第6話 怒号兵
レイリル王宮
クロノ視点
嗚呼、どうしてこうなったのでしょう?
…2回目。
名前も確認せずに一般人を王宮に入れていいものなのでしょーか!全く…。
クロノは本日何回目かのため息を零す。
とりあえず、マトモな憲兵を…。
「おい貴様!ここは王宮だ!なぜ貴様のようなちびすけがいる?」
よく響く年季の入った声が聞こえた。
宮内を巡視する憲兵だろうか。
随分と大きな声で注意するなぁ。迷惑極まりないのでは?
クロノは関わりたくないのかその声から遠ざかるように歩く。
「貴様だ貴様ッ!聞こえていないのか」
って、私?ちびすけって私っ?
…いらっ。
まーた私を子供扱いですか?!いい加減にしろコノヤロー!
などと言いたいのは山々だが、穏便に済ませるためになんとか言い留まる。
きゅきゅきゅきゅきゅう!
目が覚めたリウは笑い声のような鳴き声をあげる。
「ちょ、リウもなの!?」
もういい。私はここに断言したい。
私は子供じゃないっ!背が小さいだけだ!
とりあえず落ち着いて怒号兵に対応しようそうしよう。
「あの、私は」
「やっと聞こえたかちびすけめ。貴様は何故ここに来た?用がないなら家に帰れ!」
……。
きゅっ!?
クロノは護身用の片手剣に手が伸びそうになるが咄嗟にリウを肩からつまみ上げて腕に抱きかかえ回避。
「私の話を聞いていただけます?」
口元は笑っているが、目は全く笑っていない。
「ふむ、聞いてやろう」
やっと少しは聞く耳を持ったようだ。
「私は、不審者にこのコインを持たさ「はぁ!?貴様のようなちびすけがこのコインを持っているわけなかろう!」
そういって、怒号兵は胸元からクロノが持っているコインと同じものを取り出した。
…とりあえず、人の話は最後まで聞きましょう。
「だーかーら!私は不審者にこのコインもって王宮に行けって言われたんですよ!文句は不審者に…」
フンッと鼻で嗤って怒号兵はクロノを問いただす。
「ならばそこら辺の憲兵にコインを預ければいいだろう!」
ええ、ごもっともです。本当に。
…それが出来なかったから困っているのですが。
「門前の憲兵に申し上げました。そうしたら王宮の中なのです!」
「さしずめ、貴様が勇気が出なくて本当のことを言えなかったか子供だからと甘かったのだろう。全く憲兵は職務を理解しているのか?王宮を守ることが仕事だろうに」
怒号兵はクロノのことを嘲笑いながら憲兵の愚痴をこぼす。
たまにこちらのことを見ているのが腹立たしい。
…勇気がない?子供だから?
クロノの堪忍袋の緒はもう切れる寸前だ。先ほどの笑顔のまま頬が引きつっている。
その姿は無理やり笑顔を作る人形のようだ。
「まぁ、仕方ないか。現実問題、子供だしな」
ブツッ──。
「ええ、そうですか。なるほどなるほど。私は王宮内の兵士に相談をしようかと思っていたのですが…あなたは私を子供と見られているようですし?ほかの正常な兵士を探します」
逆に耳が聞こえなくなりそうですし、とクロノは最高の作り笑顔で付け加えた。
そういって、クロノはキビキビと回れ右をして立ち去ろうとした。
もうコイツに言葉は通じない。
その刹那──。
ヒュンッと何かが風を切る音と共に首筋に小さく鋭い痛みを感じた。
呼吸が止まり、恐る恐る首筋に視線だけを移すと、そこには長剣が寸止めされている。
「どういうおつもりで…?」
「我を愚弄するとはいい度胸だな、ちびすけ」
…えっ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます