第3話最初の街

あれから、数時間ほど、体を動かしていた。今ではもう良い感じ仕上がっていて、たぶんだけど、日本だったら誰にも負けない自信がある。この世界だと、比較対照ないからわからん。でも、木とかワンパンですよワンパン。……パンとか食べたいなぁ。




 「うーん、それにしても、道がこっちで合ってると良いんだけど」




 今現在僕は、あの湖を後にして、深い森の中を歩いている。




 身体能力が高いから走った方が速いんだけど、別にそこまで急いでるわけでもないから、のんびりと行くつもり。




 どこにだって? そりゃもちろん。人がいるところ。




 なぜかって? そりゃもちろん。ご飯ほしい。




 人間は食べなきゃ生きていけんのです。悲しきことに。




 数日くらいは森の中でサバイバルとか、思ってたけど、ご飯ないからまず無理だ。かといって、急いで人のいるところに行こうとしても、良いこと起こらなそうだし、のんびりと行きましょう、みたいな? 




 でも、出来れば暗くなる前に着いてほしいなぁとは思ってる。夜の外出は、危険だからねー。みんなも夜は外出しちゃだめだよー。




 「…それにしても、うざったいほど木ばっか。森だから仕方ないんだけども」




 はぁ…暇だ。ひじょーにひまだ。こうも同じ景色ばっかだと飽きてくるよー。最初は「おぉ! 森だー! すごーい!」とか、喜んでる人も、今では「飽きた。つまんない。帰りたい」とか、思ってしまうって、絶対。




 なんともまぁ、どうでもいい話なんですがね。




 しかし、ここファンタジーの世界なのに、いまだに、それっぽいのを見つけられていないっていう。僕が見たのなんて、湖と木だよ。こんなの地球にたくさんあるよ。もっとファンタジーを満喫したいよ。うぅ…。




 「…ふぁんたじぃ。ふぁんたじぃはいないのぉ~」




 ……ガサッ




 「っ!? ファンタジー!?」




 まさか僕の声にファンタジーの神様が答えてくれたのかな!? さすが神様! ありがとうございます! さあ、一体どんなファンタジー生物が…!




 「キュウ」




 「…うさぎじゃん」




 現れたのは真っ白いウサギでした。




 「いや、ウサギは地球にもいるんだけど。こんなただのウサギには興味ないよ…ぉおぅ!?」




 完全な不意討ち。僕がウサギをバカにしたからか、まさかお腹にの頭突きをお見舞いされた。




 でも、全然痛くない。ふふふ。今の僕には、ウサギの頭突きなどよゆーだよ、余裕。




 「あぁ、でもこのウサギもふもふだぁ」




 もふもふ。真っ白い毛が非常に良い。こやつめ。本当の狙いは、このもふもふ攻撃だな。あぁ、良い。良いよー。




 「あぁぁぁぁ……っは!? いけない。つい堪能してしまった」




 ウサギを離すと、すぐ僕から離れ、そのままどこかへ行ってしまった。無念。




 「仕方ない。進むかな」




 軽く伸びをしたあと、歩き出す。さてさて、あとどれくらいで着くのかな? むしろ着くかな? …着かなかったらどうしよ。












 深い森の中を歩き始めてから、何時間たっただろうか。あの時は、太陽の光が眩しいくらいに輝いていたのに、今じゃ、その姿が薄れつつあった。




 つまり夕方になっているのです。はい。




 だけど、僕はもう勝利を確信していた。なぜなら、もうすぐそこに念願の町が見えてるからである。




 最初見たときは、思わず固まってしまった。なんというか、予想以上に大きくて、驚いた。




 といっても、もう時間も時間なので、復帰は早かったですはい。




 「この世界だと、ホテルとかじゃなくて、宿屋とかなのかな」


 …お金ないんだけどね。


 って、こんなとこで悩んでても仕方ない! 今の僕は見た目ちいさな女の子。しかもかわいい! 本当はやりたくないけど、媚びれば泊めてくれるかもしれない。


 「……ぉい」


 といっても、どんな感じにやればいいんだろ。元男には辛い。でも、やるしか道はないし。ああでも、男の人に言うより、女の人の方がいいよね!?


 「ぉおーぃ…!」


 でも、女の人だと同性だから僕のこの体だとむしろ相手にされなかったり…。いや、さすがにこんなちいさな女の子を放っておく人はいないでしょ。…そう信じたい。


 やっぱここは男の人に、いやでも、ロリコンだったら嫌だし、やっぱ元男としては女の人の家に……


 「おいってば!!」


 「……っっひゃい!!?」


 だれだれ!? …って、門の所にいたおじさん? え? なんでここに? てか、いつのまにここに!?


 「まったく、もうそろそろ門を閉める時間になるのに、中々こっちにこなくて、心配で見に来たんだよ。嬢ちゃんは何をやってるんだ?」


 「ご、ごめんなひゃい。あ、あの、ぼ、ぼく…じゃなくて、私、お金持ってなくて、どうしようかとっ!」


 うわぁぁぁ! 待って待って! そういえばそもそも誰かと話すのがすごい久しぶりすぎて、なに言えば良いかわかんない!? 神様!? あれは別だよ!


 「そ、そうか。見た感じなにも持ってなさそうだが、身分を証明できるものとかはあるか?」


 「え!? え、えっと、あと、私の名前は、ゆ、ユウです!」


 「そうかそうか。ユウだな。それで、身分を証明できるものはあるか?」


 「ないです!」


 「そこだけはっきり言ったな。ふむ、そうすると、こっち来てもらえるか? 町に入るのに、身分証明書が必要になるんだが、それをこっちで仮に作るから」


 「は、はい!」


 ……よっし! 第一関門突破。見たか! この僕の演技力! …ごめんなさい嘘です。とりあえず言うとおりにしようってしただけですはい。


 「おーい。ついてきてくれー」


 「は、はい! 今行きます!」


 連れてこられたのは、門の隣にある、壁の中? なのかなここは。ここに部屋とか作ってるんだね。すごい。有効活用ってやつだね!


 「さて、それじゃ、この水晶に手をのせてもらってもいいか?」


 「えっと、これはなんですか?」


 いきなり、おじさんが透明な水晶を持ってくる。きれいだねー。


 「…これは真実の水晶っていってな。触った相手が犯罪をおかしていた奴だと、赤く光るようになってる。他にも、水晶に触れている時に、質問した問いに対し嘘をつくと同じく赤く光る」


 ほぉ。嘘発見器みたいなものなんだね。


 「すごいですね!」


 「嬢ちゃんみたいなのは、しなくてもいいと思ってるんだが、しなかったら後で怒られちまうからな、俺が。だから、まぁ、面倒だと思うが、やってくれ」


 「いえいえ! 面倒だなんてそんな」


 ちゃんとした良い人じゃないか。さてさて、大丈夫だとは思うんだけど、どうなるかな。


 「……よし。大丈夫だな」


 水晶に手を置いて10秒くらい、何も変化しないのを確認したおじさん。


 「それじゃ、これが仮の身分証だ。本当の通行税が発生するんだが、嬢ちゃんはお金ないみたいだし、今回はなしにしといてやる。誰にもいうなよ?」


 そう言いながら、僕にトランプみたいな大きさの木の板をわたしてくる。


 おじさん、めっちゃ良い人だね!? それどう考えてもバレたら怒られるんじゃないかな!? ありがたいけど!


 「あ、あの、ありがとうございます! 本当に…」


 「なぁに。良いってことよ。身分証作れたら、それはここに持ってきてくれ。受けとるから。それと、もし嬢ちゃんが10才以上なら、冒険者ギルドでギルドカードが作れるから、それを作るといい。ギルドカードは身分証の代わりになるからな」


 わははっ、と笑いながら、説明してくれるおじさん。親切すぎて涙が出そうです。うぅ…。


 「本当にありがとうございます…。絶対に後でお礼しますから!」


 「おぉ、気長に待ってるぜ」


 もう、このおじさんにはお礼決定だね。よし、頑張ろう。


 「さて、それじゃあ、あれ言っとくか。こほん。ようこそ、サタイルの街へ」

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