第6話 独りよがりな光明


 それからはネット小説投稿サイトを巡回する日々が始まった。暇にあかせて食事と睡眠以外は各サイトのランキングをチェックし、新作と人気作を読み漁る。


 そうして1ヶ月がたつ頃には、今まであまり気にしていなかったものが見えてきた。

「書籍で読む」、「VRグラスで読む」、「IDフォンで読む」、これらは同じものを読んでいても、読書体験ユーザーエクスペリエンスが似て非なるものなのだ。

 じっくり腰を据えて読むなら「書籍」だろうし、隙間時間の暇つぶしなら「IDフォン」なのだ。


 そして、現在ではIDフォンでの読書率が圧倒的に高い。ちょっとした時間で読めて、毎日更新など更新頻度の高い作品が圧倒的に強い。ストーリーはありきたりのものが多いが、序盤の掴みと面白さでひっぱり、読者はある程度進み面白さが薄れたら新しい作品に移ってしまうのがほとんどだ。


 VRグラスでは最早、アニメーションソフトを使った会話アニメに仕立ててしまうのが主流になっている。アニメにすると爆発的に閲覧者が増える。VRグラスで読むのは作者が多いのではないだろうか。



 自分の中で攻略法というか一つの答えが出たので、少し浮かれた気持ちのまま先日の高齢作家さんにメールをしてみた。

 答え合わせがしたかったのかもしれない。


『少し、話をしようか』


 そんな短い文章のメールが届いた翌日に会うことになった。


 人と直接話をするのは随分久しぶりな気がした。

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働かないと負けかなと思っている nov @9raso

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