第7話 出会い
レイリル王宮
エルア視点
気晴らしにと城門前まで行くエルアの足取りは、アルファー兄様の執務室へ行く足取りと比べ物にならないくらい軽い。
腰まで伸ばした銀髪が軽い足取りに合わせて揺れている。
少し歩くと、よく見る顔がこちらへ向かってきた。
「おはようございます、エルア大尉」
「あ、おはようございます。ルータ大尉」
彼はエルアの同期のアレイド・ルータ大尉。少し背の高い、貴族風の茶髪の好青年。士官学校からの知り合いでエルアが心を許す数少ない友人の一人だ。
「聞きました?魔法師団編成の件」
魔法師団?…初めて聞く。
「いえ、初耳です」
アレイドは少し驚いた顔を浮かべる。
「中央士官は知らされていると思ってましたが、なるほど」
ん?少し……気のせいかな。
「なんでも、国の有力な魔法使いを募って3個師団を編成するとか」
「へぇーそうなんですね」
アレイドが苦笑いと共に頬を掻きながら続ける。
「でも、
確かに、軍人上がりと一般臣民とでは差は歴然。どうやって統率を取るのだろう…。
「なんだか、最近は軍の動きが活発化しているような気がします」
”王国軍の大規模侵攻、これは当たるかもな”
アルファー兄様の言葉が頭をよぎる。
本当に当たったとしたら、魔法師団が侵攻を…?
「そうですよね、また近くに魔獣が現れたらしいですし」
「…お互い、忙しくなりそうです」
そうだよね、魔獣。魔獣も出現しているし、当たらない…よね。
レイリル王国は王政軍事国家。その力をもってすれば魔獣から民を守ることは可能だ。近年は魔獣も活発化し、戦いは増えている。が、兵站も綻びが出ていないし、兵士も十分足りているだろう。
だが、そこに他国との戦争が加わってはどうなるかは分からない。勝利することはできるかもしれないが、確実に何かが欠けていくだろう。
「ご武運を」
「こちらこそ」
互いに敬礼を交換し、エルアとアレイドは反対方向に進む。
エルアの心の中には小さなしこりのようなものが残っていた。
城門に近づいてくると熊のような怒号が聞こえてきた。
何事…?憲兵かな…。
「はぁ!?貴様のようなちびすけがこのコインを持っているわけなかろう!」
「だーかーら!私は不審者にこのコインもって王宮に行けって言われたんですよ!文句は不審者に…」
…とりあえず様子を見よう。
大熊のような男と小柄で背の低い少女が言い争いをしている。
どちらも見たことのない顔だった。
ん……?あの女の子、どこかで…!!
エルアは驚きのあまり、声を出しそうになったが急いで口元に手を当て回避。
そう、エルアが見た夢の中に出てきた少女にそっくり、いや、まさにその少女だった。
やっぱり…可愛い…!!!
いつの間にかエルアの顔は紅潮していた。
声をかけようにも取り込んでいるし…いや、この際勇気を出して…!
エルアが足を踏み出したその時。
少女の首筋に剣が寸止めされた。
あ、……あー…えっ!?
落ち着け、落ち着け、落ち着けぇー!
あの子に話しかける機会が出来たと感謝しましょう。
はっ!事なく事態を収められれば今後の友好も…!
どうしよう、まずは止めなきゃ。あれを止めよう。そうしよう。
えーと、まずは待ってください?だよね。なるべく威厳のある、強い声で。
こう考えること約1秒。
両者が硬直を続ける中、エルアはこの事態を止めるべく、行動する。
「おっ、お待ちなさいっ!!」
…お待ち?お待ちなさい?
うぅ、どうしてこうなった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます