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「叢雲ってニンジャに首刎ねられて一時間くらい生首だけで喋った後に死んだとか聞いたんだが」「私は妖怪か何かか?」「アキチらカテゴリー的には妖怪か怪物の類だけどね」

「俺はエイリアンとの間に子供作って蒸発したって聞いたぞ」「十年前の敗戦とやらが出回って以来からロクなこと言われてないな私は…」

「そりゃあ、王のウェステッドが総出で出撃して負けて逃げたって有名な話ッスから。戦線の連中が俺たちを明確に殺すべき敵と認識したきっかけでもあるし」


空間を越えた先にいたのは、近未来な作業服(宇宙服のような)を着た狐耳の女性。

どうやらカーネイジやミグラントと同じく有名人の一人のようで、わたしよりもウェステッドをよく知るサイボーグ三人組からはむらくもさくらと呼ばれている。

「なあ椎奈、いつまで私を抱えているんだ?」「あなたがもう暴れないって約束するまで」「流石にこんな状況で暴れるほど私は馬鹿じゃないんだが…」

ブツブツ言うクロエは、どうも戦闘で手足の調子が悪くなってしまったとかであの後勝手に手足が外れてしまった。ナノマシンがどうとかなんとかで今は仮接着された状態らしく、暴れなくても安静にした方がいいと思い、私の独断で四肢がない状態で抱えられている。当の本人はすぐにくっつくと言うのだが。

「だから言ってるでしょう、あなたたちだってむしゃくしゃしただけで人に暴力を振るうんだから、わたしがちょっとカチンと来た上に因縁をつけられたからぶっ飛ばしても文句は言われないはずよって」

「ぶっ飛ばすが言葉通り相手をぶん投げるとかならまだその言い訳が通じると思うが、お前は三人を路地裏の壁の染みに変えたじゃないか」

「その三人だって正体は人間じゃなかったんだから、魔物を退治したって事でセーフよ」「この世界の人間には転生者に見えたと言っていたな…」「金属質な化物に転生したにしては雑すぎるわよ、新手の擬態能力を持った魔物でしょ」

彼女を解放する代わりにわたしはそもそも彼女が襲ってくるきっかけについての釈明を行っていた。

わたしからしたら、人間が人間を傷つけるのは当たり前の行動なんだから、一応人間だったわたしがそれをしてはいけないという道理はないはずなんだけども。

どうやらクロエやカーネイジにとっては間違っているらしく、前者からは反論され、後者からは拳を振るわれた。後者は寝てる間にロープで縛られて川に沈められないだけマシだと思って欲しい。

…何故そうしないんだろう?と疑問が過ったのだけど、人間には都合というものがあったのを思い出したので、わたしにとってカーネイジは川に沈めなくてもいい都合があるのだろうと言うことで自分を納得させた。


そして、未来の話をするとサイボーグ三人組に囲まれて会話している狐ガールの叢雲とはカーネイジに続いてトラブルというか言い争いをすることになるのだが、今思うと彼女が何を言っていたのか、わたしの何が問題だったのかを説明していたと思うのだが、わたし自身それを理解することはなかった。

分かっているのは、カーネイジも彼女もわたしには難しい英語や単語でわたしの問題点を上げていたと思うくらいだ。というのも、早々に叢雲はわたしにわたしの問題を理解させるのは不可能だと思ったらしく、その後のトラブルは作戦を破壊したり、何かしらの生物や人物の処遇を巡った際にしか起きなかった。

カーネイジは最後までわたしにああだこうだと言っていたのだけど。

彼女がわたしに何を理解させたかったのかは、永遠の謎になってしまった。

聞いたかもしれないけど、それを覚えていないということはわたしには理解できなかった答えだったのかもしれない。

それか、わたしはわたしの問題を解決する能力を持てなかったのだろう。

それではどうしようもないじゃないか。と思われるかもしれないが、覚えている限りで思い返してもそう思うしかない。

わたしにできることは、何かを解決したり進展させるかは別にして何かしらを破壊するか殺傷するのいずれか。これぐらいしかなかったのだから。


現在に戻ってみると、スクイッドというやけにリアルなイカの被り物をした少女が叢雲と口論している。近未来の作業服のような服を着た狐ガールに、タクティカルベストを着けたセーラー服に見える服装の少女というソーシャルゲームのシナリオ画面のような光景だが、現実でわたし達がどちらかといえばエネミーとされている。

まあ、敵勢力のワンシーンという意味では間違ってはいないだろう。

口論の内容はわたし(とクロエ)は知らない「十年前の敗戦」についてだ。

誰に聞いてもいまいちわからないので当事者らしいカーネイジに聞いてみてもはぐらかされたので分からないままだ。

分かっているのは、彼女たち王のウェステッドと呼ばれる一勢力が他のウェステッドを率いて何処かの世界に攻め込んだのだが、返り討ちに遭って撤退したらしい。

そして。

「お前たちがあんな無茶な作戦をしなければ、はなかったんだぞ!」「それは君らが弱いだけなんだよなあ!」「私だってあれは想定外のことだったんだ、そもそも相手と真っ向から戦ったって、勝てる相手じゃなかったのはお前だって分かっていたでしょ?」

スクイッドは哀れにも一回死んだようだ。見る感じでは幽霊には見えないが、ゾンビだろうか。

「そんなの私聞いてないぞ!ミグラント!」「アキチに振る?こっちも急にカーネイジに変態趣味のよくわかんない人達押し付けられてここに攻め込めって言われて来たようなものだから全然知らないよ、いい加減何してたか正確に教えてくれない?叢雲ちゃんもいることだし」

「こっちも聞きたいッスよ、一体何があったんで?あれでとか言われてるんスよ?」「それでアンタら王の連中が数減らすために自爆前提で突っ込んだんだろって言われてるんだよ」

「あれについては後で全部話す。この感じじゃカーネイジもロクに説明してないようだし」「話す必要がなかったからね!」「全部話そうとすると時間かかるならとりあえず何がしたかったのだけ今ここで話してほしいんだけど」


「それは単純だよ!君たちウェステッドがどれだけできるのかを調べるためさ!」

「言い出したのはヤクモよ。可能な限りウェステッドを合流させて一つの作戦で共闘してみたらどうだと。その中で見込みがありそうな奴に持て余してる王の座みたいのを譲ってもいいんじゃないか?とね」

あっさりと大きな出来事の始まりが語られ始めているのだが、わたしはあまり関係がないようで野次馬のように聞いている。

「それで選んだのが戦線…世界を放浪している連中の集まりへの攻撃だった。理由としては貴方たちも知ってるように、戦線ほど私たちが干渉しやすく、されやすい勢力というのがいなかったからよ」

「私たちが彷徨っていたあの空間…宇宙のような、しかし間違いなく宇宙ではないあの奇妙な空間に作られた世界。私たちが本当に世界を滅ぼす怪物なのかを調べるにも丁度良かった」「世界が止まったり壊れたりする現象には何回か遭遇したことがあったけど、自分たちの手でそうなったかと言われると怪しかったから、叢雲ちゃんとカーネイジ、そしてヤクモが確かめるつもりだったんだね?」

「作戦指揮として蒼天も関わってるわ。工作班としてフォレストも」

「待て、なんで私達には伝わってなかったんだ?百歩譲って私やスミカはともかく、カーネイジの側近に等しいミグラントにまで伝わってないのはおかしくないか?」

私たちウェステッドと私たちじゃないウェステッドと呼ばれる怪物の区別って、貴方できる?」

「そして戦線の区別も君たちつかないだろう?ようは情報が漏れるのを防ぐためだね!」

「言われてみればそうだな、俺達とそうじゃない怪物の区別、王様たちはついているのか?」「それについてはアキチもよくわからないんだよね。とりあえず一度死んだ記憶があってなんか能力があるって人がウェステッドってことにしてるよね」

「ぼくが遭遇したウェステッドは皆独特の人生と性格を持っているから、生前異常者だったものが転生したのがウェステッドぼくらとしてたかな!」


それあなたもおかしい人だって言ってるようなものじゃない?とカーネイジ以外の全員が思っただろうけど口にはしなかった。多分彼女も正しく判別することができず、自分の経歴を参考にしたのだろう。

「つまるところ、私たち側のウェステッドとそうじゃないウェステッドを区別するためでもあったの。まあ、結果は分からないままに終わったんだけど…」

「何が目的だったのかはわかったが、私が無駄に死ぬ羽目になったのは許してないからな!」「それで構わないわ」「スミカからはあの後感謝されたからね!」

「ついでに言うならアキチも変態集団に囲まれて大変だったんだからね?聞きたくもないのに女の子のいたぶり方だの嬲り殺しした話を武勇伝みたいに聞かされて夢にまで出たんだから」

まあ、そんな何も怖くなさそうな連中が悲鳴上げて逃げ惑っていたのはちょっとスカっとしたけどね。と小さく呟いたのをわたしは聞いた。

「次は一体何があったのかって話だが、これから俺たちはどうするんで?」

「そこのブリキ三号は一応ものになると分かったので、次はお前たち一号二号の戦いぶりを見てみたいんだが…」カーネイジがそこまで言うと、彼女視点だとボーっとしているままのわたしに目が行って、目をそらした。と思えばもう一度わたしの方を見て、わたしと目が合った。叢雲もわたしの方を見る。

「一応ぼくらは冒険者で、お前たちはパーティの一員だ。そこのイカ女と、叢雲おじさんも含めてだ。転生者か一部の冒険者だけに依頼される特別な依頼があって、その解決が先だ」

あのレフィーナもまだ冒険者の振りを続けているなら来ているはずだろう。と彼女が付け加える。カーネイジに肉薄して至近距離でショットガンを発射したとかいう冒険者とのことだ。撃退されたとのことだけど、四本腕とか腕が触手に変わったとか奇妙な話があるのでおそらく人間ではないのだろう。

どうやら、わたしを何でも他人と間違えてはその場で訂正していた奇妙なシスター、アンジェリカの仲間らしい。彼女が目的を果たすまでの間の時間稼ぎで襲い掛かったのか。


「依頼はこの産業特区とかいう都市せかいで起きているロボットの暴走事件の解決。依頼人は不明。下手すると存在しないかもしれん」

カーネイジの言葉の後、頭痛。頭の中に鮮明なイメージが浮かぶ。ヤクモに直に情報を植え付けられているのだ。

依頼人:不明の所に()で「セントレア王国の可能性有り」とテキストが書き加えられるイメージ。

「正直こんなのを請ける冒険者なんているのかと疑問だが、上手くいけば転生者かその仲間しか持てないような武器や装備を手に入れられる絶好のチャンスということで、意外と来ている冒険者は多いんだ」

あとで現地人のメアに聞いてみたところ、本当だった。彼女が言うには見慣れない武器や銃火器を持った冒険者を見たことがあるそうだ。仲間以外に武器を渡すことがめったにない転生者の性質上、彼らから譲られるなんてことはほぼありえないことで、奪うこともそうそうできないだろう(そして維持も)ということで、そうした特別な依頼で手に入れたものだそうだ。

わたしも、革の鎧にヘンテコな機械と鉄板をくっつけたような防具に、世界観を壮絶に無視したビームの剣を握った冒険者と対峙したことがあった。

どうやら帝国とセントレアは競うようにそうした異世界の武器や装備、何かしらの装置を集めさせているらしいのだが、結局のところ転生者の武器が強力だと言うことで同じレベルのようなそれらを渡そうとしないようだ。

そして、どうやらこの世界の人間も自分たちの世界に別の世界がくっついているか、被っているような状態になっているのは分かっているようだ。

「目的地はヤクモが既に調べ上げている。暫くその辺をうろうろしたら、ぼくたちは速やかに目的地…ダンジョンに突入。暴走しているロボットを鎮圧。暴走の原因と、何かしらの物品の回収をして退却する。比較的安定している世界とのことだが、どうなるのか分からないのがここゴミ箱世界の特徴だ。そこの藤森のように、フラフラしていたら突然別の世界に落ちるように転移してしまうことなんて日常茶飯事のようだからね」


そう。実は話す事でもないと思ったのだけど、わたしは突然別の世界に入り込んでしまっては、そこで暴れ回って出てくるを暫く続けていた。

いつか話した貴族専用の学校のような場所で嫌がらせと決闘に交互に襲われた時のように、わたしを苛立たせる絶妙な人間たちが住まう世界が多かった。

そして、その全てをわたしは殺したのだけど。

そこの住人の一人に、自分は常識と倫理をわきまえているかのように「お前には社会性というものはないのか」と叫ばれたことがあったけど、わたしはわたしなりに人間らしく振舞ったつもりだった。なおその人物はその世界では殺し屋をしていた。

目の前で泣き叫んでいた少年が、気に喰わない、むしゃくしゃしていたという理由だけで同じクラスメイトの子をよってたかっていじめていたのと、わたしがその少年と同じ理由で仲間の首を引っこ抜いたのと、理屈は同じのはずだ。

それを十回くらい繰り返した時、いつものようにわたしは人間らしくトラブルを解決しようとしたら追いかけてきたカーネイジに止められ、今までにないくらいの勢いでぶん殴られて数メートルほど吹き飛ぶことになった。

その時の表情は、いつになく真面目な表情は、わたしが初めて見る彼女の本来の表情だった。


「藤森のようにトラブルを災害に変えるやつはほとんどいないと信じているが、どうなるかわからん、そのためなるべく早く依頼を遂行する」

そうカーネイジが言うと、スクイッドが前に出る。

「ダンジョンと言っても、移動する工場みたいな船だ。電子的な防御…セキュリティシステムは当然ある。私たちだけでも対処はできるだろうが、念には念だ。今回はその専門家を連れてきている」

私が来た理由の残り半分はこれだ。と彼女が視線と顎で指す。

その先には、妙に艶やかなボディースーツに身を包んだ前髪で目元が隠れた少女。とクラゲのような被り物をした少女。

「イカの次はクラゲと…何?」実直な感想を、ブリキ一号ことサイバービーストが呟いた。

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WasteD~異世界に転生したら恐ろしい化け物になりました~ 廃棄物13号 @eibis_wasted

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