第2話 この世界にいる者は

「━━━━━えっ?」

小学生ぐらいの女の子。やがてこちらに気づいた。

「おお、珍しい。新しい人か?」

ちょっと男らしい言い方の女の子だ。


それが、優奈ゆうなちゃんとの出会いだった。


彼女は優奈と名乗った。

「君は?」

「あ、僕は隆斗りゅうと。えっと……この世界は、なんなの?」

誰もいない世界の公園のブランコに僕と優奈は腰かけた。


 *       *       *

「この世界に誰もいない理由は、あたしにも分からないんだ。

ただ、この世界にいる人は、ちょっと特別なんだ」

「なにが特別なの?」

優奈はブランコから降りた。

「あたしさ……本当は眠ってるんだよ。いわゆる『昏睡』ってやつだ」

「!?」

生ぬるい風が、頬を掠めた。優奈が悲しそうに肩をすくめた。

「どうして……?」

「三年ぐらい前……あたしが七歳の時さ、あたし……車に引かれたんだ……猫、助けようとして、それで……」

辺りを沈黙が包んだ。

「そう……だったんだ……」

そんなこと、聞くんじゃなかった。少し歯痒い。それでも優奈は話を続ける。

「気づいたら、この世界にいたんだ……誰もいないし、怖かった。でもね……」

「?」

「居たんだよ、あたしと同じ様な人が」

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