第18話 勝利条件のために
俺とセイバは木々が密集しているところ走っていた。
「うまく撒けたみたいだな」
「む、しかし驚いたぞ。あそこまでやって逃げるとは」
「そりゃじっくりと本当の作戦を考えたかったし」
あのときセイバに言ったのはこうだった。
〜〜〜〜〜
「そしたら、セイバが奴の気を引いて、俺が【黒弾】で土煙を上げる。今だ!って言ったら適当に技名だけ言って逃げる。だからバレないよう闘うフリをしてくれ」
〜〜〜〜〜
「さて、どうすっか。セイバは他に何か技使える?」
「あぁ【閃斬】より大きい斬撃、刀身を光で大きくする技、後は浄化魔法くらいだが、全部ライアンに知られている」
「そっか……」
うまく逃げられたものの、問題は山積みだ。エマがいる街へ向かおうにも、今は森の中で木々が視界を遮っているが、草原地帯だと多少の丘陵はあるものの、簡単に見つかってしまい、【エニウェイドア】で距離を詰められてしまう。
2人で勝負を挑んでも、技が知られているセイバに、俺は戦力になっても決め手にはならないだろう。最善の勝利条件、何かないか……俺が今まで教わってきた何かで……!
「セイバ、今度こそ本当の作戦がある」
〜〜〜〜〜
ライアンは【エニウェイドア】で森林地帯の入り口に現れる。
「さて、ここで待ち伏せておけば。もう森を出てるかもしれないし、一旦捜索を」
少し離れたところにセイバの姿が見える。
「……探す手間が省けたね」
ライアンはセイバに近寄る。
「やぁ。セン君を逃して、あわよくば僕を討つきかな? 君には稽古で負けてるから自信ないなぁ。しっかし、君は先代に拾われたからかね? どことなく似てる。死に際もきっとよく似てるんだろう、許……せん……とか言ってね。あっはっは!」
セイバは黙ったまま睨み、両手で剣を構える。
「だんまり、か。セン君に何か吹き込まれたかな? なら、とっとと終わりにしようか」
8本の黒い槍が現れ、一斉に放たれる。セイバは横に走って躱していく。走る先にライアン騎士団長が【エニウェイドア】を使って現れ、槍を振るう。
セイバはすぐさま距離を取って回避し、片手を背に隠す。そして手を背から出すと【黒弾】を投げるよう放つ。
「何!?」
ライアンは盾で防ごうとするが、【黒弾】はカーブして背後に回る。それを何とか黒い槍で捉えて防いだ。
「ちっ! もうちょいだったんだがな」
セイバの姿が徐々に変わり、元の姿になる。惹きつけられたが、不意打ちはダメだったか。
「これは一杯食わされたね〜。君も変身できたんか」
「近くに被写体がいればな。それにお前がセイバ相手なら、ねちねちと精神攻撃して時間が稼げると思ってなぁ」
まぁあんだけ言われたら、またセイバも激情して突っ込むだろうな。加えて、手の内が知られてるからセイバだけじゃ勝てない。
だがそこにエマもぶつけてみたら? 闇の力に精通し、あの馬鹿でかいタイラントウルフキングを、軽々と倒したエマの実力は折り紙付きだ。秘策も教えてある。
あの2人が共闘したら、鬼に金棒だろう。そのためには無事、セイバを街に行かせなきゃならない。それが勝利条件だ。後は俺がどこまで生き延びられるかだな……
「さてさて、俺はアンタがセイバを殺す絶好の機会を潰し、逃げ果せ、またしても欺いてやった男だ。逃してくれたらまた何か驚かしてやるよ」
こいつ的には、後で厄介なセイバの方を狙いたいはずだ。だから、武器をわざわざ交換してまで引きつけた。後はひたすら煽って、俺から殺すよう仕向ける。
「ま、何にせよ、君はここで確実に殺すよ」
「慈悲もねぇな、前は紅茶くらい出してくれたのに」
「アレ自白剤入り」
「お前やっぱ糞だわ」
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