第8話

むにゅにゅっ


寝た時とは明らかに違う肌触りで僕は目を覚ました。


《コハクさん。おはようございます!マース様方は厨房で朝食を作っていらっしゃいます。早めにしたに行きましょうね?》


と、恐らくワイバーン種だと思われる女性に起こされる。


竜族は一応階級分けされてはいるが、それはあくまで目安のため、上の者には敬意を表すだの何だのという人族の貴族様の様な圧倒的階級社会では無いがために、そこまで待遇が変わるという訳では無いそうだ。なので今回もこのようにワイバーン種の女性が起こしに来たと思われる。


《お着替え。手伝いましょうか?》


と、他のワイバーン種をまとめ、先程の女性が聞いてくるが


「いや大丈夫です!それくらい自分でやります!」


と即座に断る。着替えを見られるとかいくらなんでも恥ずかしすぎるだろ。そんな趣味は残念ながら僕にはない!


そうして、着替えを終えた僕は、厨房へ向かう。


「お料理してるの?みせてみせてー?」


中では美味しそうな匂いと焦げ臭い匂いがいい感じにマッチして色々とやばい匂いになっている。


《あ、コハクちゃん!ちょっとまっててね?!あとで食べさせてあげるから!》


マースの声が聞こえ、他の竜族と一緒に席に座り、運ばれてくるのを待つ.......


《ん、お待たせ。味わって食べるがいい》


と、エルに言われる。そりゃ、味わって食べなきゃだめだろうね


《それじゃ、作った子が順番に食べさせてあげよう!はい、あーん》


そんなこんなで1人ずつ食べさせてもらう。

ちなみにお題は卵焼きなそうだ。


「うん!美味しいよ!ふっくらしてて!」


《ふふっ、私料理は自信あるんだ〜》


と、マースが得意げに話す。まぁ、普通に美味しいからね!


《ん、次。私の番。》


次はエルのものを食べる。


「ん〜、美味しいけどちょっと甘すぎるかな?あっ、別に不味いってわけじゃないからね?!」


と、慌てていいなおすが


《ん、分かった。今後の改善策として参考にする。感想ありがと》


《そうだな。これに関しては素直な感想をくれると嬉しい。その方があとに繋がるからな。》


てな感じで言われたのでとことん言おうと思う。お世辞無しで


《じゃあ次私ねぇー?》


と、のほほーんとしたケリアの卵焼きを食べる。


「待って?美味すぎん?え、ちょ、何これ怪しいもの入れた?」


これは本当に冗談なしに美味すぎる。口の中でとろける半熟感。甘さ、全てがちょうどいいハーモニーを繰り広げている。


《えへへー。褒められちゃった!コハクちゃんに!》


と、ケリアは上機嫌になっている。


《どれ、次は私だな。味見を入念にしたから大丈夫だとは思うが.......いささか不安だ》


と、シノルは言うが果たして.......


「うん!いい感じだね!少し焦げっぽいけれど甘さとかは丁度いいと思うよ!」


シノルの卵焼きは少し焦げっぽい。おそらく火加減を間違ったのだろう。でも味はいいので何とかなりそうだ。


《ふむふむ。分かった、次までに改善しておこう。》


次までに改善する所をメモしている。研究熱心だなぁ


《最後は私ね。不味いとか言ったらぶっ飛ばすからね?!》


なんとも脅しめいた言い方のアルセの卵焼きを頬張る.......


「うん。美味しいけど.......美味しいんだけど.......てか辛っ!何入れた!?てかこれ」


と、僕が箸で取ったのはここら辺で取れるこの世界で1番辛い香辛料。その名はワカビ

。それも1番辛い草がついてた部分の切れ端だ。


《こ、これは.......そう!卵焼きに辛味をつけたのよ!その方が新しいでしょ!?ねぇ!》


いやいやいやいや!いくらなんでも卵焼きにワカビはないだろ!さすがに死ぬわ!

とか思った僕はずっこけそうになった。


「まっ、まぁー。アレンジして色々と試すのはいいと思うけど.......ワカビは辛すぎるって.......もうちょい辛味が薄いものにしようよ。カラスィーとか」


《あー。その手があったわね。なら次からはそうするわ》


.......いや頭硬すぎでしょ!


なんてツッコミを入れたくなった。でも、こんな事が出来て僕は幸せだなぁ。そう思った瞬間だった。

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