないことがあるの」


老人のくしゃくしゃになった頰を撫でて少女が言った。


「あなたの言うとおりだったわ。

——この世界は、こんなにも美しく素晴らしかった。

あなたが教えてくれたのよ。」


ありがとう。

その言葉を聞くと彼は安心したように微笑んで、その体から力を抜いた。

彼女は歌った。彼の長い長い旅路を応援するように。きっとその想いは彼に届いたろう。

辺りに慈愛に満ち透き通った彼女の歌声おもいが優しく響きわたり、二人を包み込んだ。


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妖精の歌 あさぎ @asagicolor

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