一人の季節XVIII

 それは木にぶつかり、跳ね返って妖に当たる。

「こっちに来い‼」

 腕を掴まれて、体が宙に浮き、足が走り出す。

 自分の腕を引っ張っているのは将気だった。後ろを振り返り、妖はまだ追ってこない。

「なんで、助けたんだ⁉」

「そんなの俺にもわからねぇーよ。なんとなくだ、なんとなく……」

 照れくさそうにこちらを見ずに、頬が赤くなっているのが分かる。

「…………」

 だが、助かったことには変わりない。彼が来なければ今頃、どうなっていたのか分からないのだ。

 逃げ回っても、妖は追ってくる。だが、封印や攻撃をする手段を灯真は持っていない。

 林を抜けると、目の前には道はなかった。下を見ると、急な下り坂になっている。逃げ場がない。だが、すぐそこに妖が迫っている。

「あそこに何か洞窟があるぞ!」

 将気が指をさした。

「もしかすると、奥に何かあるかもしれない。行ってみよう」

 二人は怪しげな洞窟に向かって歩き出した。


 二人の行動を木の陰で見ていた美咲は、心配そうに見守っていた。古びたポーチの中には祓い用の札を携帯している。

 彼女は元々、祓い屋として活動していた時期があった。その現役時代の呪符を今も大事に持っている。

「あの子たちまさかあの洞窟に行くつもりじゃあ……」

 美咲は右手に呪符を五枚持ち、二人に向かって投げる。

「お願い。二人を頼むわよ」

 そう言い残すと、美咲は姿を消した。

 美咲が手放した呪符は、発動して人間の形をした式神に変化する。

「……ったく、うちの主も人扱いが悪いな。まあ、頼まれたけど……」

「そう文句を言うな。私たちもこっちの世界に来れるのもほとんどないんだから美咲の力にならないといけないでしょ」

「全くだ。だが、あいつに勝てなかった我々が言う資格はないけどな」

 三人は姿を現すと、さっきまでいた美咲の場所を見た。

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灯《ともしび》は真《まこと》の中で ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ @kouta0525

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