この会社に入ろうと思ったきっかけは、昔からここの製品が好きだったから。

 なーんてのは表向き。

 ここの会社はとにかく!女性社員の制服が可愛かったんだ。


 女性はちょっと古くさいと感じるかもしれないけれど、水色シャツの首もとに巻くのは濃紺花柄のスカーフ。黒いベストに付いている二つのポケットには同色のパイピングが施されている。

 そしてやはり何よりも!黒いタイトスカートはピカイチで、腰骨から太腿までぴたりと覆いつつも、お尻の下に然り気無く作られた長さ15センチのスリットは窮屈な腰回りを解放させるかの如く鎮座している。


 会社訪問で案内してくれた女性社員の方の後ろ姿は最高だった。

 そのスリット部分がちょっとだけよれていたんだ。 きっと座る時にスカートを敷くように手で撫でる暇がないくらい忙しかったんだろうな。

 いよっ! 働き者!!


 だから、入社が決まった時は物凄く嬉しかった。人生捨てたもんじゃないなと思った。バリバリ仕事するぞ!と抱いた志はどんな言葉でも表現出来ないほどだった。


 ――それなのに。


「えー、次にですね。 次年度から女性社員の制服を廃止し、えー、私服での就業を決定いたしましたのでここにお知らせいたします。 えー、私服と言いましても――」


 ……え?


「わが社の人間だと見られる、いうことを忘れてはいけません」


 ……え? ちょっと。


「節度ある、ですね――」


 ……ちょ、ちょっ!


「先輩社員の姿を見て頂けたらと――」



 ちょっと待てや、こらぁ!!


 誰が決めたんじゃ!

 誰が許したんじゃ!


 ここにいる一人の若者が、胸にいっぱいの期待と期待と期待を抱えて入社しようとしてる時に!


 ケツを糧にどんな困難にも立ち向かってやろうと真っ直ぐ前を向いている矢先に!!


 制服廃止だなんて愚かなことを誰が決めたんじゃ!!


 お前か! そこの役員。

 お前もか! そこの役員。

 お前もなのか! 社長!!


 入社辞退――そんな四文字が頭の中いっぱいに広がっていたその時だった。


「なお、受付業務に配属された女性社員につきましては、就業時間内の制服着用を義務とし――」



 ……ん?!

 ……んんん?!



「わが社の顔として頑張っていただきたいと思っております」



 社長~!

 部長~!

 その他もろもろぉ~!


 壇上の役員だけでなく舞台袖の男性社員も皆、穏やかな顔をしているように見えた。


 俺はわかった。

 その穏やかな表情に辿り着くまでにどんな沢山の高い壁があったか。


 きっと一丸となって制服存続に向かって尽力したんだね。

 いい会社じゃないか……。


 俺、頑張ります!!!


 *******


 よっつめはお尻です。


 お尻エピソードを書くにあたって、椅子取りゲーム案もあったのですが、大人は椅子取りゲームしないし、ただのセクハラ小説になりそうだなと思い止めました(笑)

(すでにそうじゃん!と思われた方がいるんじゃ?!という不安をゴクリと飲み込んで……)


 私にとって永遠の憧れはこれはお尻ですか?と思ってしまうほど小さなお尻です!

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