後日談
イヴァンは最期のときを迎えた。十四歳という外見年齢ではあったが、その実、六年しか生きていない。その歪みというかむちゃくちゃな力が働いて、彼の寿命を縮めた。
ラッドとパーチ、小鳥の他に、地中から魔獣が顔を出して挨拶した。
「え、キミ、まだいたの? でもうれしいな。これでみんなにさよならがいえる」
枕元に集った全員にイヴァンは微笑をむける。
「ありがとう。そしてさようなら」
「イヴァン坊ちゃま!」
魔王は素早く胸元をはだけると、勇者の手をその中へ導いた。
「……!」
するりと触れた胸には起伏がある。今生でも女性の胸に縁のなかった勇者はやや血色を取り戻した。しかし時は戻ることはない。それでも勇者は前世の記憶を取り戻した。
「勇者よ、おまえの人生が我がものとなるならば、それは世界を支配したと同じことだった」
「物好きだな。でも知ってた。未来で、また逢おう……魔王」
「こりないヤツだ、勇者……だが、それも悪くはない」
勇者は魔王に微笑んだ。
魔王の目には、失われた光が宿っていた。
了
ほんのり駄勇者とラスボス執事 れなれな(水木レナ) @rena-rena
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