きらきらぼし

部屋が寒かったから、もっと寒い外へ出た

すこしでもこの八畳に温もりを感じたくて


寒さは、コントラストだ


寒ければ寒いほど、星はかがやき、街はあかるく、そして闇はくらい

いとしさはふかく、さみしさはするどい


ひきちぎられた真珠の首かざりみたいな、きらきらぼし

それを見あげておもいだしたのは、いつかの夜に見おろした街灯り


ゆらめくひかりが、泳ぐ魚の鱗のようだと

街は夜には海にしずむのだろうか などと

子どものようにつぶやいた私の頭を

しずかに撫でたきみこそが海だと

知ったあの夜

うつくしい、きおく


指先が痛くなってようやく、部屋に戻ることを思い出す

八畳間は相変わらず冷え切っていて、きみがいた形跡はどこにもない


時計を見れば、午前3時59分

きみがいないと、いつ寝ればいいのかも分からない

ひとりの夜の過ごしかたさえも思い出せない


暖房でぬくもりを捏造しても、ダブルサイズの布団はなかなかあたたまらない


こんなに広かっただろうか

こんなに寒かっただろうか


寒さは、コントラストだ


きみがいないという事実を

これほどまでに際だたせる


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

She,詩,死 @aster_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る