時は時に時々一時的に不公平である
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とある村を二人の旅人が訪れた。
女性は白のブラウス、くすんだ赤色のロングスカート。ブラウンのコートをトランクを持つ手に掛けていた。顔立ちは整っているが、額に汗を滲ませ、彼女の前髪がぺったりと張り付いている。髪は腰まで届く長い黒髪で、緩く三つ編みをして纏めていた。
男性は女性よりも厚い黒のロングコートを羽織っており、黒の襟付きのシャツ、黒いズボンと、黒一色の容姿。しかしシャツには汗染みがあり、銀というよりは灰色のカールした癖っ毛が女性と同じくぺったりと額に張り付いている。
「酷い道のりだったわ」
「酷かったですね、本当に」
二人はやれやれといった態度を取りながら、額の汗を拭う。
「早くシャワーを浴びたいわね。次までどれぐらいかしら?」
「どうでしょうね……寄る予定だった場所は跡形もなくなっていたわけなので、わかりかねます」
男性はそう口にして、目を細めて遠くを見たものの、目当てのものは見つけられなかった。
「とにかく道案内は任せるわ。私、そういうの苦手なのよ」
「重々承知していますよ。それにしても、少し……休みたいですね」
ふう、と大きく息を吐いた男性……エンデはどこか休めるような場所はないかと首を左右に振ってみるが、彼が望むような場所は見つけることができなかった。今度は嘆息をして、仕方なく足を進ませた。
女性……スティアは何か文句を言おうとしたものの、何を言っても結局無駄であり、体力の無駄遣いになると察したのか、彼と同じく嘆息して足を動かした。
それから二時間が経つ頃だ。ようやく街らしきものが見え、彼女らの顔に笑みが浮かんだ。
「まずは宿よ、それでシャワー、次に食事。これは譲れないわ」
「同意しますよ」
街に大きな石壁に囲まれており、これまた大きな門の前には槍を持った男の門番が立っていた。
そんな門番にエンデは会釈をしながら話かけた。
「はじめまして。私はエンデ、後ろの女性がスティアと申します。是非、ここで数泊させていただきたいのですが、よろしいですか?」
「旅人さん? これまた珍しいですね。構いませんが、あちらで入門の記入をお願いします」
門番が指差したのは、石壁に四角い穴を空けただけの簡素な受付のような場所だった。二人はそこまで歩いて穴を覗いてみる。
「やぁ旅人さん、これに記入をお願いしますね」
見えたのは若い男で、にこにこと笑いながら紙と筆ペンを渡してきた。それを持って二人の名前を記入したエンデは、滞在予定を書く所で後ろのスティアに振り返る。
「どれぐらいまでいますか、スティア?」
「今日は何の空だっけ?」
「えーっと……」
エンデが宙を見る。
「今日は中休みの空ですよ。そうじゃなきゃ、僕らもこんなにゆっくりとしちゃあいませんよ」
あっはっは、と呑気に笑いながら若い男は答える。
「だったら懺悔までにしましょ。裁きの空までいたら、何が起きるかわかったもんじゃないわ」
「そうですか」
エンデは言われた通りに記入して、若い男に返した。
「はい、確かに受け取りました。いやぁ、僕がここで働いてから、初めての旅人さんだ。嬉しいなぁ、一生の思い出にします」
「それはどうも。それとここには宿がありますか? 無いのならせめてどこか休む場所を紹介してほしいのですが……」
「あぁ大丈夫ですよ。この門を抜けて真っ直ぐに行くと大きな噴水のある広場に出ます、そこを左に曲がれば宿がありますので。この入門証があれば格安です」
「ねぇ、シャワーはある?」
「勿論」
スティアは満足そうに頷いた。
そして、若い男の「開門!」という声と共に大きな門が開いた。
神様は人を殺さない 南多 鏡 @teen
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