1章 第3話

私は目の前のミイラ男を睨み付けながら鎌を構える。この男が何者かは知らないが異形とは違う雰囲気を放っている。見た目は私とアスガより子供に見えるが油断はならない。すると、ミイラ男が声をかけてきた。


「聞きたい事があるけどお前がヒナガで後ろに寝込んでるのがアスガで良いんだよな?」


「どうやら私達の名前を知っているみたいだけど敵のあなたに言う必要は無いわ」


「まあ、なんとなくその喋り方はお前がヒナガで良いみたいだ」


ミイラ男は納得したように呟くが私はアスガと一緒にいるために人形にするのだ。わざわざお喋りしている暇などない。さっさとミイラ男を殺さなければ。しかし、何故だろう?初めて見る奴なのに心の中で懐かしく感じるのはどういう事?私はミイラ男に会った事ある?いや、この16年私はこんな奴と会った事などない。なら一体。······まあ良い、どうせ殺す相手だし考えてもしょうがない。空を飛んでいるミイラ男に私は影の翼を背中に生やし、そして一気に近づき鎌で攻撃する。


「おっと、危ない」


そう言いながらミイラ男は私の攻撃を避け後ろまで下がる。随分と余裕そうにしているのを見て私は腹が立つ。なら、これならどう、とミイラ男に近づかずに鎌を離れたところで振るう。すると、振るったところから影の真空刃がミイラ男に目掛けて近く。ただ、1回程度では避けられる。だから、何度も影の真空刃を飛ばす。流石にこれだけやれば当たる筈。なのに、ミイラ男は私が放った真空刃を全て防いだ。あのミイラ男はいつの間にか5角形の形をした盾を出していた。

成る程、相手はあれで防いだのか。しかし、後ろががら空きだ。だったら、そこを狙えば良いだけの事。別に私の異能は影だけじゃない。もう1つテレポートがある。私は再び影の真空刃を飛ばし次はミイラ男の後ろにテレポートさせる。だが直ぐには出現させない。相手は自分の攻撃が消えたことに疑問を思うが私のやっていることには気づいてない。このテレポートをさせた物は何時でも保管できる。そして、何時でも出現させる事ができる。だから今、私がだした影の真空刃は保管状態になっている。私はそのまま影の真空刃を幾つも飛ばし何回かの攻撃はテレポートさせて。残りは真っ直ぐにミイラ男の盾に当たる。今だ!私は保管状態の影の真空刃を相手の後ろに出現させる。そして、その無数の刃がミイラ男の背中に当たる。やった、私は勝利を確認する。ミイラ男がふらつき翼と持っている盾が包帯に戻るり地面に落ちる。あの翼と盾は包帯を異能の力で作っていたのか。少しはやるけど所詮攻撃を防ぐだけ、私の相手ではなかったみたいだ。これで、邪魔者はいなくなったし私はアスガに振り向き近く。


「待たせたわね、さあ、さっきの続きをしましょう」


気づくべきだった。私はその時には包帯で体全体に巻かれていた。私は体制を崩して地面に倒れる。何がどうなっているの?どうして私は地面に倒れ伏せているの?何故、あのミイラ男は平然と立っているのよ!どうしてなの。


「僕が攻撃しない利用は君を傷つけたく無かったからだ。そして何故、後ろから攻撃されたのに平気でいるかは盾と一緒さ。背中には包帯で鎧の一部を作り出しておいたからだ。君と会うのは初めてかも知れないけど、君の事は他の所では沢山見たから大抵の事なら分かるからな」


このミイラ男が何を言っているかわからない。他の所で私を沢山見た?一体何処で何を見たって言うんだ。とにかくこの包帯から抜け出すにはテレポートするしかない。しかし、何度やってもテレポートが出来ない。一体どうなっているの。


「済まないけど僕の異能の1つで君の力を封じたよ。これを一回使うと次は1週間経たなきゃ使えなくなる力だけどね。君は今、3日まで異能は使えなくなっている」


「ふざけた力ね!もしかしてあんた、まだ他にも異能の力があるって言うの?」


「まあ、ほとんどの力は呪いで封じられているけどね。でも、代わりにこの呪いが僕の異能の力って事になるかな。まあ今の僕は異能以外にもう1つ魔法錬成に近い力を持っている。包帯で作った翼や盾などは魔法錬成によるものだ」


呪い、まさかあの巻かれている包帯が呪いなのか。それに異能と魔法錬成が使えると言う。それだけ十分に育成になる力があるってことになる。こいつは一体何者なの?


 ◈◈◈◈◈


「まあ、これでゆっくりと話ができる。取り敢えずアスガ、もう異能の力が解けているから立てるぞ」


「······あなたは誰ですか?どうして私達の名前を知っているの」


「それを今から話をするんだ。だが、お前の今の格好じゃ話が出来にくい」


僕はアスガの破れた胸辺りの服を包帯で隠す。アスガは顔を真っ赤にしてありがとうと言う。さてと、話をする前にヒナガに巻き付いている包帯をほどくとするか。逃げなきゃ良いけど。まあ、今は力が使えないから大丈夫だとは思うが。


「ヒナガお姉ちゃん!大丈夫?」


「······アスガ、言ったでしょう。私はあなたの敵なの、だからお姉ちゃんと呼ぶのは止めなさい」


「私はそれでもやっぱり、ヒナガお姉ちゃんって呼ぶよ。あの時はヒナガって言っちゃったけど」


「2人がどうして敵対していたのかは分からないけど今度は仲直りしろよ。もしお前ら2人が死んでしまったら僕が困る」


ヒナガとアスガはそれを聞いてこちらに振り向く。それはどう言う意味かと2人同時に言う。僕は苦笑いをしながら今までの事を話す。自分がこの地球の人ではない事、自分のいた地球でヒナガとアスガと会って敵対しているうちに愛するようになった事、神が別の地球のヒナガとアスガが危険に迫っているもし死んでしまうと自分の地球にいる2人は死んでしまうと言われて第2の地球に飛ばされた事、その時に呪いというおまけ付きと記憶喪失の状態でね。そのせいで散々しんどい思いをしたけど。まあ、何とか2人を最後まで守り抜いて記憶を取り戻したがまたしても別の地球のヒナガとアスガの危機が迫っていると聞いてこうして第3の地球に来てお前ら2人を探してたと言うことだ。


「おおざっぱだけどこんな感じだ。理解したか」


「まあ、大体は分かったわ。成る程ねあなたは別の世界線の人になるのね。じゃあ、このコアの破片も知っている事になるかしら」


ヒナガはポケットからブルー・メテオのコアの破片を取り出す。しかし今は赤く光っていて心臓のようにゾックンと脈を打っている。これは自分も知っている。自分のいた地球で自らブルー・メテオのコアの破片を手に入れて心臓に突き刺して人から異形化させたからな。


「それは一体どこで手に入れたんだ?」


「······」


「ヒナガお姉ちゃんが言わないなら私が言うよ。それは何でも神様からの贈り物だってヒナガお姉ちゃんが言っていた」


神様からの贈り物······ならヒナガはこの地球の神に会った事があるのか。もしかして居場所も直ぐに分かるかも知れない。


「ならヒナガ、その神様の所まで案内できるか」


「その必要はないよ」


「!」


僕は声のした方へ振り向く。するとそこには1人の5才の少女が立っていた。


「え?女の子しかも子供」


アスガは子供がいた事に驚くがヒナガは怯えている。成る程そうか、こいつが神様になるのか。まさか、神様自信が来てくれるとは好都合だ。僕は直ぐに包帯で銃と弾の形にして魔法錬成で本物の銃と弾に変わる。それを神目掛けて6発撃ち込むついでに異能の力で威力を増加にさせておく。

子供の神は迫り来る弾を避けずにそのまま食らい倒れる。僕は余りにも簡単に倒せた事に唖然とする。もう終わり?おいおい、相手は神だぞ幾らなんでもあっけなさ過ぎるぞ。


「バカ!何をやっているの、神様に何て事してくれるのよ!」


ヒナガが叫んでいるが僕は倒れている子供の神を見つめる。すると神はスッと霧のように消える。消えた?倒したのか。と思っていると。「ちょっと!ヒナガお姉ちゃんを返してよ!」と声がして振り向くと倒したと思われた子供の神がヒナガを宙に浮かして。ここから去ろうとしている。宙に浮いているヒナガはどうやら気を失っているようだった。僕はとっさに包帯で翼を魔法錬成して空を飛んでヒナガを取り戻す為に近づこうとするが見えない何かに当たり体が吹き飛びアスガの近くの地面に激突する。


「きゃあ!大丈夫ですか!」


背中に鎧を張ったけど凄まじい威力だな。体があちこちにダメージが来ている。やはり神の力は絶大だ。わざわざ、殺さない程度の力で放っていたが。


「ごめんね、ヒナガは連れて行くから。また会いましょう」


そう言って神は宙に浮きヒナガと共に立ち去った。アスガは「返してよ!」と叫んでいるがもう遠くまで行ってしまっただろう。僕は一瞬そのまま追いかけようと考えたけど神のたった1度の攻撃を食らっただけなのに体が思うように動かない。

第2の地球にいた神とは戦ったが結局生き残れたのは神が本気じゃ無かった事と仲間がいた事、それにヒナガの親友の正体が神だった事。まあ親友だからと言って神がヒナガを殺さないとかはなく本気にヒナガを始末させようとしていたけど。それでも2人で過ごした色んな思い出や誓った約束が会ったのだろう。ヒナガは必死に神と戦っていた。

結果、僕達は神を倒すことなく収めた。だからと言って異形達はいなくならない。神の力でどうにか出来る筈だと言えばそうでも無いらしい。神にも神なりに法則があってそれを破ると奴に葬られるとか言っていたが。奴とは一体何なのかは分からないけど。せめて、ヒナガとアスガを守ってあげてくれないかと頼んだところ問題ないと言ってくれた。こうしてヒナガとアスガを無事にすんだけどこの地球の神は一体どうなんだろう、ヒナガを殺さずに協力をさせているようだが。だが今は、今も泣いているアスガをどうにかするか、だいぶ体の痛みが収まってきたしな。僕は立ち上がりアスガの頭を撫でる。


「済まないけど今は泣いている場合じゃない。ヒナガを助けたいけど今の僕達だけでは無理だ。まず仲間が必要だ」


「その間にもヒナガお姉ちゃんが大変な目にあってるかも知れないんですよ!」


「お前は自分の姉を信じていないのか?」


アスガは下にうつむき私はと呟いている。まあ、相手はあの神様だからなもしかすると何かされている場合もある。だが、居場所が分からないし行けたとしても返り討ちに会うだけだ。だから、出来る限りの戦力を整えなければいけない。そう考えていると、アスガが立ち上がり涙を拭きながら、分かったと言う。


「私はヒナガお姉ちゃんを信じる。絶対に無事って」


「そうか、なら、これからの事なんだが」


「仲間でしょ、でも私は、まだ君の事を完全に信用した訳じゃないし、仲間を増やすにしたって、信頼できる人じゃなきゃ私はいや」


それはそうだ、会っていきなり自分は別の地球から来ました、あなたを助けに来ました、とか言われて信じるなんて無理な話だ。だが、そこは、意地でも信じてもらいたい。仲間にしたって会って見ないと分からない。


「でも」


「ん?」


「うじうじしたって何も変わらない、だからまず、君を少しずつ信じてそして、その時は私の仲間にしてあげる」


まずは、様子を見ながらって感じか、それで構わない。僕は手をアスガに近づけさせる。握手だ。それを見たアスガも手を近づけて僕の手を握る。


「これからよろしくアスガ」


「こちらこそ···えっと、名前まだ聞いてないや」


「リンガ、僕の名前だ。これは、僕の地球のアスガともう1つの地球でアスガに記憶がない時につけて貰った名前だ」


「そうなんだ、リンガ、よろしくね。でも、いけないよ」


自分は何がいけないのかサッパリ分からず首を傾げる。


「これから私の事はアスガお姉ちゃんと呼びなさい」


「は?」


いきなりそんな事を言うアスガ、この人は一体何を言っているのだろうか?僕がそう思っている間にもアスガは続けて言う。


「だって、どう見たって君は13歳にしか見えないじゃない。それに、私は16歳ね、だから、私が年上。分かったら、アスガお姉ちゃんって言って、ア、ス、ガ、お姉ちゃんと、ほら!」


思わず苦笑いする。これでも自分はあんたより年上何だとは言えなかった。僕は、早く呼べって!雰囲気を出しているアスガを見て自分は仕方なく呼ぶことにした。


「アスガ···お姉ちゃん」


「···もう一度」


「アスガお姉ちゃん」


「もう一度」


「えっと、アスガお姉ちゃん」


この人は僕に何回言わせるつもりだ。


「ああ、私がお姉ちゃん!こんな風に呼ばれて嬉しい事初めてだわ」


そんなにお姉ちゃんって呼ばれて欲しかったのか。こっちは恥ずかしいんだが、まさか、これからも言わなければ行けないのか。


「はあ」


自分はため息を吐く。この先、やっていけるのだろうか心配になってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デット・テンペスト~レッド・ムーン オール @39016239

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ