無題(僕はタイトルから除外されてるようだ)

定規カタパルト

第1話 事の始まり

やあ。

君がこの手記を読んでいるという事は、とうとう僕は手記から除外されてしまったのだろう。

いや、正確には僕がこの手記を除外したのかもしれないが。

何を言っているのかわからないと思うが、まあちょっと変わり者の男の個人情報が乗っかった手記なんだ。

少しくらい僕の身の上話を聞いて行ってくれよ。

面倒だと思うならここでこの手記をそっと閉じて元の場所に戻しておいて欲しい。

きっと明日にはこの手記は僕の手元に戻って来ている筈だから。










ここまで読んだのであれば君は僕の身の上話を聞いてくれるという事でいいね?

なに、そんなに時間は取らないさ。

君が読みたいところまで読んで、満足したら元の場所に戻してくれたらいい。

前置きが長くなってしまったね。

じゃあ話そうか。

まずは自己紹介だね。

名前は高梨 悠人たかなし ゆうと

年齢は17歳で性別は男。

もしかしたら読んでいる君と歳が近いかもしれない。

違うのであれば敬語でないことを謝罪する。

どうも他人とコミュニケーションをとるのが苦手でね。

自己紹介はこんな感じにして本題だ。

僕は生まれつき可笑しな体質を持っていてね。

その体質っていうのは『ありとあらゆるものから除外される』というもの。

よくわからないだろう?

実際僕もそこまで正確に把握出来ていないのだから。

では、この体質について軽く説明する事にしよう。

まず、何から除外されているかというのだが、これは本当に千差万別で常に除外されているものと日替わりで除外されているものと2種類ある。

前者は体重計、食事、死、攻撃、怪我の5つ。

後者に至っては日替わりで何が除外されるかはその日次第という中々に厄介な体質だ。

ちなみにだけどこの手記のこの部分を書いている時の日替わり除外内容は、

男性器とシャープペンシル、そして声から除外されている。

朝起きた時の違和感は凄まじかったよ。

何せあるべき場所にナニがついていなかったのだから。

おっとすまない、少々下世話な話題だったな。

それじゃあ話題を変えるとしよう。

この体質が発覚したのは僕が生まれてすぐ、産まれたての僕を回収した看護婦さんが僕の体重を量った時に判明した。

看護婦さんはそれはそれは驚いていたそうだ。

何せ体重計に僕を乗せても体重を計測できなかったのだから。

だけど、僕は当時質量から除外されていなかったのでしっかりと重みを感じる。

それなのに全ての体重計が僕には何の反応も示さない。

病院中大騒ぎだったらしい。

おまけに食事を取っても排泄しないし、たまに服から除外されて素っ裸になっているし。

この話は、小学四年生の頃に親から聞かされた。

親はこんな気味悪い体質を持った僕を見捨てないで一生懸命育ててくれた。

本当に親には今でも感謝している。

この手記を見ている君も是非親を大切にしてほしい。

今の君は色んな人との出会いや助けで出来上がっているが、そのきっかけ、君を産んで育ててくれたのは君の親だ。

感謝の気持ちを伝えたくても伝えられなくなってからでは遅いのだから。

伝えるべき事は早めに伝えるべきだ。

…何やら話がごちゃごちゃしてきたな。

では、ここで1つまた別の話をしよう。

また話題を変えるのかと思うかもしれないが許してくれ。

今度はきっと長続きする話題だと思うから。

という事で、今日の僕の話をするとしよう。

前述した通り今の僕は声と男性器とシャーペンから除外されながら、常時除外されているものも含めて、全部で8つの物事から除外されている。

勿論17歳の僕は学校に通っているので、平日の今日は何の変わりもなく登校日。

声を失っている僕にはかなりきつい状況だった。

挨拶出来ない発表出来ない会話出来ない。

流石にこれは日常生活に支障をきたすので、母に頼み休ませてもらった。

会話にはホワイトボードとペンを使って筆談を行った。

しかし、ただ家に居るのも気が引けるので、教科書を開いて今日やるはずだった授業の内容を勉強する事にした。

ノートを開き、シャーペンを持とうとして、手がシャーペンを擦り抜けた。

幽霊にでもなったかのようにスカスカ擦り抜けて掴めない。

僕は頭を抱えて今日の除外内容を把握した。

そうと決まれば他に何が除外されているのか調べなくてはならない。

そうすれば今日は何が出来て何が出来ないかを考えて行動する事が出来る。

結果的に言うと他に生活に支障をきたす程の除外内容はなかった。

精々が椅子の座り心地から除外され、心なしか今座ってる椅子がなんかゴワゴワする程度で、今日の3つより酷いものは無かった。

取り敢えずこの後は昼まで小休憩を挟みつつ鉛筆を握り勉強に励んだ。

それ以降何か特別な事があったかと言われても特にない。

強いて言うなら、隣に住んでいる幼馴染の彼女が学校終わった後見舞いに来てくれたくらいかな。

あ、彼女と言っても別に付き合ってる訳ではない。

一応幼馴染がいて、そいつが男か女か判別しやすいようにそう書いているだけだ。

あれにも僕と似たような体質があるのだが、それはまた別の機会に話そうと思う。

折角なので彼女の容姿の情報を載せよう。

何、減るもんじゃないし多分大丈夫さ。

髪は肩までの長さの茶髪でよくポニーテールにしてる。

出るとこは出てるモデル体型で何回か街を歩いているとスカウトマンに声を掛けられる程(断っているようだが)。

かなり胸は大きく、運動部で運動している彼女を僕は直視できない。

こほん。

天真爛漫で周りからも好かれやすい性格で、学校中の人気者だ。

典型的なスクールカースト上位者だが、彼女は僕の体質を知ってるし、僕は彼女の体質を知ってる。

そのおかげか彼女は僕に何かと気遣ってくれる。

どうだ?羨ましいかい?

まあ彼女も彼女で自分の体質に苦労しているようだが。

さて、そろそろ書くネタが無くなってきたので今日はここまでにしよう。

こんなつまらない話を長々と書いてしまった申し訳ない。

こんなでも面白いと思ってくれたら幸いかな。

あ、そうそう。

無くなった男性器について一切触れてなかったけど、幼馴染に今日無くなったものについて聞かれたので正直に答えたら、顔を真っ赤にして思いっきりビンタされたんだ。

僕は攻撃から除外されてるから本来だったら痛くも痒くも無いんだけど、彼女の体質の所為で、彼女が僕にする攻撃は普通に痛いんだ。

おかげで右頬が腫れぼったいになってしまったのだけど、何故僕はビンタされたのだろう。

謎だ。

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