第2話

「ウチな滅ぼしたってん、地球。」



するりと出た言葉が栓を失ったかのように次々と溢れかえった。



「なんか、よーわからんけど。ウチが人類の最後の希望やったらしい。」



突然現れた大勢の大人達。その顔を今では一人として思い出すことはできない。



「なんか乗れっていうから、乗ってそのままぶっ壊してきたった。」



それはプレステとかで遊ぶより面白かった。



「まぁ自業自得やんな。」



指先の故郷へ語りかける。



「だって、ウチの世界めちゃくちゃにしといて自分らだけ助かろうなんて虫がよすぎるやん。」




何故か胸が締め付けられるような気がした。

それはきっとおばぁちゃんと過ごした日々がふと蘇ったからだった。


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「おばぁちゃん、めっちゃたこ焼きつくんの上手いやん!」


「せやろぉ。おばぁちゃんなぁ、たこ焼きのプロやねん。」


「絶対嘘やわ。おばぁちゃんさっき、携帯型外部デバイス見ながらたこ焼きつくってたんウチ知ってんねんでー!」


「ホホホホホホ。孫にはなんでもお見通しやなぁ。」


「なーなー、おばぁちゃん。」


「なぁに?」


「なんでウチにはお父さんもお母さんもおらへんの?」


「んー、それはな。…まずアンタのお父さんはド阿呆やったからもうどうでもええねんけど、アンタのお母さんは、アンタを産んだ時にしんでしもてん。」


「んー。そうなん、やぁ……。」


「まぁ、まだぴんとこうへんやろうけどな。まだ子どもやし。」


「そんで?」


「そんでな、アンタ、お母さんは写真しか知らんやろ?でもな、よぅく空見てたらな、ほんまはおんねんで、お母さん。ほら見てみ。」


「ふーん。どうかなぁ。」




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お誕生日におばあちゃんが連れていってくれたプラネタリウムはがらんと空いていて、ウチら以外お客さんなんて一人もおらんかった。


だからあと数年で潰れそうやなーとかそんなことばっかり考えていた気がする。


でもだからこそ、もう二度と来れへんかもしれんという気持ちが、なんだかとっても恐ろしかったことを覚えている。


お母さんがお空で見守ってくれてるよーなんて、正直内心ではたこ焼きのプロといっしょでおばぁちゃんの嘘話しやとおもってた。




だからな、おばあちゃん。



こんな宇宙の果てまで流れ着いたけど、やっぱりお母さんはおらんかったよ。ただあるのはあれから少し背が伸びたウチだけ。


だから、おばあちゃんはやっぱり嘘つきや。








ここに流れ着く途中で捕縛したペットのトモダチくんをカラッと素揚げにする。

本当はカリカリふわふわの粉もんとソースにマヨとカツオ節でいただきますしたかったけど仕方がない。


もうこの宇宙のどこを探し回ったって、小麦粉もソースもマヨネーズもカツオもないのだから。




だから、今ウチがもっているものは、ぜーんぶニセモノだらけ。

星空も

たこ焼きも

おばあちゃんの話も



でもな。

おばあちゃんと一緒にみたプラネタリウムも、

おばあちゃんと一緒に食べた形の悪いたこ焼きも、

おばあちゃんがいろんなお話を聴かせてくれたことも、





ぜーんぶ


ウチにとっては本当の宝物やったんやで。










人生最期のたこ焼きは、吸盤みたいなとこからなんか臭い緑色の汁が出て来たので食べずに捨てました。





【おわり】

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ディストピアたこ焼き 馬西ハジメ @atode

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