第21話 嘘のような事実

「……何?」

 ライアンは突き刺そうとした槍を止める。


へへ、食い付いた。


「何を……言ってるんだ……?」

「言葉の通りだ。あんたもわかってるんだろ?」


 普通ならばこんな状況で言っても、突拍子もない嘘に聞こえる。けど、事実だとお前にはわかってしまうからな。


「……ありえない、例えそんな世界があったとして、どうして君はここに……?」

「ベッドから落ちてな」

「……は?」


困惑するライアン。

「何故そんなことが……?」

「さぁな、最近の流行りなんだよ」

「ますます意味がわからない」


よし、後はこいつがピンとくる事実だけを並べていけば。


「残念だったな、俺の世界にはお前んとこの魔王なんて、存在すら知られてない。いたって平和なほうだ」

「……君は変わってると思っていたが、住む世界そのものが違うとは、驚かざるおえないね」


「あぁ、おかげ大変だったぜ。ただ、俺がいた世界を知らないなんて可哀想に。所詮は井の中の蛙ってことだ」

「それどういう意味?」


「おっと! こりゃ失礼、こっちの世界だけのことわざを、使ってしまったみたいだな。要は、自分達の知ってる範囲内、世界だけでしか物事を考えられてないってことだ。こっちの世界も楽しいが、あっちの世界の娯楽もなかなかだぜ?」


「本当に君は面白い……決めた、殺すのはやめだ」


やったぜ。


「操ることにしよう」

「えっ」


 ライアンはしゃがむとセンの頭に手をやり、黒いオーラを出す。

「あ、ちょ、ううっ!?」

「続きの話はまた今度聞くよ〜。減らず口がなくなった人形としてね」


あぁ……意識が遠のいて……


 そこで【エニウェイドア】から、鎌と剣を持った2人の女性が現れ、飛びかかる。ライアンはそれに気づいて盾で防ぐが、鎌を持った女性の掌底を受けてその場を離れる。


「エマ、セイバ……」

あぁ、よかった、来てくれたのか。割と間一髪だ。意識がなくなりそうで、頭が痛む。


「大丈夫ですかセンさん!?」

エマが俺の頭を抱え上げる。


「あぁ、あとは頼むわ……」

「はいっ! お任せください!」

エマがいるなら一安心だ。情け無いがお願いしよう、あいつがボコボコになるのを。


「ササガミ、お前まで死んだらと思うと私は……」

涙を流し、声を震わして語りかけるセイバ。

「大丈夫だ。……あ、そうだセイバ」

「な、何だ?」


「……一発殴っといた」

「あぁ……よくぞやってくれた」

手を強く握りしめ、笑って返事をする。そこへ8本の黒い槍が飛んでくるが、エマが鎌で全部薙ぎ払う。


「ごふ!?」

 センは抱え上げられた頭が急遽落ち、地面に打って意識を失う。


「人が話してるのに失礼ですね」

「いやいや〜チャンスは逃さないし、こうやって生きて来たからね〜」

「団、いやライアン。貴様だけは絶対に許さない……エマ殿、力を貸して欲しい」

「勿論です。そのために私は……センさんが繋いでくれたんですから」

2人は各々の武器を前に差し出す。


「「必ず貴様を討つ!」」

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異世界最序盤に闇の力を選んだら! 半兵阿 @hanbear3

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