第2章 支配の試行

第19話:幕間の平和

 唐突だが、修学旅行の話をしよう。


 高校生活というものを送るにあたって、ひっきりなしに襲いかかる試験やら宿題やら追試やら(追試に関しては引っかかったこと無いが)、そういう"ダルい"生活を乗り越えるための活力源のうち、大きいのはやはり年に数回ある学校行事だ。このあいだの文化祭は一年に一回ある定番の行事だが、三年間を通して最も印象深いのは、やはり修学旅行だろう。


 主に十月下旬から十一月にかけて行われるこの行事は、普通二年生で行くものだと思うんだが、何故か僕の通う学校では、一年生が行く事になっている。


 つまり、僕は一週間後に沖縄に旅立つのである。


 ……と、ここまでは良いのだが、出発二週間前というこの時に、僕の身には少々トラブルが発生していた。

 ちょっとした殺し屋との戦闘によって、入院していたのだ。


「本当に運の悪いやつだよな、お前も」


 哀れむようにそんな事を言いながら、見舞いの品だと言って持ってきた鈴カステラを自分で頬張っているのは、津久茂先輩だった。


「とは言え、一週間もすれば退院できるらしいから、修学旅行自体には行けるんだろ?」


「そうは言っても面倒臭いのに変わりは無いですよ……もう事前連絡とか始まってるでしょうに」


 溜息をつきながら、僕は包帯でぐるぐる巻きにされた体のそこかしこを見下ろす。


 ジューダスとか言う意味の分からない宗教組織から、これまた意味の分からない理屈で付け狙われ、命すら脅かされ始めたのが一週間ほど前のこと。

 結局その中で僕は、バシリスクという冷徹な殺し屋と戦い、辛くも奴を撃退したのだが……その結果、痛み分けとでも言うのか、僕自身も全身に大怪我を負った。

 その結果が、この入院生活というわけだ……今日で三日目、早くも退屈で死にそうだが。


「霊媒術でパパパッと治したり……ダメですかね?」


「馬鹿が。アレはそもそも、今すぐ動かなきゃヤバいって状況じゃなきゃ、使うようなものじゃ無いんだ。寿命を縮める事になるからな。だいたい、急に怪我が治ったらそれこそ不自然だろうが」


 怒ったような事を言いながら、津久茂先輩の表情は実際は、ほとんど動いていない。


「自分にしろ他人にしろ、人に術を使う時は細心の注意を払えよ。……いや、お前に限ってはそんな必要は無くなったんだったか」


「それは……」


「神霊と魂が繋がっちまったんだからな。しばらくは自分でも驚くことは多いだろうよ」


 神霊と魂が繋がった、、、、、、、、、

 それはバシリスクと対決したあの夜、僕が鎖を呑んだ事によって起こった、本来起こりえない現象だ。


 経絡の鎖、という霊具。

 名前を知ったのは呑み込んだ後だったが、これは人間と非人間の"繋がり"を具現化したもので、本来は悪霊に取り憑かれた時に、それを追い出すために破壊する、という使い方をするものらしい。


 だが僕は、その鎖を呑み込んだ——「破壊」の逆、保全し保管する、、、、、、、という意思のもとに。

 

 そんな僕の、いわば的外れな行動は、とっくに津久茂先輩も知っているわけだが……彼は別に起こった風でもなく、むしろ腹立たしいほど「予想通り」という顔をしていた。

 ……マジでこの人だけは何者なんだろうか?


「そういや、あの女はどこにいる?」


 さも無関心そうに尋ねられて、僕は視線を上に向けた。


「先輩が来るのが分かったら、どっか行っちゃいましたよ。多分屋上あたりで景色でも見てるんじゃないかな……ビルしかないと思うけど」


「屋上だったら、まあ鎖で繋がれた行動範囲内か。随分と嫌われたもんだ。鏡を返してやった恩も忘れたか、あの女」


「恩は忘れてないと思いますよ、多分。『あいつらのやろうとしてることは一応手伝ってやる』とか言ってましたし……僕には何のことか分からなかったけど」


「ジューダス含め、諸々の危機は去ってないって事だよ」


 言いながら津久茂先輩は、鈴カステラの袋を寝たままの姿勢の僕の腹の上に置いて、こちらに目を向ける。


「お前には今のうちに話しておくが、連中を放っておくわけには行かないんだ。場合によってはこっちから攻める覚悟で行動をとる必要がある」


「……それ、どういう事ですか?」


「世界に危機が迫ってる。大袈裟に言ってるんじゃないぞ。止められるのは、まあ、俺たちだけだ」


「世界に……?」


 津久茂先輩の目は一見いつも通りだが、そこに宿る光は真剣そのもので、冗談を言っているわけでは無いのは分かった。

 その上で「世界に危機が」なんて風に言われれば、なるほど普通は、"僕に何か出来るなら"という気分にもなるのだろうが——、

 

「……あの、僕は勘弁してもらえませんか」


 残念ながら、そんな殊勝な気分になるには、僕は少々意気地なしだった。


「……勘弁?」


「先輩の言ってることが冗談ぽいとか、信じてないとか、そう言う訳じゃ無いんですけど。でもそれってつまり、またああ言う連中と戦うって事なんですよね?」


「そりゃそうなるな」


「だったら、僕は……僕は、あんなのもう御免だと思ってるんです。あんな、命まで脅かされるような事は。あんな連中と戦うくらいなら、普通に生活してたいって」


 日常の最中、まるで覚えのない暴力に襲われたのがもう二週間も前のこと。あの後に霊媒術のイロハを教わっていた時には、僕にも出来ることがあるのかと、ワクワクすらしたものだが……今は状況が違う。そんな呑気な気分ではいられない。

 付け焼き刃の技術で付いていけるほど、甘い世界では無かったのだと、もう僕は知っている。実際僕が今生きているのは、いくつもの偶然が重なったバグみたいなものだ。


「あの時、例えばバシリスクに僕を殺すつもりがあったなら、鎖を呑む前に殺されていただろうし……落ちて来た看板が少しズレてたら、僕は頭からペチャンコになって死んでました。これから先もあんなことが続くんなら……」


「それは流石に恐ろしい、か?」


 僕は黙って頷く。

 恐ろしい——というよりも、嫌だ、、。根本は何となくという感覚でしか無いのだが、ああいう手合いを相手にするのが、途方もなく鬱陶しく感じるのだ。


 すると津久茂先輩は、さして失望した風も落胆した風も無く、


「別に嫌だってんなら構わないけどな」


 と、手を頭の後ろに組んでぼやくように言った。


「そもそもお前は、二週間後には沖縄だったろ。うじうじ考えるより、まずはそっちを楽しんで来れば良い」


「……て言うか、もう外出て大丈夫なんですか?僕」


「大丈夫だ。少なくともジューダスは、当分お前なんかに構ってる暇は無いだろうからな」


 そう答えながら津久茂先輩は、最後の一つとばかりに袋から一つ鈴カステラを掴み、口に放り込んだ。


「一週間もすりゃ退院出来るだろうから、その時は部室にも顔出せよ。小山が焼肉食わせてやるって息巻いてるからよ」


「ああ……あの人、学校から離れられないんですか?」


「別に離れられるが、土地神である以上、自分の"領土"を出れば存在は弱まる。離れないに越した事は無いから、見舞い程度で外に出たりは流石にしないだろうな」

 

 なるほど……まあ当然の理屈なのか。それでいて、焼肉を食いに外に出るのはオーケーって言うのもよく分からないが。

 あ、もしかして、部室で焼肉パーティーするつもりなんだろうか。でも臭うぞ?


「それじゃあ俺は帰るぞ。今のお前の身体は人間の常識を超えているだろうから、まあ万が一は無いだろうが、一応、大事にはしろよ」


「……ありがとうございます。あ、二人にもよろしく伝えて下さい」


「ああ。じゃあな」


 と、そう言いながら津久茂先輩は、後ろ手を振りながら病室を後にした。


 残された僕はと言うと、腕やらを改めながら、首を傾げていた。


「人間の常識を超えた……ね。やっぱりよく分からないけど」


 確かに、今までと"何かが違う"というのは感じる。だが、"何が違うのか"自分でははっきりと分からない。

 一週間程度で治るらしいこの怪我が、本来は瀕死というレベルだったという話はもう聞いているので、何か変化があった事はもう疑っていないのだが……実感が薄いというのが、今のところの感想だった。







 で、一週間後。

 予定通りに怪我は完治し、僕はめでたく(?)退院する運びとなった。


 その時にはもう修学旅行の六日前という事で、確実に遅れている準備や連絡事項の共有は、当然ながら面倒だったのだが……実際は思っていたほどでは無かった、というのも事実である。


 それもこれも、入院の直前に連絡先を交換していた、頼れる優等生のおかげだった。

 つまり、宮本が修学旅行関連の連絡を、逐一僕に伝達してくれていたのだ。


 よくある「医療機器に悪影響が云々」という理由での携帯電話の使用禁止令は、出されていなかった。

 幸い意識が戻った時には、もう僕の身体はきちんとした医療設備を必要としていなかったというのが主な理由だ。流石に通話は、"ご遠慮ください"だったが。


 ちなみに最も返信に困ったのは、


〈明日、行動班の班分けを決める予定。領場くん、誰かと一緒の班になるって決めてる?決まってないんだったら、私と同じ班に入れちゃって良いかな?〉


 というメール。

 お察しの通り僕には一緒の班になろうと決めている友達など一人もいないのだが、宮本と同じ班になると言うのは断固拒否させてもらった。


 と言うのも、あいつはあの善良な性格相応に人気者なので、宮本と同じ班になる人間といえば、基本的にはクラスでも発言力があったりルックスが良かったりする連中に決まっているからだ。

 そんなところに僕みたいな奴が入院している間に枠一つを埋めたら、後々どんな視線を向けられるか分かったものでは無い。というか、いきなりクラスの中心的メンツと同じ班に放り込まれても、当日に僕が困る。


 そんなわけで、僕が返したメールはこう。


〈一緒になる予定の友達はいないけど、宮本と同じ班というのは辞退させて下さい。気まずそうなので。人数で余った班に入れておいて〉


 後で読み返してみると、捉えようによっては相手の気分を著しく害しそうな文面だったが、……まあ宮本なら大丈夫だろう。

 何故か自己評価が低い彼女だが、果たして僕の意図を正確に汲んでくれるか、かなり心配ではあったが。


 ……余談だが、運び込まれた時は命に関わるほどだった怪我がただの一週間やそこらで治ったことについて、その道のプロであるはずの担当医はさして不思議そうにもしていなかった。

 その辺は津久茂先輩あたりが記憶を改竄してくれていたのだろう。


 そして退院の翌日、僕は実に十日ぶりに学校へ行った。

 別に歓迎もされず、鬱陶しがられもせず、普通にクラスに戻った僕である。宮本は、まあ、登校して一番に声をかけてくれたのは嬉しかったか。


 そして、その日の放課後。


「……どうして僕は退院後初日の放課後に、居残りをしてるんだろう」


「そりゃあ、領場くんが修学旅行実行委員だからでしょ?私と一緒で」


 午後五時を回り、いい加減津久茂先輩や八百萬先輩も帰っているだろうという時間帯。僕は宮本と机を合わせ、二人きりで雑務に駆られていた。

 別に予定は無いが、やりたくもない雑事で教室に居残りをしているという状況は、面白くは無い。


「仕方ないでしょ?各委員の人数考えたら、全体で一人分足りたくなっちゃったんだから」


「……そうは言うけど、宮本は学級委員と兼任じゃないか」


「それこそ仕方ないの。それぞれの委員の人数考えたら一人分足りなくなっちゃったんだから」


 だとしても普通、一番仕事が多い学級委員長が兼任なんてするか?と思ったが、このお節介焼きの事だ、自分から「じゃあ私がやります」と言い出したのだろう。


 ともかく、そんな雑談をしている間にも、宮本は着々と手を動かしていた。雑談相応の仕事しか出来ていない僕が、申し訳無くなるくらいに。


「……えっと、飛行機の席分けは班ごとで良いんだっけ?」


「ううん、飛行機の座席は当日にならないと分からないと思う。チケットは初日に空港で配られるんだから」


「ああ、"来た順"か……」


 と、僕が真面目に仕事をしようとしてみても、結局のところ宮本の足を引っ張るような感じになるので、どうしようもないのだが。

 僕に出来るのは、それとなく必要そうなタイミングで彼女にペンを手渡すことくらいだ。


「でも、楽しみだね」


「ん?」


「修学旅行。飛行機って初めてだから」


「え、そうなの?」


 僕は思わず訊き返す。

 優等生であるところの宮本は、てっきり海外研修とかの経験くらいあるものだと思っていたのだが。


「お母さんが……ちょっと、そう言うのに厳しくてね。子供が親から離れて遠くに行くものじゃありません、って」


「へえ……子供が優秀だと、親ってそんなものなのかね。それにしたって、国内旅行とかで乗る機会はあるだろうに」


「私の家、そんなに裕福じゃないから。領場くんは飛行機には乗ったことあるの?」


 そう訊かれて、今度は僕が首を横に振る番だった。


「僕は家族旅行とかは、アレだし……実は首都圏から出るのも初めてだったりするんだけど」


「そうなんだ。じゃあ、なおさら楽しみなんじゃない?」


「飛行機はともかく、沖縄は楽しみかな。配られたしおりのさ、見た?ホテルが馬鹿みたいに豪華だったの。ググってみたんだけど、料理もバカ豪華だったよ」


「沖縄が楽しみって普通、海とかじゃないの?」


 そう宮本に笑われて、僕は少し後悔した。意地汚い奴だと思われただろうか……とか、彼女がそんな小さいやつじゃない事は知っていても、考えてしまう。


「……そう言えば、班分けは終わったんだっけ?」


「あ、うん。領場くんの希望通り、人数が少なくなった班に入れておいたよ」


「それは良かった」


 主に、そう報告してくれる宮本の表情が、特段機嫌悪そうには見えないことが。

 と、そんな風に内心胸を撫で下ろす僕に、宮本は「修学旅行」とタグの付けられたクリアファイルから、一枚の紙を取り出して見せてきた。


「領場くんは一班。私と同じ班だね」


「ああ、宮本と同じ……宮本と同じ⁉︎」


 僕は飛び上がるような勢いで、宮本の手から班分け表を奪い取った。

 そこに目を落とせば確かに、八つに区切られた名表の中、僕と宮本の名前は同じ枠の中に書かれている。


「おい……おい、どういう事だ、余りものチームに入ったんじゃないのか⁉︎」


「え、だから人数的に少なくなった班に入れたんだって。……余りものって、ちょっと酷くない?」


「いやおかしいだろ、何でお前のいる班が余りチームなんだよ!」


「だから余り……もう良いや。何でって、班分けはクジ引きで決めることにしたのよ。纏まりつかなくなると面倒そうだったから」


「クジ引き……!」


 確かにそれは、どんな人気者でも余りものチームに入りかねない方法だが、だとしたらこのメンツはどういうことだ。

 スポーツ万能の小林竜生こばやしりゅうせい、容姿端麗の佐山美代さやまみよ、兄貴肌の北山啓介きたやまけいすけ……一班のメンバーは、宮本含めて皆が皆、クラスの人気者ばかりじゃないか。クジ引きなのに、見事にとても楽しそうなメンバーになってるじゃないか。


「……おかしい。絶対におかしい!本当はみんなで示し合わせて、クラスのボッチを陽キャ軍団に放り込んでやろうってイジメじゃないのか⁉︎」


「ちょっと何言ってるのか分からないんだけど……あの、イジメは無いと思うよ。少なくともクジは公正に行われたから。ウチのクラスにイジメは無いから」


「本当だろうな、それ……」


 宮本は才色兼備の優等生ではあるのだが、若干人の悪意に鈍いきらいがあるので、その辺はあまり信用ならなかった。

 もっともクラスにまったく溶け込めていない僕なので、真偽を確かめる術は無いのだが。


「ねえ、そんなことより領場くん」


「そんなこと……」


 決まったものは仕方ないと言うなら、それはどうしようもなく正論なんだが。

 と、半ば冗談半ば本気で憂鬱な僕をスルーし(やっぱり人の負の感情に鈍いじゃないか!)、宮本は話を続ける。


「私たちの学校って、修学旅行は一年生で行くじゃない。どうしてか知ってる?」


「いや……ていうかウチの学校、やっぱり珍しいのか?」


「うん。普通は二年生で行くものだと思うし……それでね、その理由について私、ある噂を聞いて」


「噂?」


 妙に神妙な面持ちで、宮本は頷いた。


「昔、この学校で生徒が自殺したんだって。修学旅行の直前の、二年生の女の人が。そうしたら、その次の年から修学旅行で事故が多発するようになったらしいの」


「それって……つまり、その自殺した人の怨念ってこと?修学旅行に行けなかったから」


「っていう、噂ね」


 と、興味を駆り立てる風に言われても……修学旅行に行く時期が普通と違う理由とか、教員に訊けば普通に分かりそうなものだ、というのが正直な感想だった。


「だったら先生に理由を教えて貰えば良いじゃないか」


 だから思ったままの感想を言ってみたのだが、これに対する宮本の反応は、あまり明るいものではなかった。


「……訊いてみたのよ、私。でも教えて貰えなかったの」


「教えて貰えなかった……?」


「うん。私も最初は興味本位だったんだけど、どの先生も適当にはぐらかすばかりで」


 それはおかしいな、と僕は思う。

 宮本は同級生からはもちろん、教師からの信頼もそれなりに厚い。彼女が訊けば大抵のことは答えてもらえるだろうに。


「だから、何かいわく、、、はあるんじゃないかな、って思うのよね。怨念がどうの、ってほど非現実的じゃなくても、何か」


「確かに理由はあるはずだよな、そりゃあ。……でも、何だってそんなこと僕に話すんだ?」


 宮本が教えて貰えなかったことを、僕が教えて貰えるわけが無いだろうに。

 

「そうじゃなくって。領場くんって確か、オカルト部だったじゃない。そっち方面、、、、、の切り口から、探れる人脈もあるんじゃないかなーって」


「ああ……なるほど」


 まあ、確かにあの先輩たちなら……特に小山先輩は、この学校の全てを掌握しているわけだから、何か知ってそうではあるか。


「分かったよ、先輩に何か知らないか訊いておく。……けど、宮本ってそんなに好奇心強かったのか?オカルトっぽいのは、てっきり信じないタイプだと思ってたけど」


「そんなことは無いわよ。私、霊感強い方だし……だからかな、なんか今回の修学旅行、ちょっと嫌な予感がするのよね」


「嫌な予感、って……不吉なこと言うなよ」


 宮本の言うことだと、どんなに根拠が希薄でも真実めいて聞こえるので、僕は半ば本気でやめてくれと思う。


「ごめんごめん。でもこういうの、気になると気になるじゃない。だから出発前に払拭しておきたいなって」


「……まあ、努力はするよ。気になるのはともかく、お前の嫌な予感ってやつは払拭しておいてもらいたいし」


 しかし、この学校には強力な霊媒師が少なくとも二人、それに土地神なんていう常識外の存在まで住みついている。

 そういうのを考えると、怨念がどうのこうの……っていう理由も、普通にあり得そうで怖くなる。


 津久茂先輩と八百萬先輩はもう帰っているだろうが、小山先輩は部室で呼べば会えるはずだ。修学旅行の雑務もようやくひと段落つきそうだし、部室に寄ってから帰るとしようか。

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追憶のアニミズム オセロット @524taro13

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