第8話 クロス地点 決闘

レイリル王宮

エルア視点


「おっ、お待ちなさいっ!」


 何はともあれ、いがみ合っている少女と男を止めた。

 とりあえず、名乗った方が…?


「小官はエルア・レイリル大尉です。王宮内でなっ何事ですか?!」


 エルアが名乗った瞬間、男は剣を下ろし跪いてこうべをたれた。


「申し訳ございませんッエルア第四王女様!そこの子供が王宮不法侵入の疑いがあったため問いただしておりました」


 不法…侵入?



クロノ視点


 は…はぁ!?不法侵入?

 何故?

 しかも第四王女様!?


 これは…不味い。終わった。


 エルアが不思議そうな顔をしてクロノを見つめている。


 王女様からも叱られる?それか子供だと笑われるか…?


 エルアは思い出したように男に注意をする。


「小官は軍務中ですので、第四王女ではなく大尉と呼称してください」


「これは失礼致しました」


 そして、クロノのほうに向き直った。


「不法侵入…とは本当ですか?」


 なるほど…王族も軍部に?いや、噂には聞いていたけれど。

 見たところ私と同年代か年上か。


 っと、そんなことより。

「えと、いえ、大尉殿?私は…」


 クロノは端的に自身の事情をエルアに説明した。その間、怒号兵は口を挟まなかった。王女の前だとさすがに気が引けるのだろう。


「…なので、このコインを憲兵に返そうと…。」



エルア視点


 これじゃあ、あの子に非はないのでは?


 だとするならあの子は王宮を去ってしまう。

 私はあの子ともう再会の余地は…。


 ここは何とかして軍に来てもらいたい。なんだか、強そうな雰囲気もありそうだし!…きっと。


「なら、両者が納得するように決闘デュエルを行っては?」


 エルアが考え抜いて出した答えは決闘デュエルだった。


 決闘デュエルとは、王国古来から伝わる伝統的なもので、兵士達のゴタゴタや、ましては大将を決める時にも使われたらしい代物である。

 白手袋を相手に投げつけるなどの想像がつきそうだが、レイリル王国の決闘デュエルは至って単純。1人以上の立会人がいるならば成立する。あとは、決闘デュエルする両者が名乗れば開始となる。


 先に男が口を開いた。


「了解しました。我はルートレイト・ウォルス。階級はまだ無い」



クロノ視点


 決闘デュエル…!?


 それが何なのかはよく知らないけど、つまりは剣を交えるということような気がしてくる。


 貴様はどうなのか。というような怒号兵ことルートレイトの視線にクロノは少し怯みながら思考を加速させる。


 確かに!確かに私は愚弄というかそれに近いものをした自覚はある。


 不味いなぁ…。こんなつもりじゃ…。


 全て、全てはあの不審者のせい!


 リウがクロノの腕の中で心配そうにクロノを見つめる中、クロノは憎悪に顔が歪み、再びコインを割れんばかりに握りしめた。


 明らかにあっちは戦う気、勝つ気まんまん。この状況で断われはしない。


 こうなったらもう後に引けない…!


 私の勝機は一割にも満たないかもしれない。が、ゼロではない!…きっと。


 苦渋の末、クロノは決断する。


「わかりました。決闘デュエルとやらを受けます。私はクロノ・レインアークです。です。」

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拝啓、私、旅にでます。旅人になります。 うりゅう# @uryu96

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