第5話
ホブゴブリン級中型輸送船「エクスカリパー」の旅路は今日も順調だ。
トラブルが多いように見えるかもしれないが、トラブルばかりで輸送業が成り立つわけもないので、大体はこんなものだ。
今日の業務を終えた俺は、いつものように食堂で定食プレートをつついているわけだが、不本意なことにいつもと違う点があった。
モップを抱えた幼女が真正面から俺をにらんでくるのだ。
「…なんだ、言いたいことがあるなら口で言え」
「なんだとは何よ。あんたのせいであたしはこんな船に乗ることになったんだからね!」
それも3年も!と、何度目かわからない喚き声を上げる。ええい煩いガキは嫌いなんだ。
「もとはと言えばお前が俺相手に警察沙汰を起こしたせいだろうが、この不良ハーフドワーフが」
馴染みの職人ドワーフ、シャウエッセンの孫娘、オレゴンに降りた判決は、俺の進言通りに3年の懲役刑だったのだが、一体どこからの差し金か(脳裏に浮かぶのは絶世の美女神の笑みだったりするが)労役の場が俺の職場である貨物船となったのだった。
まあ次元間貨物船は恒星間航行も多くて長期間閉鎖空間になる、事実上牢獄みたいなものだし、懲役刑の現場として使われるケースがある事は認識している。
「やれやれ、またにぎやかになったなあ」
完全に面白がっているラリマーがニヤニヤしているのが癪に障るので、俺は幼女を無視して話を変えることにした。
「そいで、ブリッジは今どんな感じだ?次の行き先はドワーフの世界だろ」
今回のエクスカリパーの目的は、ドワーフたちが生産する魔法集積回路の買い付けだ。
トラック転生による超次元航法機関に欠かせないパーツであり、売れ筋商品だが、抵抗ゼロで魔力を通すミスリル銀と魔力を遮るオリハルコンで組みあがるそれは、ドワーフが生産したものが主流となっている。
俺が生まれたころの地球で生産されていた半導体部品のように機械で生産することもできるのだが、その頃よりはるかに進んだこの今の時代にあっても、品質と速さの面で、機械はドワーフ職工の技術に全くかなわないらしい。
おかげでドワーフの住むモリア宇宙は稀に見る好景気に沸いているという。
「予定通りさ。モリア宇宙への航行プランはもうできていて、今ブリッジで検証中。Goが出ればすぐにでも飛ぶことになる。」
なるほど順調らしい。
「そういうお前の方はどうだ、飼育室の準備は?まあカムチャッカの手配なら間違いはないだろうが」
「もう転生鼠は選び終わって動力室に納品済みだよ。」
超次元航法機関トラック転生 天下無敵の無一文 @takosuke2200
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