第4話冒険者ギルド

つ・い・た・ぞー!!!


 親切なおじさんから解放された僕は、町を見てテンションが上がる。


 「…さいっこう……!!」


 まだ夕方だけど、たくさんの人に屋台やお店が並んでいる。特に、あの焼き鳥みたいなのを売っている、おじさんの屋台は今の僕には効果抜群である。だが、我慢しなければならない。僕には冒険者ギルドというところに行かなければならないから。どこにあるか知らないけど。あと、お金がないからそもそも買えない。お金が手に入ったらあの焼き鳥を買おう。絶対に。


 「…とりあえず冒険者ギルドに向かわないと」


 こんな大勢いる中歩きたくないけど致し方ない。歩かないと、冒険者ギルドにはたどり着かないのです。はい。


 とりあえず、当面の目標としては、冒険者ギルドに入る。あとお仕事してお金を貯める。冒険者ギルドって言うんだから、何かしら僕でも出来るお仕事あるでしょ。きっと。門にいたおじさんだって10才以上から作れるっていってたし。作れるってことは、お仕事も出来るってことだよきっと。


 身体能力は高いから、何日だって働けるよ! 力仕事もどんとこい! だけど、細々したのはむりだ! 昔から僕って、細々したの嫌いなんだよね。何て言うか、イラついてしまう。うん。…うん? むかし? …ん?


 「……まぁ、なるようになれとしかいえないかな」


 きちゃったなら仕方ない。その時はちゃんとやるよ。できる範囲でね!


 「ん? お、おぉ、ここかな? ここじゃない?」


 どのくらい歩ったかはわからないけど、ちょうど僕の目の前に、剣と杖の模型が立て掛けられている建物があった。入り口横に看板が合ったので、見てみると、[冒険者ギルドサタイル支部へようこそ]と書かれていた。


 よし。ビンゴだね。1人で入るのすごく緊張するけど、別に悪いことしてる訳じゃないんだから、堂々と行かないと。


 「すぅ…はぁ…よし! …れっつごぉ」


 カランカラン。


 扉を開けると、上にベルがついてたみたいで、音がなる。冒険者ギルドの中は、案外広く、左には、酒場かな? ジョッキみたいな大きさの、取手付きの樽を片手に持って、騒いでる人がいる。右には、ボードが何個か置いてあって、そこに紙みたいのが貼られている。真ん中の奥に受付らしきものがあった。


 とりあえず、僕はその受付の方に歩く。道中、ものすごい視線を感じるんだけど、なんでだろう。やっぱ見た目かな。うぅ…これ個室とかないかなぁ。ないよねぇ。


 なんとか受付までたどり着いた僕は、とりあえず、一番端の所が空いていたので、そこに向かった。


 「あ、あの、冒険者の登録をお願いしたいのですけど……」


 「え? …えと、登録…ですか? 依頼とかではなく?」


 受付の人がポカーンと僕をみてくる。やっぱ身長か。身長なんだな。身長が低いから、疑われるんだな。


 「は、はい」


 「…申し訳ございません。一度こちらの水晶に手を置いてもらえますか? 規定として、見ただけで判断できないときは使うようになっていまして」


 そう言いながら、下から、さっきおじさんのとこでみせられた水晶を取り出した。だけど、大きさがこっちの方が小さかった。向こうのはメロンくらいのサイズあったけど、こっちのはミカン並みに小さい。


 絶対に年齢確認でしょ。と思いながら、水晶に手をのせる。


 「それでは、年齢の方はいくつでしょうか?」


 ほら! やっぱり! 年齢確認だ! くぅ…未成年の時に、コンビニでお酒を買うみたいな緊張感。


 「…14です」


 「…へ?」


 やめてぇぇ! そんな目で僕をみないでぇぇ!! 絶対に何いってんだこいつとか思ってる! 


 「…あ、えと…はい。確かに嘘は言ってないみたいですね。申し訳ございません」


 「…ちいさくてごめんなさい」


 何秒たっても、水晶に変化がなかったから、信じてもらえた。…牛乳とか飲めば身長伸びるかな。


 「そ、それではこちらの紙に名前、性別、年齢、種族、下の枠に自身が得意なこととかを書いてください。空欄でも大丈夫です。もし書いといてもらえれば、どこかがパーティーなどを募集している際、オススメすることなどができるだけなので」


 うーん。身体能力は高いから書いた方がいいんだろうけど、絶対に笑われそうだから空欄でいいかなここは。そしたら名前に、ユウ、と。性別が女…はぁ。年齢が14…はぁ。種族が人間っと。…え? ステータスをよく見ろ? 種族が人間じゃないって? ……マッタクキオクニゴザイマセンネ。


 「はい。書き終わりました」


 「…はい。大丈夫そうですね。では今からお作りしてきますので少々お待ちください」


 ぺこりと頭を下げて、奥の方に歩いていった受付の人。今思えば、普通に読み書き出来ていたことに驚いた。これは異世界人補正かな? なんちゃって笑


 まぁ、出来るならそれはそれで嬉しいからいいんだけどね。


 誰かに絡まれるかな、と思いながら、待つこと数分。特に誰からも絡まれることなく、受付の人が戻ってきた。


 「お待たせしました。こちらがギルドカードになります。無くした場合は、再発行に、銀貨2枚かかりますのでご注意ください」


 受付の人に渡されたのは、トランプほどの大きさで、ずいぶんシンプルなカードだった。


 ギルドカード~サタイル支部発行~

 ランク:E

 名前:ユウ

 性別:女

 年齢:14

 種族:人間


 「それでは、冒険者ギルドを利用するにあたって、説明との方をさせてもらいますね」


 「まず、ギルドランクというものがありまして、下から、E、D、C、B、A、Sの6つあります。ユウ様のランクはEですね。Eランクは主に、町での雑用が仕事になります。それを10回クリアいたしますと、Dランクへと昇格されます。Dランクになりますと、町での雑用にプラス、外での、採取依頼と、簡単な魔物の討伐依頼がうけられるようになります。DからCへ昇格させるためには、外での採取依頼と討伐依頼を5回クリアする必要になります。CからBに昇格する条件は、Cランクになったらお伝えいたしますね」


 「尚、ランクは自動で昇格するのではなく、条件達成後、昇格試験というのを受けてもらいます。これは、その人がこのランクに上がってもやっていけるかを確かめるためですね。もし、この昇格試験に落ちた場合、再度条件を達成しなければ、試験を受けることができなくなります」


 「ここでは、ユウ様から見て、右に、依頼の紙が貼っているボードがあります。あちらのボードから、適正ランクの紙を剥がしてこちらへと持ってきてください。依頼を受けるのに、ギルドカードが必要となりますので、忘れずにお持ちください」


 「以上で、説明は終わりです。次にギルドでの注意事項ですが、依頼には、期限というものがたまにありまして、依頼を受けてから、何日かまでにクリアしなければ、失敗となります。この、失敗が合計で5回起こしますと、罰金として金貨1枚発生いたしますのでご注意ください。それと依頼の中に常設依頼というのがあり、そちらの依頼は紙を剥がさず受付で言ってもらえれば問題ないので、剥がさないよう注意してください」


 「あとは、人としてのマナー等守ってもらえれば大丈夫です。…これで説明の方が終わりになりますが、何かご質問等ございますか?」


 受付の人が、すらすらと噛まずに言っているのが素直にすごいと思いました。というのは、置いといて。


 スタート時はEランクからで、Dになると、討伐みたいなのもやる必要がある。ということは、Dからは戦わなくちゃダメってことだよね。力は強い…けど、出来れば、戦うのは嫌だなぁ。今まで平和に過ごしてきた人がいきなり戦えって言われても戦えるわけないじゃん。物に攻撃するのとは訳が違う。


 しかも、魔物ってことは、絶対に見た目が怖いのとか、気持ち悪いのとかでしょ。会った瞬間即逃げだよ。でも、ずっと雑用やらされるのは嫌だしな。Dランクにしておいて、たまに、雑用やりつつ外で採取依頼とかかな。討伐は…まぁ、考えておくとして。


 「だ、大丈夫です」


 「かしこまりました。私は、ミルフィリアといいます。もし、何かわからないことがありましたら、遠慮なく聞いてくださいね」


 ミルフィリアさんミルフィリアさん。…よし、覚えたぞ。基本的ミルフィリアさんのとこに行こう、うん。


 「…あ、そういえばお金ない」


 ……お金を持ってなく、「無料で泊まれるところないですよね…」と、ミルフィリアさんに言ってみると、ギルド職員の休憩所でなら、特別に一泊だけしても良いと言われた。ギルドは夜になると閉まってしまうが、緊急事態用に、誰かしら、その休憩所で泊まるようになっているそうだ。どうやら、今日はミルフィリアさんが当番らしく、どうせならと誘ってくれた。なんかついでにご飯も貰えた。


 休憩所は、布団が1人用しかないので、使って良いよと言われたけど、元男として、ここはちゃんと断っておいた。そしたらなぜか1つの布団に2人で寝ることになった。なぜこうなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました きくりうむ @kikuriumu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ