太腿2

 二人が握手してから約30分。勿体ないことに同期と後輩のビールは8割方残されたままだった。


「……すいません、生ひとつ」

「お待たせしましたー! 空いたグラスお下げしまーす!」


 俺は一人で着々と飲み放題のノルマをこなしているが、二人はこのままだと損する飲み方になるだろう。

 でもそんな事大した問題じゃないとでも言わんばかりに、二人の目はキラキラと輝き夢中で話を進めていた。


「先輩は太腿派でしたか~!」

「お前、まだまだ子どもだな。 確かにお尻もいい! いいけどな、太腿に勝るものはないんだよ」


 酔っていないはずなのに声のボリュームが上がる二人。

 やめて、周りのテーブルに聞こえるじゃん。


「どのあたりに一番グッときますか?」


 おい、後輩。 まじでやめろ。

 おい、同期。 待ってました! みたいな顔やめろ。


「あれは俺がまだ新人研修の真っ盛り……」


 あーぁ、語り始めちゃった。


「俺はコピー機すぐ横のデスクだったんだけどな」

「はい! 魅力的な席ですね!」

「だろ?」


 うわー、声色までキラキラしてきてる。


「確かに俺も最初はお尻派だったのよ、コピーしてる後ろ姿にドキドキしてたのよ」

「わかります!」


 だから、声でかいってば!


「でもな、やってきたんだが」

「……その日?」


 二人はタイミングを合わせたかのように生唾を飲み込む。

 だから、なにこれ。


「紙補充の日だよ」

「紙……補充……」

「そう。 あれはA3用紙が切れた時だった。あの時切れたのがA4だったら、俺はまだお尻派だったかもしれない」

「A3……あっ! もしかして!」

「そう、A3は一番下のトレイなんだよ」



 彼女は重そうにA3用紙の包みを持ってきて、そっとコピー機の横に下ろした。ベリベリと捲る紙の音に誘われてふと顔を向けたその時、俺の目にバチーンと飛び込んできたんだ。

 彼女は太っていなかった。 むしろ細い方でお尻も小さくて、腿も細くて……それなのにどうだ。

 足を折り畳んだだけ、たったそれだけなのに制服のスカートはパツンとした太腿に苦しむようにピーンと生地を伸ばしたんだ。

 細腿が太腿に形を変えた瞬間!

 わかるか、後輩!

 その曲線は、達筆な平仮名の『し』を横にしたかのように滑らかで、そこに日本の美っていうのかな、風情を感じたっていうのかな。

 そこから俺はすっかりその魅力に取り憑かれてしまったんだよ。



「……深いですね」



 後輩の言葉を聞いた同期は徐にジョッキを掲げる。 後輩は両手で丁寧にジョッキを持ち上げ、ゆっくりと同期のそれにカチンと合わせた。



「「 くぅー 」」



 二人同時に旨そうな息を吐いたけど、いや、もうすっかりぬるいよな、それ。

 泡だって、とっくのとうに消えてたぞ?



 おい、無言で握手すんな!

 おい、無言で頷くな!!

 だから、無言でジョッキ掲げんなー!!!



 *******


 お久しぶりです!

 太腿派の皆さん、お待たせしてしまいすみませんでした! (え? 待ってない? 笑)


 さて、ひょんなことから制服愛を持ち出してしまいましたが、皆さんの好きな制服はなんでしょう。


 スーツ! ギャルソン! ガテン系!とか女性だって好きな制服色々ありますよね。


 ……でも私、「板前さん!」と言って、誰からも同意を得られなかった悲しい過去があります。


 全国の板前さん、力不足ですみません!!

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下心くすぐり系女子 嘉田 まりこ @MARIKO

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