ingress。赤き緑と青きレジスタンス

赤キトーカ

第1話 青い桃花と緑のあかき



冬の日曜日、2人の男女が歩いている。

2人は、高校生。


「なんて綺麗なコントロール・フィールドなんだろう」

スキャナを通した世界を見て、彼は、言った。

「でしょ?アカキ」

表情を変えずに、彼女は言う。

「こんな素敵なフィールドを構築できるようになりたいな」


「紹介しても、いいんだよ。」

「いやだ。」

アカキと呼ばれた彼は、即答する。

「レジスタンスの教えは受けない」

「素直に教えを請うことも、大事だと思うけど。」


「いいのか、桃花。きみは。スキャナを開かなくて」

「貴方と歩いてるのに、使っても意味ないでしょ。アニメみたいに、エキゾチックマターが見えるわけでも、ない。でも、仕方がない。私たちは」



「相反する者たちなのだから。今日は、貴方に付き合っているだけ」


「それは、ありがとう」

「次は私の番ということで、貸しにしておくわ」


「それで……、壊すの?このコントロール・フィールド」


「破壊する。悪いけど。」

「悪いの?」

「きみに、ということ。レジスタンスに同情なんか、ありえないから。」


…。


「ここだ」

2人は、神社の狛犬の前に立った。

「ちょうどここが、このコントロール・フィールドの拠点となっているね」

「やったら?見ててあげる。」

桃花は相変わらず、表情を変えない。

「待って。とりあえず、あれを」

アカキは賽銭箱に向かい、小銭をそっと入れる。

そして礼をする。


「ハックしたら?」

「レジスタンスのポータルをハックするのはしゃくだけどね。L8だから、仕方がない。それを武器にすることで、ちゃらだ」


「私ならエンラインテンドからなんて、絶対に嫌だけど」

「その意思に、負けてる気がする。でも、」

「破壊する。」




「だめだ……、全然効いてない!この青、どうなってるんだ」

ふふ、と青き桃花が微笑んでみている。


「アクサ…エイジス・アイギス・シールドをダブルでガードしてるんだよ、このポータル」

「そんな……。本当だ、信じられない」


桃花は真剣な眼差しでつぶやく。

「それだけ、私たちも、本気だってこと。」


「本当にシールドが壊せない。」

「ストライクは?」

「……起動してもいいけれど。それだけの価値はあると思うけれど……。」

「私が貴方、緑だったら、やる。」


迷った末に、コントロール・フィールドの拠点のその神社のポータルを中立化し、緑色に染めて制圧した。

ポータルの中心でウルトラストライクを、ほとんど使いきって、

そして、

アカキはバースターを放った。それだけの価値はあると判断したのだった。


「…っ!レゾネータをデプロイできない。今、中立化させたのに、どうして青に…!?」


まさか、

「君か?僕が中立化させた瞬間を狙って、制圧…を?」


「ちがう。後ろ見て」


神社には、たくさんの人が参拝に来ている。


「あいつだよ。このコントロール・フィールド、構築したの……」


どいつだ。スキャナを開いているのは……。

わからない。見えるはずがない。


「誰かは、教えない。貴方は教えてほしくないって、言ったでしょう?」


だから。

「だから、ここを制圧しても、無駄なの。アイギスの盾を2枚使うことがどれだけのことか、わかるでしょう?スキャナを開いて。」


アカキはバースターをやめて、スキャナでマップを見る。

「……コントロール・フィールドの拠点の全てに、アイギスシールドが…!」


「わかった?これで」

「……ここは、退く」


アカキはその神社の制圧を断念し、撤退。


歩きながら。

「もっと、強くなる。」

「その姿勢は、好きだな」


「僕はいまさらレジスタンスには、戻れない。戻らない」

「それでいいんじゃない、かな。見て。」


「猫だよ」

「よく、逢うよね。」


あいつは何色かな、と思った。




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