第11話 エピローグ

 あの後、紫苑を名乗る悪霊は完全に消滅した。

 屋上の出入口を壊され、下に降りれなくなった俺達はヘリによる救助で何とか降りる事が出来た。


 今回の事を経験して思った事は一つ『二度と心霊現象に遭うのは御免だ』という事だ。


 ああ、そうそう。

 俺の家は物の見事にあの女に全壊させられてとてもじゃないが住める代物じゃ無くなってしまった。


 その為、これからどうしようかと頭を抱えていた所を上嶋さんに発見され、事情を聞いた上嶋さんは私の家に来れば? ととても魅力的かつ危険な提案をしてきた。


 俺は当然断わった。

 流石に一人暮らししてる女子の家に転がり込むなんて無理だと理由を付けて。

 いやまあ、本音を言うと本当は行きたかったけどね?


 でも上嶋さんは俺を諦めたくないらしく、説得を始めた。


 曰く上嶋さんは俺でも知ってる大企業の社長、その御令嬢なのだそうだ。

 しかし、その生活は如何に裕福であろうとも己が自由を縛られる為、幾ら着飾ろうとも心だけは裕福さを感じられなかったらしい。


 家が嫌になった極め付けは高校の時、勝手に婚約者を宛てがわれた事みたいだ。

 それから高校卒業を機に家出を決行して今の家に住んでいるらしい。

 家賃はどうしてるんだ? と問うと───


「お小遣いは月に結構貰ってたから家賃も光熱費も食費も全部ポケットマネーから支出してるんだ♪」


 ───凡人には理解出来ない言葉が帰ってきた。

 でも流石に学費は奨励金を利用してるみたいだ。

 その後何やかんや話してたら俺は上嶋さんと男女のお付き合いをする事になった。


 それからはもう流れる様に俺は荷物を纏めて上嶋さん宅のアパートに引っ越した。


「実は此処、他の部屋と比べて物凄く家賃が安いの!」


 荷解きが終わった後、二人でゆったりとソファで寛いでいた時、上嶋さんが突然のカミングアウトをした。


「あ、そう……で、何で此処だけ安いの?」


 俺の脳は上嶋さんの言葉から即座に嫌な危機感を感じ取り、このアパートから早く逃げろと激しく警鐘を鳴らす。


「あのね! 実は此処、不動産屋に曰く付きって説明されてね! だか───」


「神主ぃいいい!! あの御札もう一枚プリーズぅうううううううううううう!!?」


 上嶋さんが不吉な事を口にした瞬間、俺は上嶋さんの手を掴み神社に疾走した。

 案の定後ろを確認するとあの女の時の様に俺達の通った道が不自然にぶっ壊れるという怪奇現象が街を襲っていた。


 今度の霊は上嶋さんに執着しているみたいだ。

 幸いかどうか分からないけど上嶋さんに幽霊は見えてない様子で、これって昨日の学校の時の! と驚いた顔をしていた。

 ちなみに今回の霊は俺にも見えなかった。


 物が壊れる原因が見えてないと凄く怖い事がたった今分かった。






 父さん、母さん。

 俺の勝手で家を出てゴメン。

 今回の件でいい加減懲りたから───今からでもお家に帰ってもいいかな?






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モノグサ男と地縛霊の女 八月の夏季 @natsuto

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