第2話さい? きょう?

 目を覚ますといつのまにか森の中にいた。


 「…ここが神様の言ってた世界かぁ。確か人のいない場所に転生させるって言ってたけど、森の中はないでしょ…」


 …まぁ、確かに街の中にいきなり人が現れたら騒ぎになると思うけど…ってあれ? 何か僕の声おかしくない?


 「あ、あ〜…」


 やばい! 絶対おかしい! 僕ってこんなに高い声出せたっけ? ……いや、まさかね…


 「と、とりあえず鏡! 鏡どこ!?」


 …って、ここ異世界じゃん! しかも森の中! 何処に鏡なんてあるんだよ!


 「…そうだ、水! 水辺を探そう!」


 回りを見渡しながら走り回る!


 運が良かったのかすぐに大きな湖を見つけた。


 そして、湖に近づき水面に顔を近づける。そこに映っていたのは…ものすごく可愛い女の子。


 「…え? 誰これ?」


 綺麗な銀の髪を腰まで伸ばしており、小さな鼻と、小さな口。唇は薄いピンク色をしていて、目は碧眼。


 要するに、ものすごい可愛らしい女の子だ。白いワンピースを着ていて、身長は160はないだろうね。最悪150もないかもしれない。というか、本当にこれって僕? 


 試しに頬を軽く引っ張ってみると、その湖面に映っている子も同じ事をした。


 「…え? うそ…でしょ?」


 これって異世界転生だけじゃなく、まさかの性転換も含まれてましたか。そうですか。そうですか…。


 「まぁじぃぃかぁぁ…」


 なんというか…なんというか……だね。うん。


 「…はぁ…なってしまったものは仕方ない……よね」


 …………絶対次会ったら文句の1つでもいっとこ。会えるか知らないけどさ。


 「そういえば、どんなスキル貰ったんだろ」


 異世界でスキルの確認といえばやっぱステータスオープンみたいな?


 …あ、出てきた。


 名前:ユウ・シラサキ

 性別:女の子

 年齢:14

 種族:最強


 注意:最強である。怒らせてはいけない。


 ……おいまて。スキルどこいった。


 名前:ユウ・シラサキ

 性別:女の子

 年齢:14

 種族:最強


 注意:最強である。怒らせてはいけない。


 どうやら見間違いではなかったらしい。


 …いや、待って? スキルは? スキルどこいったの? おーいかみさまー。スキルどこですかー?


 反応がない。聞こえてないらしい。聞こえるのか知らないけど。


 「これどうすればいいんだろ?」


 困ったぞ。ステータス見る限り、最強という文はあるみたいなんだけど、何が最強なんだ。身体能力とかかな。


 チラッと木を見る。


 …いける…かな? むしろいってもらわないと、困るんだけどね。


 ふぅ…よし、やるぞ! やってやるぞ! やればできる子! れっつごー!


 「てりゃぁぁぁぁぁ…」


 いたくないいたくないいたくないいたくないいたくないいたくない。


 ……ズボッ。


 「ん? ……へ?」


 …貫通した。


 お、おぉぉ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! すごい! すごいよこれ! 全然いたくないし、貫通してるし、最強なのかはわからないけど、身体能力が高いってことはわかったね!


 やった! やった! やった! やっ……はっ!? …つい年甲斐もなくはしゃいでしまった。


 「でも、良い! 良いよ! きっと!」


 本当に最強なのかは置いといて、とりあえず、これで僕の身体能力が高いって事は証明された。ならば次はあれだよね。そう!


 「まほう!」


 やっぱり異世界といったら魔法! これしかない! よし、さっそく……?


 ……魔法って、どうやったら使えるんだ?


 呪文? とかいうの必要なのかな。それだったら、何一つわからないんだけど。魔法名みたいなの言えばいけたりしないかな。


 「えーと、"ファイア"」


 ……なにも起こりませんでした。


 うそ…でしょ。魔法使えないの。それとも何か間違ってる? どっちだ…。


 てか、異世界といえば魔法じゃん。魔法がない異世界なんて、オムライスに卵がなくて、ただのチキンライスになってるようなもんだよ…。


 チキンライスはチキンライスでおいしいけどさ。


 「…やっぱ呪文が必要とか? …もしくは単に名前が違うか…」


 こうなったらもう、手当たり次第やるしかない。



 数十分後。



 はい! むりー。むりでーす。魔法なんてできませーん。…はぁ。


 何がいったいだめなんだろう。それとも本当に使えないだけかな。もし、このまま魔法が使えなかったら、


 最強→×


 身体能力は最強→○


 とかいうのになってしまう。


 うぅ…でも、神様なんだし、ミスとかはしない…で……、そういえば、僕ってミスで死んだんだった。


 …考えてもわからないものはわからないし、とりあえず自分がどこまでできるのか色々と確かめるかぁ。的になる木はいっぱいあるし。


 痛くないから、殴ったり蹴ったり、でも、それだけだとつまらないから、もっとこうかっこいい感じでやったりして…ふふ…ふふふ。


 おっと、いけない。こんなとこ誰かに見られたら不信がられてしまう。まぁ、こんな森の中誰もいないだろうけど。


 ある程度、出来るようになったら、人のいるところに行きたいなぁ。さすがにここにずっといるわけにもいかないし。というかいたくないし。ご飯ないし…。


 ……。こんな体でお仕事あるかなぁ。僕無一文なんだけど……

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