第4話 カオスの床
この日、俺達は何かに取り憑かれた様に浮わついていた。もちろん俺も含まれた上で、浮わつきがクラスを全滅状態までに感染していた。
この日、とゆうよりこのクラスの床が水平を保っていたのは入学して約一ヶ月の間だけであったのかもしれない。入学当初、お互いが足を踏まないように気をつけていたクラスとゆう名の船の床板は、次第にお互いの揺れが相乗効果を生み大きく揺れ合い、きしみをたて、その音はどこかのライブハウスへと続く廊下のようで、教室のドアを開けるとこもった地鳴りの様なパンクミュージックが今にも大音量で聞こえてきそうだった。
「ぎゃぁああああああああ」
凄い悲鳴に、ライブ会場を歩く風景から目覚めた。ぐらつくクラスの一員のぐらつく封印の目の黒点は、現実がどこかにあるのか探り当てようとピントの合わない視界の360度を左右上下に動かしていた。
やっと、コンタクトの焦点が合ったときに早川、矢崎がしゃがみ込み、焦る表情を浮かべながら俺を見つめていた。
その後ろでは、校庭に置いたCDプレーヤーから大音量で音楽が鳴り響いている。
女子が投げたバスケットボールがバスケットの縁にあたった瞬間、バスケット部分が折れて校庭に落下したのが目に入る。
「だっはっ」
封印は口を半開きに、変な声を出して起き上がった。
「あっぶねぇなあ、お前死んでるかと思ったじゃん!!」
そう言う早川達も、封印の視界の先の校庭を振りかえって、女子たちの前に落ちているバスケットに一瞬、クスッとした。
「おいおいやべぇよ、バスケ部に怒られるって」
矢崎の後ろからそぞってに校庭に歩きだすと、冷たい空気が一斉に晒された顔と首元をさしてくる。マスクでもかぶって歩きたいぐらいだ。暑さにうんざりしていたあの頃が、今になっては恋しい。
女子の一人、同じくぐらつく女子八代がこの寒さに負けない心の熱量により、サビに到達したメロディに合わせて踊りだした。
「ひゃっほーーー」
手を降り踊りだす出すいかれた女子たちの展間に、ガタイのいいぐらつく矢崎も走ってすぐさまに踊りだした。
封印は円盤のバスケットを拾い
「埋めるか」と言って眺めていると
横からゲーム狂のぐらつく早川が、すかさず俺の両手からバスケットを奪いあげ、天高く投げ上げた。12月の弱々しい光を放す太陽がバスケットの中へとゴールイン。再び落下したバスケットの前で、近頃好きな人が出来て、喜びと悲しみの境をぐらつく駒地が、何故か両手を腰に当て片足を浮かせたアルプスの麓の踊り子のようなポーズで立っていた。
12月の校庭。
俺も皆も授業中の凍てつく寒さの校庭で、何故こんな事をやってるのか全く気にならなかった。とゆうより、こんな事を気にしたら負けだとゆう気はすこしあった。封印はよく分からない事の切れ端をジグソーパズルのピースと中学を卒業した頃から自分の中で比喩している。この毎日の生活の中では、ジグソーパズルのピースが、あちこちにバラバラと転がっていてるだけだけれど、誰も俺もパズルの完成など目指しては居ない。だけど時間がたつと、卒業式の後から一年ぐらい立つと。小学校の頃の純粋から、少しかげりが出始めた中学校の卒業アルバムの皆の顔をみると。記憶の中のピース達がすべて繋がないまま、重なり合い何か得体のしれない不格好の完成品として今の自分を作る一部になっている。と、高1の夏だらだらと過ごす中で、アイスを食べながら封印は机の中から中学生時代のアルバムを取り出し、悟った。アルバムにぽたりと落ちたアイスがシミになるのを見つめながら思った。不格好のその作品が脳に写してくれるストーリーはいつも、美しきストーリーを成し得てはいなかったけれど、封印は映画も漫画も音楽も不格好なものが好きだった。きっといつかすべてのピースが繋がり完成したパズルを眺め懐かしむことが来るだろうか。でもどうせなら、この不格好の形のままその完成を延ばし続けたい。中学校の頃よりも、もっともっと揺れたいのだ。かげりから巨大なブラックホールを作ろうとゆう壮大なロマンが目の前をちらつくのだ。綺麗な形を作ればきっと終わりが来る気がしてならない。中学校は卒業したから終わったんじゃなくて高校に上がらなければいけない16歳とゆう日々の始まりの前兆だったから終わったんだ。高校ではもっと、もっと不格好の形を積み上げて複雑で、永遠に終わりのピースが来ないパズルを作ろう。封印は長々と厨二病患者のように悶々とアイスを食べ、宿題から逃げ続けながらそう夏休みに誓ったのだった。
校庭に深い穴を掘りながら、皆の白い無数の息が空中でたまに光っては消えた。
「よし!」
バスケットを埋め終わり、一人が校庭に倒れ込むと小さいなだれが起きた。
「てかさー、封印いつ来たの笑」
ぐらつくマキコが封印の顔を覗き込む。
「朝早く学校に着いたんだけど、プレハブで寝てたらこんな時間になってた」
全く声が聞こえなかったのだろう。少し、間があき
「えっえっえっなに」
他のみんなが、円になる様に集まりだし、頭だけを小さい円の中心に居合わせ、見合わせた。
封印は続けた。
「お前ら今日の朝、ラジオでジャックがあったの聞いてた?」
「何それ、あの、豆の木の話?封印、そのおとぎ話していいの6歳までだよ。」ファンタジービーム!と叫びながら八代が襟にかかる学生リボンで光線を飛ばしてきた。
うおお!とか言いながら駒地がビームにかかったようだ。しかも、ジャージの袖で未だに鼻を抑えていた。
「ちげぇよ!ばか!今の、ちげぇよばか!っての下町のてやんでい!ばっきゃろう!ぽかったな。今日の朝、五時半頃ラジオの電波が急にジャックされて同級生っぽい女の声とその後にさ。」
「てやんでぃかどうかは」
学業問題と思春期のメンタルバランスにぐらつく倉田がメガネを指で持ち上げる。
「問題ではないよ。」
長いためだったな。
「その後になんだよー」
早川が今日積もるんじねゃ?とか言いながら降ってくる雪をキャッチしては食べてる。
「うん、今日の朝だよ。ラジオでいきなり電波ジャックがあったんだよ。俺、今日携帯忘れちゃって何がなんだかわかんないんだけどさっ、とにかく同級生の女がジャックしたんだと思う。」
「はぁあ?同級生ってさ。なんで同級生ってわかるんだよ」
封印は続けた。
「アームiだ。あのゲームのボイスってあのゲーム作った高校生の声なんだろ?」
いつ、自分がそのことに気づいたのかも全く理解していなかったが、いつの間にかそう思っていたのだ。冬の魔法か、アームI特集の雑誌をみたせいだと思う。
「てかさ!!!!」
ガタイの良い矢崎がいきなり大きな声をだしので隣のメガネ女子倉田の表情が、げんなりした。
「昨日の夜、アームiやってたらバクが大量発生してエラーでてさ。その後ゲームがいくらやっても強制終了してな。それからついに、ログイン出来なくなったぜ!!!」
早川も同意を訴えて熱のこもった声でなにか賛同している。
封印は昨日の夜、ゲームをして以降携帯に触れていなかったので少し、間抜けな顔をしてみて皆に、学生カバンからあの日拾った例の手紙を広げて見せた。
「煙が出た日に登ってその煙を見た。僕は明日に、学校をやめようかな。」
封印はこの手紙を皆に見せたらすぐに、これはいたずらじゃないからこの手紙の主を探そうと説得する気だった。だけどその心配をよそに皆真剣な眼差しで手紙を囲み見つめている。
「つまりさ!この、明日やめようかな。ってことはもう学校辞めたのかな!?この子!」
八代が、一番に声をあげた。その八代の問1にメガネ女子倉田が答える。
「封印君がこの手紙を拾ったのが、昨日の朝。昨日の日没が…」
何やら、気象情報を携帯画面から確認している。
「夕方の4時半ね。ラジオからの追加メッセージが、夕日4時の位置。夕日が午後4時の位置に日没を迎えた日に学校を辞めるとゆう意味なのかも。。」
「冬になれば日没時間がぐっと縮まる。もう12月に入っているのだから、その子が学校を辞めるまで時間はあまり無いかもね。」
倉田が付け加えた。
「てかさ、そのラジオってこの地域の番組じゃねっ」早川がラジオの番組表を調べあげる。
「なっ、なんかさ。ラジオでメッセージ届くとかめっちゃ怖いんだけど」マキコがそう言った瞬間
校庭中にチャイムが鳴り響く。
封印たちは怖い話をしている修学旅行の部屋の中の電話が鳴った時ほどに驚いて叫びあげる。
「まずいまずい!もうばか!着替える時間ないじゃん!怒られるって!」
マキコに続き、皆が一斉に立ち上がる。
「とにかくさ!明日!明日日曜日だろ。明日の朝十時に時計台の下に集合!!」早川が、ジャージの袖を振り回しながら、叫ぶ。
「おけオッケオケイオケイはい、解散!」
マキコと倉田と八代が全速力で更衣室にかけて行く。
「お前、絶対先生に怒られるな。」
ガタイのいい矢崎が封印にかけたその言葉がリレーのピストルのスタートの引き金のように、一斉に教室に向かって駆け出した。
青少年、オタクに騙される。 青 @tarbondes
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