第19話 闇の力の間違った使い方
相手が相手だ。今回ばかりは無理をしないと、生き残ることは難しいだろう。エマには申し訳ないが、あの感覚に身を委ねよう。
「……【バスターク】」
身体が赤黒く輝く。ただいつもより濃く、禍々しく。そして身体に吸収されるよう消えるが、目だけはまだ赤黒い輝きを残していた。
8本の黒い槍が時間差で正面から飛んでくる。それを前に走りながら次々と躱す。そこにライアンが前に出て槍を突く。
その槍先を左手で掴んでブレーキをかけ、右脚でカウンターを入れるが、盾で防がれる。
そうしてる間に、先程放たれた黒い槍の槍先がセンを捉え、放たれる。センは飛んで、ライアンの頭上を宙返りし、背後に回って回避する。
「おいおい、確実に殺すんだろぉ? もちっと楽しませろよ!」
なんとか黒い槍は避け、攻撃を仕掛けられる。なら、どんどん攻めてやる。
俺はそのまま連続して蹴りを放っていく。
「闇の……暴走か」
蹴りの猛攻を躱し、時には盾で受けながら後ろに下がり、黒い槍を放つ。
「ハッ! 馬鹿の1つ覚えかよ!」
飛んでくる黒い槍の1本目をキャッチし、それを振り回して他の黒い槍を全部弾く。
「へっ、ご丁寧に武器をよこしうおっ!?」
持っていた黒い槍が急に一回転し、空中に身を投げられる。
「【白爆】」
センの方を指差すと、その周辺が白く輝き出す。
「な、何だ!?」
「闇の力を使う者なら、それに相応しい技を与えよう」
センの身体周辺の白い輝きが、一瞬眩しく光ると爆発した。爆発の煙が立ち込み、その中でボロボロになったセンが倒れている。
何だ……? この有様なのに、身体が全然痛くねぇ。むしろ力がどんどん湧いてくる。何寝てんだ俺は? 早くあいつを壊して殺して、命を散らしてやらないと。
ガバッと立ち上がるセン。
「サイコパス野郎が……らしくねぇ技を使うなよ」
一瞬でライアンの目の前に詰め、飛び蹴りをする。
「くっ!」
盾で防ぐが、衝撃で大きく後ろに下がる。その間に黒い槍で反撃しようとする。
今ならやれる……あの女のように……!
それぞれの指先で黒いオーラが現れ、【黒弾】を10個作り出し、放って黒い槍を迎撃させる。余った2つの【黒弾】がライアンの付近の地面に当たり、土煙が舞う。
センは今度、両手で包むように【黒弾】を作り、バスケットボールぐらいの黒い球が出来上がる。それを土煙の中に放つ。すると、ボンッという炸裂音と共に土煙が一瞬で払われる。しかし、そこにライアンの姿はなかった。
「あぁ?」
【エニウェイドア】でライアンは後ろに現れ、槍でなぎ払おうとする。だがそれを見ずに躱し、猛攻を仕掛けながら不敵に笑う。
色んな感覚が鋭敏になっている。身体が羽毛のように軽い。力が溢れる。頭で想像した通りに身体が動く。楽しい愉しい樂しい、あぁ、もっと……もっと俺にこの力を……!
「ヒヒ、ヒャッハハハハハハ!!」
「……そろそろかな」
ライアンに向かおうとした瞬間、身体に激痛が走り、膝から崩れ落ちた。
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