1章 第3話

僕はヒナガと言う少女の話を聞き終わり先程の事について考える。謎の黒く光る雪にそれを浴びると苦しみそして倒れる。聞いた限り死んだように息をしていない状況のようだ。それから気になるのが、倒れた人が目を覚ますと突如とつじょ人が変わったように人を襲い出す、極め付きは襲われた者まで人を襲うようになると言う。成る程、確かにゾンビと言っても過言かごんではないな。


「まあ、あんな状況で僕みたいな格好をした人がいればゾンビだと間違われ襲われるのは仕方がないな、···そう言うと思うか?」


「本っ当にごめんなさい!」


何度もペコペコと頭を下げて謝るヒナガ、さすがに反省しているみたいだし怒る気にも慣れない。まあ、こうして自分は無事にすんだし気にしていないから謝らなくても良いと伝えるがヒナガは「でも!」とまだ気にしている様子だった。


「もう良いって、それよりも君の話を聞いて気になる事があるんだけど聞いて良いか」


「気になる事ですか、何でしょう」


それはヒナガだけが生き残った理由について、何故ゾンビ達がヒナガだけ襲わなかったのか、他の人達だけ襲いそれが終わったら立ち去って行く。それは一体何故?まるで何者かの意思で動かされているような、そんな風に思えてくる。それにヒナガを生かす理由は何なんだ。


「それについては私も分からないです。でも悔しいです、結局私は何も出来ずただ皆が襲われて行くのを見ている事しか出来なくて、···ぐす···私は!」


この子は辛かったんだろう、いくら剣道を習っていても所詮は人間だあんな数相手に太刀打ち出来るとも限らないしゾンビになった奴等は異常な程の力を持っているみたいだ、それに歳も僕と同じでまだ子供だ、そんな子供がとんでもない光景を目の辺りにしてしまって限界に来たんだろう。僕はヒナガを抱き締める。泣きたきゃ泣けば良い、そう言ってヒナガを慰める。

ヒナガは泣いた、これでもと言うぐらいに名一杯泣いた。


「ひっく、···ありがとうございます、···今日は沢山泣きました」


「どういたしまして、もう良いのか、泣きたければもっと泣いても良いんだぞ」


「いえ、流石にもう大丈夫です···それでですね、その」


先程のから何か言いたそうにしているヒナガだが何かあるのだろう。それが一体何なのか聞いてみる。


「えっと、まだ名前を聞いていないと思いまして、よろしければ名前を教えてくれるとありがたいのですが」


成る程そう言う事か、ヒナガだけ名乗っていて自分が名を名乗っていないのは失礼だな。しかし残念な事に僕は自分が何者なのか知らないので名前を名乗る事が出来ない。それをヒナガに伝えると驚いてもしかすると記憶喪失かも知れないと言う。記憶喪失か、そうなるんだろうな。


「僕は自分が人間なのか怪しく思ってしまう」


「何を言っているんですか!あなたは人間ですよきっと。あ、またしても自分がやった事について罪悪感が」


「気持ちを切り替えろ、例えばほら、今日はお腹空いているだろ?何か食べ物はないか、とか」


「確かにお腹は空いていますね、そういえば午後の6時ですか。いつの間にか時間が経っていたんですね」


ヒナガは教室の時計を見たあと教室から出ようとする。どこに行くつもりだろう?僕は気になって訪ねる。


「食堂室に行って何か食べるものがあるか見てきます。もしあればそれを作って持ってきます」


いやいや、それは構わないけど、1人で行くのは危険だ。もしかしたら、ゾンビがいるかも知れないし、会ったらどうするつもりなんだ。


「私が一通り見回っていたので問題ないと思いますが、···そうですね、良かったら護衛としてついて来てくれますか」


僕を囮に使うつもりか?まあ、女の子1人守れる保証はないがついて行くしかないな。もし、死なれては自分が困る。


「ありがとうございます、食堂室に行きましょう」


こうして何事もなく無事に食堂室にきたわけだがこうして何もいないのはそれで不気味に思える。何故ゾンビたちはここから去ったんだ?いや、誰かが操って移動させたといった方が良いか。だが、こちらとしては大助かりだ。自分はゾンビに会ってはいないがその方が良い。今の自分は丸腰だし戦えるかも怪しい。···金属バットを握り潰した事についてはおいとくとしよう。あの程度で大勢のゾンビに襲われたら人溜まりもない。


「見てください、まだ食材が残っています。これで何かを作ってみます」


「そう言えばヒナガは料理が出来るのか?」


「はい、私は一人暮らしをしていて、だから料理は毎日私が作っています。これでも味には自信があるんですよ」


ヒナガが自慢げに胸を張っている。そこまで料理が自信におありのようなので自分はヒナガがこれから料理を作るのを見てみる事ににした。お、早速何かを取り出したぞ、玉ねぎ、人参、ブロッコリー、もも肉、をキッチンに並べて、まずは玉ねぎと人参の皮を剥いてそのあとはカットしていく。それも手際の良い早さで切っていく。ブロッコリーと肉もカットし終わり。鍋に火をつける。


~スキップ~


「出来ました!」


待つこと30分ついに料理が出来上がったみたいだ。この匂いはもしかしてシチューなのか、見た感じは旨そうだがさて、お味の方はどうかな。


「今、おわんに注ぎますね、はい、どうぞ召し上がってください。あと、熱いので火傷に注意してくださいね」


「ああ、では早速頂きます」


僕はおわんに入ったシチューをスプーンですくい熱を冷ましてから口に入れる。すると野菜や肉の甘みが口全体に広がっていく。旨い!僕はこのシチューに夢中になって平らげていく。


「お代わり!」


「ふふ、どうやら気に入って貰えた見たいです。お代わりですね、すぐにシチューを注ぎますね」


こうしてあっという間にシチューがなくなった。何だかほとんど僕が頂いてばかりでヒナガはほとんど食べていなかった。何だか申し訳無いことをした気分だった。


「別に構わないですよ、私、こう見えて少食ですから」


「そうなのか、だがこれからの事を考えると少しでも食べておかないと体力が持たないぞ」


「心配してくれるんですか?」


そりゃもちろん、心配するに決まっている。ヒナガは僕にとって大切な存在だからな。······あれ?どうしたんだ僕は、急に何故ヒナガは大切な存在何て思ったんだ。


「······」


「あの、どうかなされました?」


「なあ、僕とヒナガって何処かで会ったりしたかな」


「え?何を言っているんですか。あなたと会うのは今日が初めてですよ」


やっぱりそうだよな。なら、この気持ちは何なんだ。


「急にそんな事を言ってどうしたんですか」


「いや、何でもないよ。気にしないでくれ」


自分は気になるモヤモヤ感が残るが気持ちを切り替える事にする。さて、お腹も膨れた事だし明日の事について話そう。ヒナガにどうするか聞いてみる。

まずは、武器になる物、その後は生存者探し、食料探し、安全な場所を確保するなどやることがたくさんある。


武器は金属バットなどがあれば良いだろう。それでゾンビを倒せるか分からないが。ただ、戦うにしても2人で一体を倒す事が優先だ。ヒナガの話では頭部に狙ったにも関わらず立ち上がったという事だ。倒れた隙に逃げれば良い話だが念のため確実に仕留める事にする。2体が来た場合はすぐさま逃げるに限る。だが、ゾンビの走るスピードは早いので追い付かれてしまうかも知れない。その時は地形や障害物などを利用して対抗するしかない。それでもダメな場合意地でも倒すしかない。何もしないで死んでいくより何かをして死んでいく方がまだましだ。


生存者探しは必要だもしかしたら僕達の助けになってくれるかも知れない。ただその人が僕達を裏切る可能性がある。そこは見極みきわめて行くしかない。もし、僕達を襲った場合は自分がその人を殺すのも躊躇ためらわずにするのも考えている。それを聞いたヒナガは悲しそうな顔をしていたが、そこは割りきるしかない。今、外はゾンビに支配されているかも知れないから。誰だって自分の命が大事な筈だ。


食料探しは生きる為にも必要だが何より危険が付きまとう。何たってゾンビがいる場所で食料を運ぶ際に遭遇したら逃げるのが大変になる。場合によったら戦うはめになるが荷物がある状態では逃げるのも無理だし戦うのも無理だった。そう言う時は荷物をおいていくしかない。


安全な場所も勿論そうだ。それがなければ寝泊まりが出来なくなってしまう。まさか、外で寝る何て事は絶対にしない。当たり前だゾンビがいる場所で寝るなんてバカな事を考える人なんているわけない。もしそんな人がいればよっぽどの自信がある持ち主かただ単に精神がおかしい人かそれだ。まさか、本当ににそんな人がいるなんてまだ知るよしもない。


「あの、すみません」


「どうしたんだ、ヒナガ」


「実はもう1つ言う事があります。多分これが一番の問題だと思います」


もう1つ?これが一番の問題って一体何だろうと思い聞いている。


「黒い雪です。多分今も止むこと無く降っていると思います。あれのせいで倒れた人達がゾンビになってしまったので」


「そうか、そこが問題なのか。ヒナガはあれだけ浴びても無事だったんだよな」


「はい、でも単に人によって変わるだけかも知れないですけど」


もしそうなると、ヒナガもあの状況で浴び続けると最終的に倒れてゾンビになる可能性もあるのか。自分も多分同じ状況になると他の人達と同じ結末になるかも知れないと。


「これは参ったな、これじゃあ外に出る事なく餓死がしして死んでいくのか」


「私、そんなのは絶対に嫌です。どうすれば良いのでしょうか」


{お困りのようね、だったら今から私が教えて上げる}


何だ?何か聞こえたぞと周りを見渡す。ヒナガも同じで周りを見渡している。しかし、誰もいない。だが、その声はヒナガの声にそっくりだった。もしかしてヒナガが言ったのか?と聞いてみるがヒナガは首を右左と横に振る。なら一体誰が。


{もう、今から見せるからおとなしく待ってなさいよ}


やっぱりヒナガの声にそっくりだった。だがヒナガが喋っていない事は確かだ。僕は一体誰だと声を上げる。


{見て驚かないでね}


そう言うとヒナガの後ろから少女が現れる。それを見た瞬間目を見開き思わず声を上げる。


「な!?嘘だろ、ヒナガがもう1人!」


「え?何々!」


ヒナガは後ろを振り向き少女を見る。するとどうだろうかなんと私と同じ顔や髪型をしていてそんな少女は私を見ていた。


「私なの?」


「あら、あなたは驚かないのね。驚かせないつもりと思いきや驚かすつもりだったのに、残念」


「十分に驚いているよ私」


そう、と少女は言い自分が何者か名乗る事にした。


「私はそうねアスガとでも名乗ってちょうだい。私はヒナガのもう一人の自分でもあり姉妹でもある。つまりヒナガの妹になるね」


ちょっと待て、ヒナガに妹がいる何て聞いてもいないぞ。それにもう一人の自分って何を言っているんだ。


「ちゃんと1から説明するよ。まずヒナガはあのブラック・スノウを浴びた」


ブラック・スノウ?あの黒い雪の事を言っているのか。話を聞く限りこうだ。あのブラック・スノウは神様によってもたらされた現象であの雪は魔力で出来ていた。そして何も耐性を持っていない者が浴びると体に魔力が侵入して魂をむしばんで命を奪い差ってしまうみたいだ。そして代わりとしてその黒い魔力が魂となりその活動源かつどうげんになって動かされているみたいだ。そういった者は人間としてではなく異形アンデットとして人を襲うようになる。


一方浴びたにも関わらず無事だった者は少なからずブラック・スノウをしのぐ耐性を持っていた。だが、襲われた場合はどうだろう。あの魔力はいわゆるウイルスだ。しかし、効力は普通と言って良いだろう。耐性を持つ者ならしのぐ事が出来る。だが異形となれば話は別だった。異形となったもの達のウイルスは一段と強力であり、もし傷をつけられると耐性より強いウイルスが侵入して耐性をかきけしてしまう。そうなれば同じ魂を魔力がむしばんで最終的に異形となる。


「じゃあ、もし一撃でも傷をつけられると終わりと言うことになるのか。無理がありすぎるだろう」


「私達は生き延びて行けるのでしょうか」


「まだ、話は終わっていないよ。大丈夫、私はあなたでもあるからよく知っている。ヒナガは誰よりも強力なウイルスをしのぐ耐性を持っている」


どうやらまだまだ話す事があるみたいだ。勿論こちらも聞きたい事もあるし、知っておきたい事もある。だから聞こうじゃないか。なぜこんな事が起きたのか。神様とやらはなぜブラック・スノウを降らせて人々を異形にさせたのか。アスガは一体何者か、僕が誰なのかも知っておきたい。


そしてこれから先に起きる出来事を。

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デット・テンペスト~ブラック・スノウ オール @39016239

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