挙兵


 小さな地震が来てからしばらくして、エルフィが屋敷にやって来た。用件は分かっていた。


「成功したんだな、ダンジョンの集合」


「うん。君達が連れてきてくれたから後は簡単だったよ」


 ダンジョン集合。つまり、全十三迷宮を一点に集めたと言うことだ。第十三迷宮セルニーにダンジョンのコアを全て配置する。その行為にはそれ相応の魔力が必要になるのだが、当然魔女の死体だけでは足りない。


 魔力の流れがさらに変わるほどの出来事がここセルニーでは密かに起こっていたのだ。時さえねじ曲げる大魔法――その産物。時空間を越えてやって来た俺の目は、ほぼ世界中の魔力に影響を与えた。未来の俺がここまで計算したのかは分からないが、それを利用したのだ。


「ここから、だね」


「ああ、本音を言えば何も起こらないで欲しいが……」


「――変に期待しない方がいいよ。多分、来る」


 さて、分散させることでどれか一つのダンジョンが崩壊しても他で補いあえる、という利点を無くしてまで一点に集めたのは、二つの理由がある。


 一つ。アノニアス教団とは遠くないうちに戦う事になる。妨害工作は続けてきたが、既に教団側の準備は終わっている。いつダンジョンを潰しに来てもおかしくない。その際、守る場所が分散していると防衛が困難なのだ。


 二つ。また教団関連だが、この件で彼らに一つ問うたのだ。


 ――ダンジョンについてどこまで知っているのか。


 もし表面的な、つまりダンジョンとは魔物の生まれる場所という認識しか無く、本当に魔物根絶のためにダンジョンを落とそうとしているのなら、彼らはこの結果に満足し進行を止めるだろう。


 もし教団の名前どおり、アノニアスをダンジョンという存在を知っており、その上で活動しているのならここを攻めてくる筈だ。そこを見極める必要があった。


 当然、前者を希望していた。

 しかしながら、希望通り行く筈がなく。


 その日、セルニーに国を上げた大軍が派遣されたとの情報が入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネクロマンサー 猫茶 @nekotha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ