海産物

「夢」


夢をよく見る。

それは心地の良い朗らかな音楽の中、草原で寝転がっていたり、おぞましい怪物に追われながら武器を振りかざししたり、謎の宇宙人と会話を楽しんだりと、多種多様だった。

けれど、よく見るのは白い部屋に1人でいる夢だった。

広さはよく分からない。部屋の高さもどのくらいなのかよく分からなかった。広いと言われれば、広く。狭いと言われれば、狭く。高いと言われれば、高く、低いと言われれば低い。そんな部屋だ。

そんな曖昧な部屋には必ず、白いペンキで雑に塗装された木製のドアがあった。

手を伸ばせば届きそうなのに、届かない。届いてもいつの間にか手を離してしまっている。なかなか回すことの出来ないドアノブを茫然とした顔で見る。

そして、ドアノブが勝手に回り始め、私側ではない方から扉が開かれる。蝶番が小さく音をたて、ドアを開けた本人が見える。正確には見えそうになる、誰だろう。

というところでいつも目が覚める。いつか、いつかこの目で見てみたいと思っている。

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海産物 @4869nakimono

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