第23話
ずっと息苦しくて、やっと呼吸できる場所を見つけたのに。
そこで愛する彼と幸せだったのに。
なぜ、みんな私を放っておいてくれなかったのですか?
みんな私を植物のように無視してくれていれば、私は殺人を犯すこともなかったのに。
それとも、やはり私は狂っているのでしょうか?
ねえ、裁判長さん。
法廷内は静まりかえった。
そこにいる皆が美しい被告人を見つめた。
「あなたの言うその絶対的存在とはなんですか?」
裁判長は女に訊ねた。
女は何度か瞬きをした。
長い睫毛に濡れたような瞳。
花びらのような唇が動く。
「よく分かりません」
女は証言台を撫でた。
その木目をゆっくりとなぞるように。
それはまるで死んだ木の声を聞いているようだった。
植物女 八月 美咲 @yazuki-misaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます