バイト:2年5組 サクラギ ミコト
中学時代のクラスメイトと駅前のファストフード店で会った。店員と客の関係で、だ。エプロンと帽子を付けて、厨房に立ち、ポテトを揚げていた。俺は気が付いていなくて、注文番号が呼ばれてスマホから顔をあげたら、クラスメイトだったあいつが笑っていた。
「よ、久しぶり」
「……あ、亮じゃん。久しぶり。なに、バイトしてるんだ」
「おう。では、ごゆっくりどうぞー」
トレーとともに貰ったのが営業スマイルなのか同級生への笑顔をなのか、分からなかった。分からなかったが、とても格好良く見えた。
私の通う高校はバイトが禁止されている。というか、長期休業の短期バイトしか認められていない。小遣い稼ぎは夏休みのコンビニのバイトぐらいしかないが、うちは親が許さないからバイト経験がない。だから、とても驚いたのだ。
そっか。高校生って働けるんだ。
スマホの電源を入れて、さっき見ていた化粧品レビューの投稿を見つめる。新作のチークとアイシャドウ、可愛いな。でも高い。今月のお小遣いで買える値段だけど、これ買っちゃったら来月までカラオケもプリクラも行けなくなる。お年玉は友達と夢の国に行く為に貯金したいし、臨時収入なんて見込めない。
「バイトか……」
きっと母は反対する。高校生は学生なんだから勉学に励むのが本分でしょ、て。
カバンから数学の問題集を取り出しながら唸る。塾に行かない私の自習室代わりだったこのハンバーガーショップ。これからも利用するか悩みどころだ。
* * *
「バイト」って響きだけで格好いい。ひとつ大人になったみたいに思える。
古着屋で働いてみたい。カフェも素敵だ。賄いとか食べてみたいし、コンビニとかだったらお弁当もらえたりするのかな。レジ打ちしてみたいし、プレゼント包装とか憧れる。年上の男性とか好きになっちゃうかもしれないし、高校以外の友達が出来るのも良い事だと思う。
バイトだって社会を学ぶ立派な勉強になると思う。
大学生になったら、バイトがしたい。
_______________
「ミライ」に夢を膨らませる少女の話
水ノ葉高校の365日 涼暮 憂灯-スズクレ ユウヒ @1435yuh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。水ノ葉高校の365日の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます