第20話 一発
セイバは街の門の前まで走って来ていた。
「もう少しだけ待っててくれササガミ……!」
門をくぐり、人や馬車が行き交う大通りを走り抜ける。小道に入り、前に白い甲冑と兜をつけた光の騎士団団員が見える。
「そんなに慌てて、どうされたのですか副騎士団長殿?」
「すまんっ! 今は急いでいる!」
団員を横目に通り過ぎる。その後、背後から殺気を感じ、横に身をよじる。団員が突き刺した剣を服がかすめた。
「な、何をする!?」
セイバは剣を引き抜き、さらに斬りかっかて来る団員の剣を受け止める。
「副……騎士……死を」
「正気ではないなお前……」
セイバは剣を振るい、団員が持っている剣を払い落とす。その際に物陰からゾロゾロ団員が出て来る。人数は騎士団全員と一致した。
「副……命を……散らせ」
「くっ、邪魔をするなら押し通る!」
セイバは団員達に斬りかかっていった。
〜〜〜〜〜
センは倒れかかった身体を、地に剣を刺して支える。
「もう限界でしょ〜。君の身体であのセイバ以上の動きをしてたんだから、負担は半端ない。行き過ぎた強化は身を滅ぼしていくが、高揚感に包まれ、限界まで気付かない。それが恐ろしい闇の力なんだ」
「黙ってろ……これは俺が用法用量を守らなかっただけだ」
身体中がすげぇ痛い、でも動けはする。死ぬことに比べれば安いもんだ、そう自分に言い聞かせて立ち上がる。
「それにお陰で目が覚めたぜ。俺は賢く闘う派だから」
「僕からしたら小賢しいけどね」
黒い槍が放たれ、センは横に飛び、倒れ込んでなんとか避ける。
しかし、暴走してたとはいえ、無理に強化した状態で、全く攻撃が通らなかったのはショックだ。あの槍を一旦どうにかするしかない。そしてまた、一か八かの勝負勝負をしよう。
「覚悟を決めないとな……【バスターク】」
動かなきゃ殺される。そのために今は身体に鞭を打つ。後は、さっき出来たあれを……
センは両手でバスケットボールぐらいの【黒弾】を作った後に、右手で持つよう浮かせ、左手で指先に通常サイズの【黒弾】を5個作る。
センはライアンの元へ走り出す。黒い槍先がセンを捉える。
「させっかよ!」
黒い槍に向かって5個の【黒弾】を放ち、弾き散らす。
その後、バスケットボールぐらいの【黒弾】を投げるよう放つ。黒い槍3本で迎撃しようとするが、その【黒弾】は複雑な軌道で向かっていき、捉えられなかった。最終的にライアンの真上からストンッと落ちるが、盾を上にして防がれる。
「くっ!」
ただ、その衝撃で片膝をつく。ライアンは気がつくと、センは手前まで来ていた。
槍で突こうとするが、センの身体が急に沈み、空振る。セイバに唯一褒められたスライディングの妙技だ。
センのスライディングした蹴りでライアンは体勢を崩して倒れる。すかさずセンは馬乗りになるが、背後から黒い槍3本が飛んでくる。
「うおおおお!【ダークウェア】!」
背中に槍が刺さると同時に、ライアンの顔に拳がめり込んだ。
「ぐっ!? ……【白爆】」
センの胸辺りに小さな光が現れ、小規模の爆発が起き、吹き飛ばされて槍が抜ける。
「くそっ、せっかくのチャンスが……」
立ち上がろうとするが、ピクピクと震えるだけでもう身体が動かなかった。背中の刺し傷も、貫通はしていないものの、浅くはない。
「ハァハァ……【リボーンうぐっ!?」
せめて傷だけは治そうとするが、ライアンが顔を踏みつけてくる。
「いてて、口の中切れちゃったよ。大健闘じゃない? それじゃあもうおやすみといこうか」
ライアンは槍を振り上げる。
ここまでか……いやまだ口は動く、何とか嘘八百でこいつの気を……ちげぇ、こいつには嘘がわかっちまう。だとしても、本当の事実だけでこいつを引きつけるものなんて……あ。
ライアンが槍を突こうとする。
「……俺は違う世界から来た」
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