[書物]新歳時記(高浜虚子)


 俳句とは、十七音に季語を入れ込んだ形式の歌・文章です。そして歳時記は、その季語の辞典です。

 辞典といっても、引く辞典と読む辞典がありますが、こちらは明らかに読む辞典でしょう。季節ではなく、一月から十二月の十二区分で季語が分類されているところも面白いのですが、その時期その時期の季語の解説を俳人としての目からしているところが、新たな知見との出会いのようで楽しいです。

 例えば六月「富士の雪解」は〈春の内はまだ深かった富士の雪も、夏にはいってくる。急には解け終わらぬその雪解の変化にも興がある〉とあります。もし国語辞典にこの見出しがあったとしても、何とも無味乾燥な説明で終わるものですが、ここは歳時記。いかにして風情を見出すかというところに焦点がありますから、おのずと季節に絡めた説明になります。

 また、歳時記なので、見出しには何句か例が置かれています。その句を読むだけでこれまた季節季節の風情が感じられる、乙なものです。


 以上、虚子編新歳時記でした。総合的に評価しますと、どうしても文明の利器に頼りきりの現代人には見えなくなってきている「季節感」を手に取るにはうってつけの書物でしょう。句集などよりもまずは歳時記を買うほうがおすすめなように思えます。

 ちなみにこの新歳時記は縦長の装丁で、そこからして手元に置いておきたいものなのですが、それは実物を見てからのお楽しみということで。

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壒嚢感想集 凪常サツキ @sa-na-e

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