第13話 再戦のレイダー

「本当なのでしょうか? その、獲得型霊力子反応炉というのは」

「まだ実験段階ですが、事実です」

「敵を倒せば倒すほど出力が上がる……」

「そうなりますね」


 帝都のすぐ傍で、それもグリーク公爵家の施設内でこんな物が組み立てられていたとは驚くしかない。テラがふうとため息をつく。


「あの黒いの……エリダーナですが、重力子反応炉搭載型は既に試作機が完成しています。評価試験では鋼鉄人形と同等の戦闘力である事が確認されています」

「その試作機よりもさらに強力なハイブリッド型も既に試作機が完成していたと……」

「ええ。帝国の鋼鉄人形を屠るための刺客として」


 これは由々しき問題だ。敵対する二つの勢力があれば、兵器の開発競争は永遠に続くものだろう。それは必然だ。しかしここでは、帝国における勢力争いの為の兵器開発が行われている。俺は何か、どす黒い情念のようなものを感じた。


 突然、レイが何かを見つけて階下に飛び降りてしまった。ここは三階なのにだ。

 しなやかな着地を見せたレイが、腰のタガーを抜いて構えた。


「出て来い。そこのポンコツ人形」


 鋼鉄人形の影からゆらりと姿を現したのは、地下牢で出会った黒いアンドロイドだった。エカルラートという名の戦闘人形だ。そしてその傍にはメイド服を着た少女と、青白い顔をした小柄な男がいた。あの少女は暗殺用自動人形キャトル。そして、小柄な男は環形動物の集合体であるアルゴルだ。


 レイは素早い踏み込みから猛ダッシュして一気に距離を詰めた。そしてエカルラートに強烈なタックルをかました。


 対人戦専用の自動人形であるが、レイの強烈なタックルを受けよろめいた。しかし、よろめいただけだった。


「へへへ。流石に硬いな」


 レイはエカルラートが体勢を立て直す前に、二本のタガーで斬りかかる。しかし、そこは最強の対人兵器であるエカルラートである。奴は体を上手く捻ってレイの斬撃をかわしていた。そして、キャトルはレイの後ろ側に回り込んでいる。


「後ろだ! レイ!」


 思わず叫んでしまった。レイはエカルラートの正拳突きをバックステップでかわし、そのままキャトルに後ろ蹴りを浴びせる。しかし、キャトルは羽毛のような、ふわりとした動きでレイの脚を回避する。


「二対一では不利。加勢します」


 俺は先ほど手に入れた日本刀を抜き、階下へと飛び降りた。そして、細長い円錐状に変化したキャトルの右腕に斬撃を加えた。


 しかし、手ごたえがない。

 キャトルは風に舞う羽毛のような動きで俺の剣を交わしていた。


「遅い」

「スマン」

「あの、尖った右腕から麻酔薬が注射される。女は任せたぜ」

「わかった」


 そう言う事か。暗殺用のキャトルは貧弱だ。しかし、通常の攻撃であれば、風に舞う羽毛のように回避してしまう。レイの攻撃をかわした後に麻酔を注射されてしまったのか。敗戦の原因がはっきりしているなら勝算はある。一対一であれば、レイはあのエカルラートを倒す自信があるのだろう。


 ならば俺の相手はあの、暗殺用のキャトルだ。

 あの、羽毛のような回避をどう封じるかが問題だが、ここはやるしかない。


 俺は剣を中断に構え、キャトルと対峙した。

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永遠の出会い 暗黒星雲 @darknebula

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