第10話
「あの〜、暴発とかしちゃったらどうすれば……」
《大丈夫です。私がコハク様の周りに結界を広げるので暴発した際でも周りが吹き飛ぶことはありませんのでどうぞ思いっきりどうぞ。まずは火属性ですね。指先に火を灯すようなイメージで魔力を流し込んでみてください。》
言われた通りに指先に火を灯すイメージで魔力を流し込んでみると、それこそキャンプファイヤーで見るような火が灯された。
《ふむ。素質は充分ですね。それじゃあ次々に行きましょう。》
そんなこんなであらかた全ての属性を試してみたところ、土以外は全て使えるようだった。
《ちょいちょい、ガルムさん。この子本当にそんな偉い目にあって拾ったんですか?》
《やー、人間も随分抜けているでござるな。こりゃ化けるでござるよ。素質十分体術十分。文句の言いようがないように見えるでござるが……なぜ捨てたでござるかね……》
「えっと……僕の職業二刀流だったので多分そのせいかと」
《二刀流だぁ!?》
何故かは知らないが、サタンはにこやかに冷や汗ダラダラ、フェンリルはお口あんぐり、ホセは体をガクガクさせており、フェニックスもやばいっス!やばいっス!とか言いながらあたふたしている。
「えーっと、二刀流って……ハズレじゃないんですか……?」
《はぁ……これに関しては自分が説明するっス。まず、剣豪って職業があるじゃないスか》
剣豪。それは読んで字のごとく、魔剣だろうが聖剣だろうがこの世に存在する剣を自由自在に操れる職業。近接戦闘の職業としては最強と言われている、
《あの職業。一つだけ欠点があってっスね。それは、ひとつの剣しか操れない。つまり、二刀以上は扱えないんスよ。それに対し二刀流は、聖剣だろうが魔剣だろうが2本以上使うことが出来るんスよ。つまり、剣豪よりレアな職ってことっス。というか、その腰の刀ってどこのやつっスか?》
腰の刀を指さすフェニックス。刀に指さすのって大丈夫なのかな……
「えっと……タケミカヅチとヤマタノオロチだよ。」
《ブフォ!!》
なぜか、今までお茶を飲んでいたケモ耳の生えたイケメン。フェンリルがお茶を吹き出す。
《ケホッ、ゲホッ、そ、それはうちの家系に代々伝わる宝刀でござるよ!?なぜコハク殿がお持ちで……?》
げっ、僕この刀そんないいものだと知らずにガンガン振り回してたんだけど……なんてことを思ったけれど、今そんなことを言ったら食い殺されかねないのでお口を噤む……
「でもこの刀ってガルムさんが選んだんじゃ……」
《うむ。我が選んだがこれは他の冒険者達が持ってきたガラクタの中に埋もれてたものである。しかも刀が重すぎるのかは知らないが引きずって持ってきていたぞい。》
その話を聞いて、戦闘態勢に入っていたフェンリル(もうフェンでいいや)が人間の姿に戻る。
《いやはや、その刀は使い手を選ぶものでござって……盗賊などに盗まれることもあったでござるが、だいたいは使えないガラクタと判断されて元の位置に戻されるでござるよ。いやー、そうなってしまったらもう拙者のものではございませぬ。コハク殿に使っていただくのが1番かと思うでござる。》
そんなこんなで二刀は結局僕のものへとなった。
《そういえば、コハク様。私達とはこのように念話で話すことが可能なので何か必要なことがあれば念話でお話いただけると嬉しいです。そして、コハク様のもしものボディーガードとしてシャドーアサシンを3体ほどコハク様の影に忍ばせて頂きましたので何かございましたらなんなりとご命令してくださって構いません。》
シャドーアサシンというと、この世で分類される下級、中級、上級、伝説級、災害級、天災級に分類されるうちの伝説級に含まれる一種で、どんな影にも忍び込め、暗殺に優れた魔物であり神出鬼没でいつ現れるか分からないが為に伝説級として語られていた。
《んー、ハクっちの魔力量と質なら別に魔法を学ぶ必要もなさそうッスね……そしたらあとは剣術……》
《剣術でござるか……そしたらコハク殿。これを斬って見せるでござる。》
そして目の前にふたつの藁人形が建てられる。が
《……えっ、な、何が起こったの?》
周りからしたら何をしたのか分からないうちに目の前の藁人形の首が吹っ飛んだように見えたらしい。
「えっ、何って……ただ単に藁人形の首を落としただけなんだけど……」
《せ、拙者も太刀筋が見えなかったでござる……というか見えても一瞬で何が起こったのか……》
《はぁ……剣術もトップクラス。魔法もトップクラス。こんな逸材をなぜ捨てたのでしょうね……もはやこの子チートってやつですよ……》
「えっ、でもこれくらい普通なんじゃ……」
すると、5人は呆れたかのように答える
《《《普通じゃないんだよ》》》
でも僕からしたらこんなの普通だし、なんなら僕これでも下の方なのに……なんてことを言いたくなったが口を噤む。
《まっ、まぁ、お前は日々の鍛錬を怠らなければ大丈夫だ。うん。》
何故かガルムさんが冷や汗をダラダラかきながら答える。
《そんなわけだ。あとはもう好きにしていいぞ。》
「えっ、あっ、はい。失礼しました。」
こうして僕は執務室を後にした。
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