旧校舎に秘められた真実

第3話 突然の人物

昨日の天候を疑うほどの快晴が広がっていた。9月中旬だと言うのに、残暑が厳しい。教室の開け放った窓。そこから風と共に流れてくるサッカー部の声。何気なく視線を移すと、蓮也が仲間からボールをもらい、シュートを決めていた。幼い頃から蓮也の試合には自然と惹きつけられるものがある。気づいたら見入っている、そんなものが。だから入学したての蓮也がレギュラーに選ばれた時、納得した。あの時は冷静に一言祝っただけだが、内心は歓喜に満ちていた。部員は面白くなさそうな顔をしていたらしいが、次第にれんの実力が認められ、今や部長に推薦されている程上手い。練習を見届けて本を開いた時、馴れ馴れしい声が聞こえた。声の主は緩く来こなされたカーディガンを羽織り、スマホを片手に持っている。

「紫乃花ちゃんおはよう！何？蓮也見てたの？」

誰だっけこの人。同じクラスなのはわかるが、名前を知らない。

「…誰」

「酷い…俺は知ってるのに」

「私は知らない。でも、大丈夫。見たことはあるから」

「俺の扱いひどすぎじゃね！？」

名前を知らない人にいきなり話しかけられた私の気持ちを少しは察してほしい。しかし、それを言ったところで何も変わるとは思えないので黙っていておくのが最善だろう。

「ほら、俺だよ、俺！」

新手のオレオレ詐欺だろうか…などと思いながら耳を傾ける。冷ややかな視線をおくっていると、気を取り直したかのように、男子は言葉を発した。

「蓮也の友達だって！夕神 翔（ゆうがみかける）」

「ああ、夕神くんね。蓮也がよく話していたような」

「そうそう！君の愛しの蓮也君、がね！」

「その言い方やめて」

一喝して本をしまう。

「紫乃花ちゃんはさ、蓮也の事どう思うの？」

目の前の席に座り、顔を覗きこんでくる夕神君と反射的に距離を取る。どう思うか、と聞かれても私達は幼馴染。それ以下でも、それ以上でもない。

「ただの幼馴染。…それだけ」

「ふーん…成る程ねぇ」

探るような笑み。何がいいたいのだろうか。

「幼馴染…か。そう言った割には複雑な表情しているけどねー」

それだけ言い残して、夕神君は颯爽と離れていく。にしても、複雑な表情とはどういう事だろう。想像できない。

音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンをはめる。それでもなお、湧き上がる雑念が完全に消える事はなかった。

＊＊＊＊＊＊＊

「翔。今日一日中紫乃花に付き纏っていただろ？」

長い授業を終えた放課後。旧校舎へ向かおうと階段を降りた時、呆れをにじませた蓮也の声が聞こえてきた。流していた音楽を停止しる。階段の下に蓮也がいるので、下駄箱にたどり着けない。それといって死角になる場所もないので隠れることもできない。

「あれ、見てたの？いいじゃん。紫乃花ちゃん、そこらにいる女子とタイプ違うから、面白いんだよね」

「だからってつきまとう必要ないだろ」

「お？何？好きなの？」

「……だったらなんだよ」

居心地悪そうに告げる蓮也と視線が絡まる。途端に蓮也が突拍子ない大声を張り上げた。

「し、紫乃花！？いつからそこに…」

「…別に、今来ただけ。これから部活でしょ？」

実を言うと私自身も否定しない蓮也に若干驚いていたが、あえて毅然とした態度を貫いた。蓮也の言葉に深い意味はないはずだ。夕神君はというと、とっくに私の存在に気づいていたらしく、笑いを噛み殺しながらやり取りを見ている。彼の事だ。私がここに来るのを知った上で、蓮也の気持ちを探るような質問を投げかけたに違いない。部活に行く蓮也を一瞥し、夕神君を見据える。何故か勝ち誇ったように、にやりと口角を上げる夕神君はまるで私の反応を予想していたかのようだった。

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《作者から》

早めに更新しました！明日から中間テストなので、これから勉強しようと思います。時間に余裕があったら今日中に更新するかも…？

時間なかったら、明日になります！

あと少しで寺里さんの秘密が明らかになるかなぁ、と。

文芸部員は短編かけるのに、私と部長は短編苦手と言うw私と部長で４７ページ書いてますからね…他の人は多くて８ページなのに。部長の語彙力は尊敬します、本当。

私ももっと頑張らないと。

追記

すみません…10/18の更新になりそうです（；＿；）