第23話


 ずっと息苦しくて、やっと呼吸できる場所を見つけたのに。


 そこで愛する彼と幸せだったのに。


 なぜ、みんな私を放っておいてくれなかったのですか?


 みんな私を植物のように無視してくれていれば、私は殺人を犯すこともなかったのに。


 それとも、やはり私は狂っているのでしょうか?


 ねえ、裁判長さん。




 法廷内は静まりかえった。


 そこにいる皆が美しい被告人を見つめた。


「あなたの言うその絶対的存在とはなんですか?」


 裁判長は女に訊ねた。


 女は何度か瞬きをした。


 長い睫毛に濡れたような瞳。


 花びらのような唇が動く。


「よく分かりません」


 女は証言台を撫でた。


 その木目をゆっくりとなぞるように。


 それはまるで死んだ木の声を聞いているようだった。




 

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植物女 八月 美咲 @yazuki-misaki

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