第11話
「んー、まだ帰ってこないのか……。」
5人が未だに帰ってこない。もしかしたら帰ってくる途中にヤツらと出くわして首を取られているのではないか……そんな物騒なことが頭の中をよぎる。
だが、今の時刻は午後の4時頃。そろそろ帰ってきてもおかしくはない時刻だけど……。
《えっと、ギル。いる?》
《お側に。》
僕の後ろの影からにゅっと出てきたのは、先程サタンに忍ばせてもらったシャドーアサシンのギル。その他にアールとグルがいる。
《悪いんだけど、マースたちの様子を見てきてくれてもいい?様子を知ったら戻ってきてくれていいから。》
《御意。》
すると、ギルは僕の視界から消えた。
「そう言えばここの竜谷ちゃんと見て回ったことないなぁ……」
円形状に外側になればなるほど格の低い者の部屋だと言うのは聞いてはいたけど、その他にもお風呂とかの場所がどこだか分からない。
《おっ、これはこれは。コハクじゃねーか!こんなとこで何してんだ!》
後ろから僕の背中を叩いてきたのは、ゴリゴリマッチョの聖帝竜ガリム。ちなみに聖帝竜の人はみんな髪の色は金髪だ。
「なにって、竜谷の中をちゃんと見た事がなかったから回ってみようかなって思いまして」
《あー、そーゆーことなら俺と一緒に見に行こうぜ!俺が案内してやんよ!》
そんなこんなで、ガリムの背中について行くことにした。
竜谷の仕組みとしては、谷という名前ではあるが実際は巨大な洞穴であり、山の中がそのまま住処になった感じで、一階の大広間を中心とした周りを各々の部屋としてバウムクーヘンのように並べている。
そして、2階は生活に関すること。つまり、厨房や温泉といった公共として使うものを集めた部屋となっており、それこそ大人数でも入れるように大きな造りになっているらしい。
そして、3階は闘技場となっており、各々が飛び立ったりしながら空中戦などの練習ができるようになっている。
そして、4階は竜の姿となって飛び立てるように飛着場となっており、あいことばを言わないと出れないし入れないようになっている。
そんなこんなで、ガリムはガリムで鍛錬の続きをしてこないととの事で3階へと戻って行ったところでギルからの連絡が入った。
《5人とも無事です。問題はございません。》
どうやら、今は帰路に着いているらしい。ならばいいんだが……。
3階で暇そうに待っていると、猛スピードで5人が帰ってくるのが見えた。
《《《ただいま!》》》
すると、5人はみんな僕に突撃してきた。だが、なんだか様子がおかしい。
「えっと……みんなそんな涙目になってどうしたの?」
そう、5人みんな涙目になって僕にすがりついて来るのである。
《だって……だってぇ……》
《気付いたらハクちゃんが居なくなってたんです……どこに行ってたんですか!!》
その話を聞いた時、僕の頭の中ははてなマークで埋め尽くされた。
「えっ、だってみんな他の魔物との約束があるって……」
《ん。そんなのない……》
なんか言ってることとやってることが食い違っているような気がするが、彼女達いわく、僕に空の世界を見せてあげたくて連れ出そうとしたが、途中から僕がいないことに気づき、落としたのではないかと探し回っている間にギルが伝言を入れて連れ戻してくれたらしい。
《もう…私達のとこから離れるなよ……?コハク……》
《しっ、心配なんてしてないんだからね!別に落ちてようが私はどーでも》
《あれあれー?いっちばん必死になって探してたの誰だっけ〜?》
《あー!あー!私わ何も聞こえないおー!》
そんな茶番を繰り広げるだけの余裕が出来たらしい。
そして、時刻は夜ご飯を済ませたあとの8時頃。他の竜は風呂を済ませたとの事なので僕達の順番になった。
「よし。それじゃ、僕はこっちに」
僕が男湯に入ろうとしたところ、後ろからシノルに首根っこを掴まれた。
《おいおい。どーして1人で入ろうとするんだ?危ないだろう。》
後ろを振り向くとみんなその通りと言わんばかりに首をこくんこくんと頷かせている。
「いや、それでも女湯って女の人が」
《いーの!私達が許す!》
いや、そんなサムズアップされても困るんですが……マースさん……
そしてそのまま僕は女湯へと引きずられていくのだった……
親に捨てられた俺は........... ペペロンチーノ @yakku
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