この作品を鵜呑みにしてはならない


 挑戦的なタイトルとなってしまったが、このタイトルこそが読了した上での率直な感想である。
 難しい表現や専門用語は用いられていないし、文章の意味を理解するのも容易い。ただ、内容を受容することが出来るか否かは、人によって分かれそうな作品だと感じた。

 語弊を恐れず表現するなら、思考の大海原を一人用のぼろ舟で漕ぎ回っているような、そんな感覚だ。
 人が何らかの考えを持つ時、必ず根拠がある。それが自分の経験か、他者からの受け売りか、大衆の常識なのかはこの際問わないが、この人の話はそれらを一旦否定する。イカロスから翼を取り上げ、大地に縛られていた頃に堕とすーーその上でもう一度、独力で飛ぶようにけしかけている。
 なんと厳しい話だろうか。読んでいると拠り所を失った不安、苛立ち、もどかしさのようなものを感じるかもしれない。

 それを越えた時に、私は大いに心を揺さぶられ、気付きと心地よさを得ることが出来た。当たり前、普通、常識といった固定概念に「そもそも」を投げられる衝撃を味わった。
 
 答えや結果の類が書かれている訳ではない。よって、一読してみて「これが真実だ、正解だ」と決めつけてしまっては読んだ意味がない。
 各話に対して自分の意見を持っておくことが重要なのだと思った。
 書いてある内容に全て賛同できたかと言われれば違う。例えば人生理論の構築についての話で「型にはまった人生では不思議を見逃してしまうのでは」と説明されていたが、型にはまり、視野が狭窄したからこその発見、不思議は存在すると考えている。
 当たり前なのだ。私と著者は違うのだから。

 答えではなく、問いかけなのだから。

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