難破して大海に漂う僕は人魚に殺される

おはなし

第1話 どうせ僕は死ぬんだから読まなくていいよ

「死ね！死ね！」

念のため言っておくがこれは心の声だ。

口に出すと不謹慎なので心で言うに留めているのだ。

この僕の呪いの言葉も重ね始めてそろそろ100回を超える。

え？お前フェリーのトイレでなにやってんだ……だって？ちょっと色々あってね。吐き気が止まらないんだよ。

普段からコツコツと積み重ねていたストレス、今日、それがピークに達しただけだから……気にしないでくれ。

そんなになるまで一体どうしたんだ……だって？

嫌な奴らに嫌な思いをさせられたのさ！

嫌な奴ら？嫌な思い？ウンウン相談に乗ってあげるから、誰になにをされたのかチョット言ってみなさい……だって？

この世にいる奴全部！

やることなすこと全部！

なにもかもだよ馬鹿野郎！

……お前もだよ！

修学旅行のせいだ。おそらく数日間も他人と昼夜を共にしたのが祟ったのだ。

……失礼。ちょっともっかい吐く。

……。

お前と話していると不快な気持ちになってきた！

死ね……というのはちょっと不謹慎だから

「事故にでもあっちまえ！」

くらいにとどめておいてあげよう。

……！？

なんだ！今の揺れ。ちょっとヤバくないか！？

と、とにかく外へ出て様子を……

こ、これは！

リアルタイタニック！

勘弁してくれ、僕は沈む船の上エンダーを歌う勇気なんてないぞ！

もちろん相手もいない！

……俺のせい？バカな！そんなわけあるか！

しかし、まずい。このまま死んでしまうのは悲劇でも喜劇でもなくただの事故報告。ギャグにすらなっていない。

明日、朝のニュースで流れる沈没船の姿くらい無味乾燥なお話ではないか！わざわざ僕が実況しているというのに！

無責任に報道される遺族の涙する姿に負けて、僕の出る幕ないぞ！

え？そんなこと言ったら遺族に不謹慎だろ……だって？

君も僕と同じ立場になってみるがいいこれくらいのことは言いたくなる……ッブクブクブクブク。。。。。。。。。

はっ！こんなところにスーツケース！誰のか知らんがちょっと拝借！

そして現在に至る。

強い海流僕を呑み。そのまま流され何処へやら……。沈没地点は遥か遠く、僕は一人で大海の中。

やんなっちゃうよ！ほんと。

つづく