第3話 失ったもの━━声

同じ様な人。それはつまり……。

「あたしと同じ、『昏睡』してる人が居たんだ。それも、あたしよりも長く、な……」

僕はここから見える、大学病院に目をやった。もしかしたら。

そして目線を戻した。

「……どうしてこの世界に君たちのような人がこの世界に存在してるの?」

「あたしにもよく分かんない。けど、その人はいろんな事知ってた。例えば……

あたしみたいな人は、幻影で、元の普通の世界にも行けるけど……見えてない。とか……

この世界には普通の生きてる人は入ってこれない、とか━━」

「━━━えっ、ちょっと待って」

じゃあ、何故僕はこの世界に居られるのだろうか。

入りたくて入った訳じゃない。

別に普通の小学生だ。

そんな僕が、どうして……?

「分からないさ……でも、分かることは……

にアンテナが立っちゃったって事だな。普通の人のなかに、霊感が強い人が居るように……」

「そっか……それにしても……

優奈ちゃん、物知りだね……」

色々なことを知っている。僕の知らないことも、知ろうとしなかったことも。

「うん!に勉強とか、いろんな事、教えてもらったから!」

「……さっきからって……誰なの?」

話のなかで色々核心を握っているらしい人物の名前を出してくれないことに、半分イライラしていた。きっと優奈は、そういう性格なんだろうが。

「……ああ!そうだった!ってね、クロさんのこと!」

「クロさん……?」

「うん。『クロダ キイチ』 さん!いいんだよ、頭。研究員、だったんだって!」

クロダ キイチ。どこか聞き覚えのあるその名前。

……って社会人なのか。それも研究員。

「……で、その人は?」

「あっ、それなんだけど……クロさんさ……実は、なぜか喋れないんだよ。声が出ないらしくて」

喋れない?声が出ない?耳が聞こえないんじゃなくて……?

「うん。『昏睡』して、この世界に来たら、喋れなくなってたんだって」

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動かす声 Cider(シードル) @cider16

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