白がらす

吉行イナ

石詰みが好きな僕

先週の金曜の午後3時32分に僕の後頭部に突如として妙な重みが加わった。4日前だ。

といっても重くもあるし重くもないかなという謙遜気味のある重みだった。

けれどその反面、何かが頭の後ろの部分の右に4か所、左に四か所、同じバランスで申し訳なさそうに食い込んでくる感じを受けたので

日課である石詰みを中断して(僕は三度の飯より石詰みが好きなのだ)洗面所に行き鏡を見た。

鏡に写る僕の後頭部越しにはカラスがいた。

4本爪があって2本脚があるから合計8本の爪であたかも生まれた時から僕の頭に生えているような面持ちで想像するに斜め35度ぐらいの角度で僕の頭を挟み込んで直立しているようだ。

僕は彼、あるいは彼女に対して何かを言わなければならない。そう思った。

「君 どうしたの?僕の頭をつかんだりしてさ 特に痛くはないのだけれど」

そういうとカラスは翼を左右にこれでもかというくらいに広げた。

黒々とした左の翼の羽毛の中に1本だけ真っ白い雪に白い粉砂糖をまぶしたような

白々とした羽根があった。

カラスが二度三度翼を羽ばたかせると頭に食い込む爪の1本が僕の頭の皮膚を突き破り頭骨を削り脳の入口みたいなどこかに達した。爪の先からは何やら粘り気のあるカエルの足みたいな枝分かれした突起の感触がした。

それが大脳皮質だか前頭葉だか右脳左脳だか僕の知識では表現できないくらいのそこかしこに伸びてきてペタペタと撫でまわすのだ。

僕ななんだかくすぐったかったから思わず声に出して笑ってしまった。

するとカラスも僕に合わせるみたいに笑ったのだ。

「あははははははははは」

「アハハハハハハハハハ」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白がらす 吉行イナ @koji7129

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る