短歌連作「あなたに見合う私でありたい」【2018.09】

金木犀きんもくせい君が好きだと言ったからハンドクリームはネロリを買った


水たまり午後に晴れたら雲隠れ世界が変わってあなたは笑う


幸せに似てるといったシャボン玉膨れてこわれてまた飛んでった


連れてきた小雨が霞む君とならフィルター通して世界が見える


「楽しい」のタイムラインをさめた目で見てた忘れてしまえあなたもわたしも


連番のチケット今でも捨てられなくて予感はするよ私だけって


僕たちの糸は赤色じゃなくていい同じ模様を編み込めるなら


飲み込んだ私じゃダメか?見てたらさあ嫌でも分かる私じゃダメだ


毎日を当たり前に生きていくたったひとりのあなたがまぶしい


ごめんなさい終わりの言葉のはずなのに君にかかると悲しくなかった


言うべきか言わないべきかそんなことAIでさえ分かりえないよ


青信号点滅しかけたスクランブル立ち止まったら世界は止まる?


しあわせはきっとあなたが覚えててかわりのことをとどめておくから


ただ泣いてさけんでわめいて全てをなげた激しさだけが恋ではないと


縁側で湯のみ片手にかたならべそんな未来へなお手を伸ばす


花を見ようできたら二人でそう言って私もあなたもなお一人旅


世界中たった一人だと思うのは電子の海でこどくな時だ


つかれたよつぶやきひとつではなれていったそんな君をみる僕もつかれた


うすれてくひとりごとになるんだろうさよならいつか気が向いたなら


何を着ようどこへ行こうか二人きり眠れなかった会いに行くまでは


これからを思うだけで新幹線片道四時間へっちゃらだった


朝一で会って出かけたものだからおなかが鳴った君も私も


恋愛成就うたう神社にたどりつき願わなかった横にいたから


身の丈にあわずねがってしまったんだよそばにいることをゆるされたいと


好きという思いはいつも空回りあなたは笑う私も笑う


手をつなぎ抱きしめるだけじゃ足りないとわかった僕らは大人になった


いつの日かだれかのとなりにいるだろうあなたへ贈ろう祝福のうた


一人では苦しい場所も二人なら足取り軽く歩いて行ける


楽しいと手放しに言って笑っていたいあの人みたいにどんなときでも


たとえもうかなわぬことだとわかっていてもあなたに見合う私でありたい



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雨水 香枝ゆき @yukan-yuki

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