太腿1

 会社を出るときに一緒になった同期と後輩と俺の3人は急遽、駅近の居酒屋に飲みに行くことになった。

 うちの課に配属されたばかりの後輩は最近の若者にしては珍しく、と言っても俺と4つしか変わらないが、飲みの誘いを二つ返事でOKした。なんでも先輩男性社員と腹を割って話がしたかったらしい。

 さぞかし、熱意のある奴なんだろうと頼もしく思っていたが、 そいつが二杯目のジョッキを空にしたあたりから何やら様子がおかしいことに気がついた。


「先輩、俺、受付に異動したいっす」

「う、受付ぇ? なんだよ、好きな子でも出来たのか?」

「……好きな子? あっ、生3つ追加で!」


 テーブルの横を通り過ぎようとした店員に俺らの分も含めて注文するあたり、意識はちゃんとしているんだろうけど、男性社員が受付に異動希望だなんて今まで聞いたこともない。 ただただ驚く俺に後輩は真剣な顔で言った。


「好きな子がいるか、と聞かれたらいます。 いないか、と聞かれたらいません!」

「はぁ? 訳わかんねーよ」


 皆さんも俺と同様、訳がわからないと思います。 けれど後輩はすぐに心底ガッカリした顔で「あー、先輩はそっち派じゃないってことっすね……」と呟いた。


『生3つでーす。 空いたグラスお下げしまーす!』

 店員が来たこともあり静かになっていた空気を一番に割いたのは、なんと俺の同期だった。


「……おい、新人。 お前、もしやこっち派か?」


 俺は同期のその言葉に全くピンと来なかったが、後輩は急にキラキラした目で同期を見つめた。


「は、はいっ!!」

「そうか!!」


 テーブルの上に右手を差し出した同期と、嬉しそうに両手でその手を握りしめる後輩。

 なんだこれ?


 そこから先は、同期と後輩プラス俺みたいな構図が出来上がってしまった。


「確かにこっち派の奴らは受付に異動したいって皆言ってるな~」

「くぅ~~! やはり! もし受付に異動が叶うなら、残業だって休日出勤だって何だってやりますよ!!」


 働き方改革推し進めてるやつらが聞いたらビビるだろーな。 マジだぞこの顔。


「なぁ、受付の何がそんなにいいんだよ? つーか、こっち派とかそっち派って何だよ。 うちの会社に派閥なんかねぇ……」

「「 はぁ??!! 」」


 素直な疑問を投げ掛けただけなのに、こんなに睨まれるとは思わなかった。

 しかも片方は後輩だぞ?



 *******


 太腿、なんと2話にわけてしまいました!笑


 だって太腿愛を語る前に900字をこえてしまったんです。(1話1000字前後としている勝手なマイルールが適用されています!)


 さぁて次回の下心さんは?

『同期、太腿を語る』

『後輩、お尻を語る』

『俺ひとりぼっち』

 の3本です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る