第9話
「……うん。何をしよう」
朝食を終え、部屋に戻った僕だが、5人姉妹は他の魔物たちとの用事があるとのことで出かけていったのでとてつもなく暇になってしまった。
そんな中、僕はあることについて考え出す。そう、昨日の晩の事だった。
まず、人族の中で魔物というものは恐れ、僻まれる対象であり、その中の頂点に君臨する竜族は邪悪な人間達を滅ぼそうと考える人間界の敵として語り継がれてきた。
だからこそ、僕はガルムさんが僕の近くに来た時には一抹の警戒をした。だが、僕の印象とガルムさんの実態はとてつもなくかけ離れたものだった。
そして昨日の決闘。あれこそがおかしい。
なぜ僕は圧倒的格上の相手に素手の一撃だけで勝利したのか。確かに身体強化は何回も上乗せした。だが、僕の身体強化なんてたかが知れている。なのにどうして……
《コハクさん。ガルム様がお呼びでございます。至急執務室へお願い致します。》
そんな途方もない事を考えていると、先程とは違ったメイドさんが声をかけに来た。
「はい。分かりました」
そのままメイドさんの後ろを付いていくと、一際大きな執務室へと着いた。
《ガルム様。コハクさんをお連れ致しました。》
《うむ。入れ》
すると、中ではガルムさんを初めとした魔物達が話し合いを開いていた。
《おぉ、これがお話に聞くコハクさんでございますか。》
《ふむ。なかなかにちまっこいでござるが……本当にお強いでござんすか?》
……うん。何がどういう状況なのか説明して頂きたいのだが
《おぉ、コハク。よく来た。紹介しよう。我が昨日うちに連れ込んだコハクである。》
「えっと、あの、コハクです。よろしくお願いします。」
とりあえず空気に合わせて挨拶をする。
《紹介しよう。ここにいるものたちは……うん。1人ずつ挨拶を頼む。》
すると、手前にいた頭に角の生えた者から名乗り始める。
《初めまして。私の名前は魔王サタンと申します。これからどうぞよろしくお願いいたします。》
うーん、ここにいちいちツッコミ入れたらお話終わんなさそうだし黙っておくか……。
《先程は軽率な発言失礼したでござる。拙者、フェンリルと申す。一応森の中では最強とは呼ばれてるでござる。何卒よろしくでござるよ。》
《えっ、あ、あぁ俺か。俺はホセ。海の覇者と呼ばれている。よ、よろしくな?》
《へっ、あっ、自分フェニックスって言うっス。不死鳥って結構言われてまス、以後よろしくっス!》
……うん。メンツがおかしいぞ?どいつもこいつも天災級じゃないか。
「そ、そんなあなたたちがここで何をしているのですか……?」
《いえいえ。コハク様。そのようなお気遣いは無用でございます。普通にお話くださって構いませんよ?それに私達のことは呼び捨てで全くもって構いません。》
やたら執事感覚で話してくるサタンは昔から人間たちを虐殺して楽しんでいる邪悪なる魔王と教えられてきたのでギャップでどうにかなってしまいそうだが我慢するしか無さそうだ。
《うむ。なぜこやつらを集めたのかと言うと、ハク。お主に剣術や魔法の稽古を付けさせようと思ってだな。こやつらに相談してみていたのだ。》
《そーゆーことっス。ところで、ハクっちはなんの属性が使えるっスか?》
魔法の属性は大きくわけて火、水、自然、雷、土、闇の6つに分けられ、それぞれ得意不得意はもちろんあるが、人間たちはあらかたこのような魔法を扱えるようになっている。
「それが……魔法って言われても身体強化しかやった事がなくて……。」
すると、その場にいた全員が目をギョッとさせる。いや、そんな顔しても本当なんだけどね。
《えーと、確か拙者の記憶が正しければ……コハク殿はあの五色天竜の一角であるトラスト殿を沈めたと聞いたのでござるが……》
みんなの顔がいっせいにガルムさんの方へと向く。
《……ん?そんなつらをされても我は真実を述べただけぞよ?なんなら映像を見せてやろうではないか。》
そして僕達の目の前には昨日の戦闘が映し出された。
《うーわ、ガチじゃないっスか。》
《ほう……あのトラスト氏を素手で……》
いやー、そんな化け物を見るようなツラで見られても困るんですよね……。てかあなたたちの方がよっぽど化け物だと思うんですけれど……。
《なるほど。魔法は身体強化のみだと言うのは本当のようですね。その他の魔法が使われたような痕跡は見当たりませんし……》
「そしたら僕……どうしたらいいんですかね……?」
《えっと……あらかた魔法を発動させてみてはいかがでしょう……?》
さっきからビクビクと縮こまっていたホセの言う通りに魔法を発動させてみることにした。
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