ジャーナリスト全員集合!秋の大運動会!
ちびまるフォイ
お茶の間に届け!みんなの努力!
「さぁ、今年も始まりましたジャーナリスト大運動会!
赤組も白組も自分たちのジャーナリズムを爆発させてくださいね!
なお、みなさんの頑張りはのちにテレビで放送されますから
隠れてサボったりしないで、最後まで頑張っていきましょう!!」
「「「 うぉーー! 」」」
ジャーナリストたちは雄叫びを上げて腕を振り上げた。
テレビで報道されれば自分のジャーナリストとしての名が挙がる。
それは賞金以上に嬉しい報酬だった。
会場にはテレビ関係者が集まり、運動会の主催スポンサーも見に来ている。
「それでは第一種目は、記事入れ競争です!」
赤組と白組の中央に高いカゴが置かれ、周囲に白紙の記事がまかれる。
号砲とともに競技がはじまるや、赤組も白組も一斉に記事を書きまくる。
「入れー―!」
「はい、次!」
ジャーナリストたちは持ってきたネタを書いてはカゴに向かって投げ込む。
どれだけカゴに記事が詰まっているかで勝敗が決する。
「はい、では時間になりましたので集計へと移ります!」
カゴには明らかに赤組のほうがたくさんの記事を詰め込んでいた。
審査員はそれぞれのカゴに入った記事を数えていく。
「赤組……いーち、にー、さーん、よーん、よんてんご、よんてんろく、ごー……」
「ちょ、ちょっとまって! 今なんで小数点挟んだんだよ!?
ちゃんと1つの記事じゃないか!」
「いや、記事としての密度が伴わないものは1個以下です。
数撃ちゃいいってもんじゃないんですよ」
集計が終わるとスコアボードには白組勝利と書かれていた。
「今回の記事入れ競争では白組の大勝利です!
赤組の皆さん、薄っぺらい記事ばっか書いて水増ししてんじゃねぇぞーー」
赤組はスクラムを組んで次に切り替えた。
「大丈夫、まだ1つの種目を取られただけじゃないか。
次の大ネタ転がし競争で逆転すれば問題ない」
次の競技会場では「スキャンダル」と書かれた大玉がふたつ用意してあった。
「次の大ネタ転がし競争では、
書かれた大ネタに関する情報で大玉を転がして
先にゴールした組が勝利です。ではスタート!」
「うおおお!! 燃えろ赤組――!!」
赤組のジャーナリストたちは芸能人などのスキャンダルネタを集めて大玉を転がす。
最初の競技とは異なり、一度転がりはじめてしまえば
小さなスキャンダルネタでも十分大玉のスピードを維持できる。赤組向きの競技だった。
「いいぞ! みんな、このままスキャンダルネタを出しまくれ――!」
「不倫不倫不倫不倫!」
「違法ドラッグ違法ドラッグ!」
「お酒お酒お酒お酒お酒ーー!」
ついに赤組が白組より先にゴールテープを切った。
ハイタッチを交わす中、審査員はアゴに手を当てていた。
「あの、なにか?」
「写真審査中です」
しばらくすると、会場に放送が流れた。
『えーー、ただいまの競技ですが、赤組の出した記事の中に
一部ウソや行き過ぎた表現が含まれていましたので、白組の勝ちとします』
「えええええ!!」
『ジャーナリストとは常に真実を追い求めなくてはいけません。
その姿勢を崩した赤組は負けて当然です(ピンポンパンポン)』
すでに赤組と白組のスコア差は大きく開いていた。
「みんな、最後まで諦めちゃダメだ。
最後の騎事戦ではポイントが400倍になるから大逆転できるはず」
「リーダー……!」
「騎事戦に備えて、いいネタを集めようぜ」
「「「 おう! 」」」
不屈の精神力で立て直すと、赤組たちはそれぞれ最高の報道ネタを用意した。
「それでは最後の競技・騎事戦となりました。
これは用意してきたネタの大小に応じて騎馬が決まります。
そして、相手のハチマキにかかれているネタを取れば自分のネタにできます。
最終的に自軍のネタポイントが大きいほうが勝利です」
大きなネタを用意して逃げ回って生き残るか。
小さなネタを用意して玉砕覚悟で相手のネタを奪い取りに行くか。
様々な作戦が展開されるジャーナリスト運動会の花形競技。
「あ、あれ? リーダーは?」
最終局面にかかわらず赤組リーダーはどこにもイなかった。
「それでは開始です!!」
そうこうしているうちに騎事戦が始まった。
赤組唯一の心の支えだったリーダーを欠いた状態の赤組は、
3連覇を狙う白組の前に小動物のように次々とネタを取られてしまった。
「ピーー。騎事戦終了です。
生き残った騎馬の人は自分の記事ポイントを合計してください」
生き残った数も多い白組が圧倒的にポイント差で勝っていた。
「勝者、白組!! これですべてのy抗議で白組の勝ちとなりましたーー!!」
赤組はお通夜以上に暗い顔で沈んでいた。
「り、リーダーの野郎……最後まであきらめるなとか言っておいて……」
「あいつ、騎事戦で自分の虎の子のネタを奪われるのが嫌で棄権したんだよ」
「戻ってきたらただじゃおかねぇ……!」
白組から味わった敗北の怒りは、赤組リーダーへと向けられていく。
その怒りのピーク時に赤組リーダーは戻ってきた。
「てめぇ! いちばん大事な局面でいなくなるなんて、どういうつもりだ!!」
戻ってくるなり、胸ぐらを掴んでぎりぎりとねじりあげた。
「ち、ちがうんだ! 俺はただ赤組とスポンサー契約をしてきただけだ!」
「ああ!? そんなことになんの意味があるんだ!!
そんなに赤組を勝たせたくないってのか!?」
「大丈夫、あとはすべてうまく行くから!」
数日後、ジャーナリスト運動会のテレビ放送が行われた。
「赤組リード! 赤組リードしています!」
「素晴らしい! 赤組のカゴにはたくさん記事が詰まっています!」
「赤組トップでそのままゴーーール!」
後日放送された運動会の映像では赤組の活躍部分だけを編集し、
誰がどう見ても赤組が勝ったようにしか見えなくなっていた。
番組が終わると提供が出てきた。
『赤組とこの番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました』
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