World Crisis

獅柴

Prolog.

ーーー[世界危機ワールド・クライシス]。


この世界は幾度となく滅び、砕け散り、再生してはまた滅んだ。

今生きている、“これ”を語っている今この時が、何度目の世界かは分からない。


世界はひとつであった。


[祖なる者]の手により創造つくられ、[終焉の者]により破滅ほろぼされ。

何度も何度も再生を繰り返しては形を変えてゆくのが世界であった。 しかしそれすらも今は神話、歴史、伝承として語り継がれる程度。 まるで誰かが真実を隠すかのように霞を帯びてゆくこの話。


嘆くのだ。


嘆くのだ。


過去、今このときの世界が創られる前。

もう何度目の世界かもわからない、これよりも一つ前の世界か、もっと前の世界か、それとも原初さいしょの世界の声か。


ーーー[崩壊こうなったのは誰のせいか]。


創造主のせいか?

破壊者のせいか?

獣のせいか?

竜のせいか?



いいや、 人間のせいだと。


そして皮肉にも、その人間は原初の世界に生きた者達の[進化の極北なれのはて]であるのだ。


嘆くのだ。


慟哭するのだ。


その声が聞こえる事はなかれど、忘却を許さぬように、真実を語り続けるように口を開き、前を見つめ、声を音として、声を文字として語り叫び続けるのだ。

誰かはそれを夢に見る。誰かはそれを風に聞く。最後の一滴になるまで声を枯らして。




これは、[進化の極北]の物語。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

World Crisis 獅柴 @leon9883

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る